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「これは風馬のおかげだね」


「だな。風馬、ありがとうな」


「うんん。私も楽しかったもん」


擦り寄られている中で豆太はあるモノを咥えた。


「こら、豆太。それは風馬のだぞ」


「それ、紅鳥からもらったの?」

汐兎が紅鳥の神気を感知して訊いてくるので肯定するように頷く。


「うん。お花のお礼なんだ」


しかし、豆太は太乃己比(たのごひ)を咥えて離さなくなってしまった。

どうしたものかと首を傾げているともしかしてと汐兎が話して来る。


「紅鳥の神気が惹き寄られているのかも。豆太って生まれたのが確か日の元だったし」


神域に誕生したモノ達の中ではその主である十二神獣の性質を受け継ぐモノ以外にも違う性質を受け継ぐものがいると聞いたことがある。

豆太自身も火の性質を持っている為、紅鳥から貰ったモノに惹かれてしまったということのようだ。


「なら、豆太にあげるよ。丁度、首に巻き付けれるし」


「いいの?」


「うん。紅鳥には私から言っておくよ」


だって、こんなに気に入ったのなら無理矢理取り上げるのは可哀想だ。

そして、太乃己比は豆太の首に巻き付けられた。


「ありがとう!風馬!」


「どういたしまして。似合っているよ」


そんな会話をする中で馳犬が声を掛けてくる。


「譲ってくれて助かるが、風馬に申し訳ないしお礼をさせてくれ」


「え、いいよ?」


そう言ったがそういうわけにはいかないと言って馳犬は自分の神域に戻っていき、あるモノを持ってきた。


「結紐?」


太く丈夫そうな紺色の紐を持ってきた。


「長いから何かを結んだりするときにいいと思ってな」


「………君さ。もっといいの無かったの?」


「ゔっ。これでも考えた方だ」


女の子にこんなの渡しても困るよと言うが未影はそんなことは無かった。

初めてこんな大きいのを見たのできらきらと目を輝かせた。


「馳犬!ありがとう」


「お、おう。喜んでくれたなら何よりだ」


そして、二人と豆太と別れて再び自分の神域に戻ろうと歩いているとふと遠くで誰かの舌打ちが聞こえてくる。

聞いたことのある声に振り返ってそちらへと歩いていく。

そこは雹蛇の神域で声のした方へ歩いていると彼が立っていた。

しかし、いつも髪を縛っているはずの髪がパサリと広がっており、邪魔そうに払いのけている。

とてとてと歩いて近寄っていき、声を掛ける。


「雹蛇、こんにちは」


「………風馬か」


眉をひそめていた彼だが直ぐにその表情を変え、無表情になった。

彼女が怖がらせないように彼なりの配慮のつもりなのだろう。


「どうしたの?」


彼はしゃがもうとするがぴたっと動きを止めてしまう。

長髪の髪が地面についてしまうのが嫌なのだろう。

さらさらの髪を両腕で集めて持つと彼もゆっくり膝をついた。


「助かる」


「いつものどうしたの?」

そう、いつも彼が結んでいた結紐はどうしたのか訊いてると苦渋の表情を浮かべる。


「……………切れた」


そう言って見せてくれたが本当に切れてしまっていて使い物にならなくなってしまっている。

今日はみんな、物がこわれやすいのかなと思ってしまった未影。


「他に無いの?」


「無かった」


はっきりと答える彼にどうしたものかと考えていると不意に馳犬に貰った結紐を思い出した。


「んと、雹蛇。いいのあげる」

ごそごそと懐にしまっていた結紐を出すと彼は目を丸くした。


「……………それは馳犬から貰った物だろう?」


馳犬の神気が纏っているのが分かったのか流石に貰い物を貰うのは気が引けるのだろう。

しかし、今の彼にはこれが必要だろう。


「だって、雹蛇が困っているでしょ」


「だが」


「馳犬には私が言っておくよ」

やいのやいのしていると雹蛇が諦めたように息を付き、結紐を貰う。

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