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「よーし、全員揃ったか?じゃあ、風馬の誕生を祝って乾杯!」
「あまり飲みすぎないでくださいよ」
どんちゃん騒ぎとなっている中で未影はちょっと離れた場所で紀陽と葵猫と一緒に座っていた。
「風馬。これ、飲んでみて」
「?」
葵猫から何かを渡された。
木で作られた杯の中には何か入っている。
「木の実で作った飲み物だよ。これなら風馬も飲めると思う」
「うん」
そっと杯を傾けてこくりっと一口飲む。
すると、口の中に果実の甘酸っぱいのが広がり、決してくどくなく飲みやすい。
「どう?」
「うん、おいしい。ありがとう」
にこっと笑ってお礼を言う未影に葵猫はどういたしましてと言い返す。
ほっこりと温かい気持ちになる空間だ。
その隣ではそんな二人を見ながら酒を飲む炎龍。
そんな三人に近寄ってくる一人の姿があった。
「炎龍、あんた。そんな目が出来るのね。なんか変なものでも食べた?」
「それは俺への嫌味か?“紅鳥”」
そこには女性の同胞がいた。
華奢な体格で髪は紫が入った黒髪は腰まであり髪紐で一つに括っている。
山吹色の瞳で動きやすような異国の踊り子のような服を纏っている。
「いえ、ただあんたっていっつも仏頂面でいたし。そんな顔するとは思わなかったわ」
「そうかよ。未影、こいつが紅鳥。女はこいつとお前だけだから俺らで言いにくいことがあったらこいつにでも話せ」
未影に声を掛けて紹介をする。
「初めましてね。私は紅鳥というの。よろしくね、風馬ちゃん」
紀陽と話していた顔とは打って変わってしゃがんでにっこりと微笑しながら話す。
「え、えっと、み……じゃなくてふ、風馬です。よ、よろしくおねがいします」
おずおずとした様子で自己紹介をし、ぺこりと頭を下げる。
そんな彼女の可愛らしさに心を打たれてしまった紅鳥。
「か、可愛い。この子、可愛いわ。男どもの中にいさせられない」
「おい、こら」
きらきらと目を輝かせてそういう紅鳥に待ったをかける紀陽。
「何よ」
「言っとくが未影は俺が預かっているからお前に預けるつもりはないぞ」
「べ、別に囲うことはしないわよっ。ていうか、あんたが預かるの?風馬ちゃんを?」
「ああ」
「風馬ちゃん、私にしない?」
「おい、こら」
「え、えっと。き、紀陽と一緒にいると落ち着くから」
一緒にいると言う未影に紅鳥はがくりと肩を落とす。
「こ、こんな可愛い子が言っているなら引くしかないじゃないっ」
「まあまあ、そう落ち込まないで。風馬、紅鳥はこの中でも紅一点だったから寂しかったんだ。これからゆっくりでいいから仲良くしてあげて?」
ぽんと気を落とす紅鳥の肩を軽く叩いた葵猫がこう言ってきた。
未影は了承するようにこくりと頷いたのを見て、ありがとうと礼を言う。
「鬱陶しかったら言うんだぞ」
「え、ん、りゅ、う?」
「喧嘩しない」
癇に触れる一言を言う紀陽に掴みかかりそうになる紅鳥を止める葵猫の図。
そんな三人の様子を見てぽかんとしてしまう未影。
すると、そこにまた近づいてくる姿が二つ。
「紅鳥、暴れてくれるなよ?」
「折角の宴なんだし」
そこには二人の青年が立っていた。
他の者達よりも未影に年近い顔立ちの二人。
動きやすい異国の服に鳶色の髪でざんばら。淡い水色の瞳で両刃を揃えた槍を持っている。
もう一人も似たような服を取っており、琥珀色の短髪は癖がなく、深い緑色の瞳をしている。
どちらも端正な顔をしている。




