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第八話 その少女は育まれる

それからしばらくの間にも風虎による風の操り方を学んでいた。

同じ風使いなので分かりやすい。

その教えもあってか力の使い方が上達した。

今日も使い方を教えてもらっている。



「使い方は上達したな。もっと上手くなったら風に乗って移動することも出来るが、お前にはまだ早いな」


「……………いや、でっかい岩を真っ二つにするのはお前にとっては初歩的なことなのかよ」



いつの間にかお隣の鉐猿(せきえん)がいた。

岩を持ってきた風虎から切ってみろと言われて、風の刃を作り出して言われた通りに切ってみた。


「崖からほっぽり出されるよりましだろ?」


「あ、そうですね。ってか、そんなことしたらあいつらに締められるぞっ!?」


ぎょっと目を瞠って、後ろを振り返るとそこには紀陽と樹蜂が立っていた。

風虎が教えるときはいつも離れた場所で見守っているのだ。

手を振ると紀陽達は振りかえしてくれる。


「後は力加減だな。力を出し過ぎるとまた眠くなるからな」

風虎は割れた岩の片方を指さしていると一瞬のうちに小さな正方形になってしまった。

割れたと言ってもかなりの大きさのある岩があっという間に切れてしまったのだ。


「……………凄い」


「慣れればこんな岩でさえ簡単に切れる。だから、力加減を覚えないと大事な物さえ傷つける」

分かったなとぽんぽんと頭を軽く叩かれる。

頷く私を見て、風虎は力加減について教えてくれる。


「ちなみに風を乗せるのは?」


「もう少しだな」


そう話している二人を見ながら未影は自分の力加減できるように練習を始めた。

手のひらに小さい風の繭を作り出す。

風虎曰く、未影自身は攻撃よりは防御に向いているというのだ。

風馬は疾風のごとく駆ける馬である。分かりやすく言うと足が速いということだ。

誕生した時に鉐猿達から逃げた際にも風のように走って行って追いつくのに苦労をしたという。

試しに未影が追いかけられ風虎が彼女を捕まえることをしてみたが結果は未影を捕まえることが出来なかった。

自由に走っていく彼女を捕まえようとするとするりとまさに風のように通り抜けられる。

他の同胞達とも試してみようかといつの間にかいた鋼狼が面白半分で言っていたのだが、未影本人がきらきらとした目で見ていた。楽しかった様だ。

話を戻すと彼女は疾風の如く駆けていける。どのような場所でも誰よりもいち早く到達が出来るのだ。もし、風に乗せて移動するとしたら彼女の強みとなるだろうと風虎はそう考えた。

防御が張れれば同胞を守ることも出来る。もしもの時は攻撃も出来るが他の同胞よりは威力は弱い。

神通力を溜め込むことで威力が増すだろうがそれは彼女自身が危うくなってしまう。

そのことも教えていく必要があるなと風虎は小さく唸りながら風の繭を作っている同胞の頭をまたぽんぽんと軽く叩いた。


「……………お前、そんなに世話が得意だったか?」


「得意じゃないが、不得意ではない」


鉐猿は目を瞠りながら見ている。

小さな同胞が生まれてからというもの同胞たちの雰囲気が変わった。

どういう風にというと言葉にするのは難しいが穏やかになったように感じ取れる。

前なんて近寄ることを拒むような雰囲気だったから。


「……………変わるもんだなぁ」


ぽつりと呟いた言葉は傍にいる二人には聞こえなく消えていく。




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