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第四話 少女は蛍と最会(さいかい)する

それから未影は紀陽とともにいた。

どのくらいの年月が経ったかは分からない。

紀陽曰く神域と人間界での時の流れが違うのだという。

また、人間界に下りることのないからどのくらいの差があるかは分からないという。


「人間界に下りるような奇特な奴は俺たちの中だと”鋼狼(ごうろう)”ぐらいか」


「ごうろう?」


こてりと首を傾げる。

紀陽から得た十二神獣の知識から鋼狼という人物を思い出した。

十二神獣の最強に次ぐ二番手。

かなりの酒好きであり、人間界に下りては酒を土産に持ってくるという。


「あいつは俺たちの中だと奇特だ。神域の中を行ききするのはあいつぐらいだろう」


もし、お前が俺たちに慣れてきたらあいつもお前の神域に来るからその時は俺かもう一人、樹蜂(きほう)を呼べ。お前には悪影響だと言う。

言われた未影はこくりと頷いて、了解した。


「でだ。お前の気持ち次第だが、どうだ?他に会ってみないか?」


「…………」


そう言われた彼女は黙ってしまった。

やはり人と会うのが怖いようだ。

もう少し時を置いたほうがよさそうだな。

そう思った炎龍だったが彼女は予想外なことを言い出してきた。


「あ、会ってみたい」


「!」


驚愕してしまった。

彼女が慣れてきたときに何回か提案していたことだった。

今後のことを考えるとやはり同胞に合わせておいたほうがいい。


「こわいけど……、紀陽の話であ、あってみたい」


たどたどしく言う彼女に紀陽は歓喜していた。

己がいてもし、この子に何か遮るものが出来てしまったらその時はすぐに葵猫の元に託そうと考えていた。

もし、この子が己を恐れてしまってもだ。



「そうか。なら、丁度いい。…………そこにいるんだろ?」



樹蜂(きほう)風虎(ふうこ)



その言葉とともに未影は自分や紀陽の他にここに誰かがいることを知り、肩を震わせて紀陽の背後に隠れる。

……声も音も聞こえなかった。

すると、未影から少し離れた場所から二人の男の姿が音もなく出現した。


1人は褐色の髪は肩に届かなく、癖がない。若草色の瞳をしている。

異国の官吏服であるが袖や裾が長く、動きづらそうであった。


もう1人は、姿が紀陽とよく似ている仁王像のような恰好をしている。だが、髪は白練と烏羽色が混ざっていてざんばら、右目は紺青色に輝いてはいるが、左目だけ布を巻いて隠されている。

どちらも背はほぼ同じように見える。


「申し訳ありません。どうしても、彼女の様子を見たくて」


「俺も新しい同胞が見たくてな、つい」


ぺこっと頭を下げる樹蜂とからからと笑う風虎。全く正反対な二人だ。

はあと呆れたように息をついて、怯えている未影の頭をぽんぽんと軽く叩く。


「こいつのことは葵猫から聞いているだろ?あまり刺激するな」


「悪い悪い。“風使い”がやっときたから嬉しくてな」


遠くから見ていたんだと言う風虎。

風使いの言葉に引っ掛かった未影が紀陽の後ろから恐る恐る顔を覗かせ、ポツリと呟くように口を開く。

「か、風使い?」

すると、2人は未影の方を見てくる。

その視線に驚いて、すぐに顔を戻す。


「……ええ、そうですよ。こちらの風虎と貴方は風使いです。」


そんな彼女の様子に二人はしゃがんで優しく話しかけてくる。


「申し遅れました。私は樹蜂(きほう)と言います。炎龍からも話があったと思いますがどうかよろしくお願いします」


「もし困ったことがあればいつでも言ってくれよ」


と言ってくる。

やはり、嘘を言っていない。言ってないけど、やはり怖い。

ちらっと二人を見てぺこっと小さく頭を下げる。


「他は?」


「遠目ではありますが見ているようです。我々は少し気になることがあり、お伝えに来たのです」


「気になること?」


ええと頷く樹蜂だが、その後の言葉が出てこない。

ん?と首を傾げる紀陽。樹蜂は立ち上がり、ちらっと未影を見る。

どうやら、彼女のことで気になることがあるようだ。

ただ、本人がいるここでは話しづらいことだからどうすべきかを考えているようだ。

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