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英雄のなりそこない

 「おはよう、いい朝だよ」


 麻の服を着た青年が微笑みながらそう言った。

 彼は固い床から体を起こしながら部屋にある粗末なベッドで寝ている女性を起こす。

 そして窓から差し込む朝日が部屋を照らす中、その女性が起きがけに言いはなった言葉が……


 「うるさい変態」


 彼女はそれだけ言うと枕変わりに使っていた薪をなげつけた。


 「く、あぁ……」


 ものの見事に顔に当たって鼻血を出す彼。

 痛みで悶絶する彼をよそに彼女はまた寝息をたてはじめた。


 「はぁ……仕方ないか」






 「シモン……どうしたの?その鼻」


 すっかり日は登り二人でかなり遅めの朝食を取っているとき、彼女は口を開いた。

 不愛想だが美しいその女性……名前をネリーという。

 肩までかかる波打つ白髪と灰色の瞳がとても綺麗だ。


 「それでシモン、今日はなにするの?」


 「うーん、特に予定も無いからね……どうしようか」


 顎に手を当てて思案してみるが浮かんでくるのは美味しい食事やいつ寝ようかといったことばかり。


 「働いたら?」


 呆れたように呟く彼女をよそに麦粥をほおばるシモン。


 「働くね……けどもう戦争は無い。僕が武勲を立てたり民衆を救うために出ていく機会はもうない」


 シモンは騎士だった。

 幼いころから戦場で活躍する戦士や騎士にあこがれ血反吐を吐くような努力の果てにようやくなれたのだが……


 「……」


 「もう僕みたいな人間はいらなくなる時代が来るだろうさ」


 シモンがいる国は隣国お戦争ばかりしていたがそれも終結。

 両国の王族が結婚、戦争が無くなればシモンのような騎士の出番は儀礼用程度でしかなくなってしまう。

 それが彼にとってのこの国だった。



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