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その時だ。

がさっと茂みから音がする。

ばっと前を見ると川向うに男が3人立っていることに気が付く。

3人とも20代後半のよう。


1人は黒味が少し抜けたような短髪、赤みの強い橙色の瞳をし動きづらそうな官服に似た服を纏っている。その男性が少女を見ながらにこりと微笑みを浮かべる。

「ああ、よかった。目が覚めたのですね」

透き通るような声。


「ああ、まったくだぜ。交代で見ているのが大変だったぜ」

男らしい低い声。

やれやれと肩の撫でおろす男性はざんばらな短い金髪で、濃い赤紫の瞳。

動きやすそうな、異国の民族衣装のような服装。


「そう言っては駄目だよ。でもよかった。心配してたんだ」

男にしては少し高い声。

3人の中でもこの男は背が低い。

桔梗色の癖のある短髪、淡い紫の瞳。こちらは西方の神官の服装に似ている。


どれ見ても見慣れない者達だった。

3人とも少女を見ている。

けれども、その少女は青ざめていた。

どくどくと心臓が早なりする。

思い出したくない村での扱い、出来事。

脳裏に思い出されるのは……。


―――この化け物が!!お前など村の子じゃない!!

―――ただの生贄風情がっ


「あっ………あっ………」

はくはくと息が乱れる。

そんな少女の様子がおかしくなっているのに気づいた3人は川を渡ろうとしてきた。

その一人である桔梗色の髪の男性が声をかける。

「どうしたの?怖がらなくていいんだよ?」

落ち着かせるために声をかけるも少女にはその声が届いていない。



―――オ マ エ ハ バ ケ モ ノ ダ




どくり。




「いやぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」


蘇った恐怖により少女は耐え切れずに悲鳴を上げて、立ち上がって後ろの森の中に逃げていく。

待てという声が聞こえるが少女にはそれも恐怖でしかない。


こわい、こわい、こわい、こわい、だれか、だれか、たすけて、おかあさん、こわいよ。


混乱する中、森の中を走り続ける。

後ろから追いかけてくる音もするからより一層恐怖が増していく。


どうして自分を追いかけてくるのか。


どうして自分の姿が変わっているのか。


分からない。怖い。怖いよ、おかあさん。

よく知らない森の中を必死に駆けていく。

どれだけ走っただろうか、どのくらい時間がたっているだろうか。

目の前は変わり映えのない森が広がっている。

どうしたらいいのかわからない少女は走り抜けていく。

耳から入ってくるのは先ほどの男性たちの声に違う男性の声。


ああ、こわい、おとながこわい。

なぐってくる、ひどいことをいってくる。

はやくかえりたい、おかあさんのところに。



………あれ、わたし、なんでおかあさんのかおがおもいだせないの?



大切な母の顔がなぜだがぼやけている。

それに気を取られていたせいか前にいる何者かに気づかなかった。

どんっと何かにぶつかる。

少女の体はぶつかった拍子に軽々と空中に舞う。

突然のように目を見開いた少女だったが自身が地面につくことが分かりぎゅっと目を閉じて痛みを待つ。

けれど、待てども待てども痛みはやってこない。

そっと目を開けるとそこには太陽のような金色の瞳が目に入った。

「大丈夫か?」

とても優しい声。おかあさんによく似ている。

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