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第一話

 「アンタに貸してやる部屋はないよ。とっとと出ていきな」


 「そ、そうですか……」


 野を越え山を越え昼頃にやっとたどり着いた村にサウルは居た。

 森に囲まれたその村で今は宿を探すために荷袋背負って方々を歩き回ってはいるが……


 『お断り』


 『帰ってくれ』


 『金一袋持ってこい』


 このように全て断られるか法外な値段を吹っかけられた。

 断るときの村人達の嫌悪も露わな表情は暫く忘れられないだろう。


 「はぁ……これのせいなのか?」


 サウルはため息をつきながら背中に担いだ盾と腰に差してある羽引きをした片手剣に視線をやる。

 元兵士とはいえこんなものをぶら下げて歩いている人間など不審だろう。

 ただそれにしてもこの態度はひどいものだが……


 「もうすぐ夜か、野宿でもするかな」


 


 


 「ここにするか。背中は崖が守ってくれる」


 村の東側、あと10歩でも先に行けば森という所を拠点にした。

 前方には廃墟が立ち並び、後ろには崖と森、そして周囲にはそれなりの大きさと太さの木も転がっている。

 一晩過ごすのには十分な薪が確保できるだろう。


 「さてと、炉の準備でも…………うん?」


 適当な石を組んで炉でも作ろうとしたとき、廃墟の後ろにあるものが目に入った。

 墓地だ。


 (デカイ墓地だな……)


 一体何体の遺体が埋まっているのか。

 廃墟の後ろに隠れるように作られている。

 そしてそこには女の子もいた、墓の周囲を掃除しているようだったが。


 「あ、気付いた」


 こちらに気付いた少女だったがサウルが手を振るとそそくさとその場から走り去ってしまった。

 

 「……嫌われたもんだな」


 結局村の人間は誰もサウルの事をまともに相手してくれなかった。

 悲しいものだがよそ者に対する態度などこんなものだろうと頭の中では納得した。


 「さて、火でも起こすか」


 作ったばかりの炉に枯れ木を放り込み火をつけよう。

 もう他の事なんて気にせずに眠ってしまおう。


 

 

 

 

 「…………」


 星が頭上に輝くころ、サウルは焚き火の音と梟の声を聴きながら寝息をたてていた。

 ……表面上は。


 (見られてるな……)


 目だけは閉じたまま耳をすまして感覚を研ぎ澄ます。

 崖の上に誰かが居る。

 襲ってくるような気はしないが念のためにそばにある剣へいつでも手を伸ばせるようにしておく。

 

 (必要ないと思ってたがまさか兵士やめて来た最初の村で使うことになるとはな)


 「あの、起きてますか……?」


 「…………え?」


 (話しかけてきた?)


 思わず素っ頓狂な声を上げてしまったサウルは自分のうかつさに頭を痛めながらも崖の上を見てみた。

 

 「君は……」

 

 焚き火の光に照らされて見えたのは少女の顔だった。

 幼さの残る整った顔立ちに背中まで伸びた赤毛、澄んだ青い目をしている。


 「えーと、お墓にいた子かな?」


 「はい」


 少女はとても抑揚の無い声をしていた。


 「俺に何か用?」


 「私の家に来ませんか?」


 「え?」


 サウルの混乱は深まるばかりであった。

 


 

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