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「おいっ、“永劉(えいりゅう)”っ。やり過ぎだ」


そこには神域に引きこもっているとされている風虎が未影を守るかのように立っていた。


「……………貴方のことも含めて謝罪していたのですが?」


「だからといって子供相手にそんなに畏まって謝るとどうしていいか分からないだろう?現に泣きそうになっているし」


頭を下げたままの樹蜂に対し、風虎はこちらをちらっと見てくる。

泣きそうになったのだが、風虎の突然の参上に驚いて涙が引っ込んでしまった。


「……………あー、その。えっとな」


ばつが悪そうに目を逸らす風虎。


「………立っていないでしゃがむなり座るなりしてください。この子に怯えられたら貴方、今度こそ全員から血祭りにあげられますよ」

そろりと頭を上げた樹蜂が風虎にそう言う。

言われた彼は慌ててしゃがんだ。

何故か青ざめている。どうしてだろうか?

首を傾げる未影をよそに風虎はそのまま黙り込んでしまった。

後ろにいた樹蜂からはなんだか避難の目を向けている。



「———————風馬、すまなかった」



そうして、正座をして手を地について頭を下げてきた。

ぴきんっ。体が固まってしまった

また謝られてしまった。こんな時、どうしたらよいのかなんて分からない。

引っ込んでいた涙がまた出てきた。


「………………“仁希(じんき)”、風馬が泣きそうになってます」


「…………………………お、ま、え、な、あ。こちとら、気まずくて嫌われていると怖がられていると思っていた子どもの前で誠心誠意に謝っているのにっ、その台詞はないだろう!?」


「貴方が早く謝りに来ないのが悪いのですよ。おかげで、紅鳥達からもネチネチと言われているのですから」


「あのなあ。俺だって色々と思うことがあってだなっ!大体、猪のように風馬の神域に来ていきなり謝る奴がいるか。それこそ、炎龍に締められるぞ!?」


なんだか、喧嘩が始まってしまった。

またまた涙が引っ込んできょとんとしている未影をよそに二人はぎゃいぎゃいと言い合いをしている。

このような姿を紀陽と鋼狼が同じように言い合いをしているのを見ているせいで馴れっ子な未影はそのままじっと見ていた。






どのくらい言い合いをしていただろうか。二人してぜはぜはと肩を上げ下げして息を切らしていた。


「……………て、てか俺たちは何をしているんだよ」


「そ、そうですね。ふ、ふう、ま?」


二人が見た先には己の神域にいる動物たちが未影に集ってその毛並みを梳いていた。

やっと声が収まったのに気づいてこちらに目を向けてくる。


「終わった?」


「あ、ああ」


「え、ええ」


「えっとね。二人とも謝らなくていいのよ?だって、私の為にしてくれたんでしょ?」


未影はちゃんと二人を見て話しかけてる。

自分の意思を伝えることはとても大事だと紀陽が言っていた。

だから、ちゃんと自分の言葉でいうのだ。例え、拙くても想いが伝わるようにいうのだ。


「私ね。謝られるとどうしたらいいか分からないの。だから、えっとね。これから仲良くしてくれると嬉しいの」


そう伝えると二人は顔を見合わせた。


「いい子すぎないか?」


「ええ。罵倒の一つ二つあるかと心構えましたけども」


あれ、なんだか想像していた反応とは違う。

風虎ははあと深い溜息をついて、胡坐をかいた。


「お前な。俺は最低なことを言ったんだぞ。だから、怒るのは当然なんだ」

諭すようにそう言ってくる。

「他の奴らでさえ、責められて当然と言ってきたぐらいなんだぞ?」


「炎龍なんて無言で睨んできたのですから相当お怒りでしたしね」


風虎の隣に座った樹蜂も言ってくるが、やはり未影の中には怒りという感情はなかった。

確かに聞きたくないこと、思い出したくないことが溢れてしまった。でも、それは悲しいという感情だった。

風虎自身には責は無いのだ。だって、鋼狼が言っていた通り、同胞の為に嫌な役割を担ったにすぎない。


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