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灰色のアリー

 ある静かな月夜のこと。


 「これだけあれば暫くは遊んで暮らせるな」


 「そうだな」


 煉瓦造りの家の中で椅子に深々と腰掛ける商人風の男が二人、蝋燭を灯りにして葡萄酒を飲んでいた。


 酒の肴になっているのは机の上にある赤ん坊が入れるほどの大きな陶器に入った大量の金貨。

 

 「馬鹿な奴らだよなあ。どこの誰が言ったかも存在するかもわからない聖地なんぞの為に餓鬼だけで行こうとするなんてよ」


 「おいおいそんなこと言ってやるなよ。お陰で俺たちは大儲け出来てるんだからな」

 

 机の上にある金貨はここからはるか遠く、異国の地にあると言われた聖地奪還のために集まった少年兵を外国に奴隷として売り払って得た金。


 無論こんなことは違法、二人は人の道を盛大に踏み外している。


 「まあとっとと分けて持って帰ろうぜ。取り分は……俺が6、お前が4だ」

 

 「そりゃねぇぜ。平等に5で割ろうぜ?」

 

 金貨をとりわけようとした仲間に不満を漏らした。


 「平等ねぇ。そんなものは世界中どこを探しても存在しないさ」


 「え?」


 「は?」


 聞きなれない声が聞こえ慌てて振り返った二人。


 そこに居たのは二人が飲んでいた葡萄酒を飲む黒い波打った長髪の青年。


 足が悪いようには見えないが何故か手には樫の木で出来た杖を持っている。


 「お前その杖と顔……仕込みのアリーか!?」


 「ご明察。賞金代わりに剣をプレゼントしよう。ああ、外の仲間は僕が適当に始末しておいたから安心してね」


 「ひ、ひぃっ!?」


 ゆっくりと立ち上がるアリーと呼ばれた青年。


 勢いよく杖を引っ張る。


 すると中から現れたのは鈍く輝く鉄の刃……


 「あの世で子供が待ってる。顔を見せに行ってやってくれ」


 アリーの振るった仕込み杖の刃は商人2人の喉を切り裂き辺り一面に鮮血をぶちまける。


 壁に非常に趣味の悪いいびつな絵画の出来上がりだ。


 「……神よ、どうか彼らに永遠の責め苦を御与え下さい」


 適当に祈りをささげた後杖を仕舞い歩き出すアリー。

 

 彼は賞金稼ぎ、『仕込みのアリー』だ。


 


 

 

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