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捨て駒遊撃隊

 「殺せ」


 そう言って彼は赤ん坊を石畳に叩きつけた。

 なぜそうするか?何のことはない、たった今からここがただの村から戦場へと変わったからだ。

 夜にもかかわらず明るい光を放つのはごうごうと燃える家。

 そこかしこから聞こえるのは身体に火が付いた人間の悲鳴。

 ただよってくる不快な臭いは人が焼ける臭い。 

 特にそれ以上言うこともない、ただの戦場……

 この惨劇を産み出した張本人、グラートはそう考えている。

 

 「グラート、このあとどうする?」

 「逃げる奴らは追わなくていい。代わりに倉庫や畑は徹底的に潰せ。井戸もだ」


 白髪交じりの黒髪を揺らしながら部下へと指示を下すグラート。

 彼らが今やっているのは村の破壊。

 木造の建物や刈り取り前の麦に火を放ち、水を穢し、人を殺す。

 

 「……いつもながら、ひどいもんだな」


 地獄のようなその光景に仲間の一人がそう漏らした。


 「知ったことか。次に行くぞ」


 にべもない。

 グラートはそう言うとまだ残っている家屋の破壊に参加していった。

 





 「損耗は?」

 「武器が壊れた。残ってるのは斧が2本、矢が4本、俺はそんだけだ」

 「俺は槍1本、手斧1本だけ。怪我はしてない」

 「私は短剣1本、後は国から支給された役立たずの長剣一本だけ」


 村をことごとく破壊しグラートをはじめ全員がまだ炎が収まらない村の広場で報告をしていた。

 人口100名程度の村だったが襲撃に参加していたのはグラート含めて4名だけという超が付くほどの少数戦力だった。


 「武器になりそうなものと持てるだけ食い物を取って来るんだ。それが済み次第出発する」

 「だったらせめて焼いちまう前にそう言ってくれねぇかな。食い物も糞もまる焦げだぜ」

 「全くだ。順番考えてくれよグラート」

 「アンタ達うるさいよ。さっさと回収しに行こう」


 それぞれ不服そうな顔をしながらも彼らは目当てのものを探すために散った。

 さして盛り上がりもしない略奪の始まりだ。



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