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6

もう嗚咽で何を言っているのか自分でも分からなかった。

でも、おかあさんは分かっているように相槌を打ちながら私の頭を撫でてくれる。


「うっく、ひっく」

「うん。怖かったね、つらかったね、寂しかったね。よく頑張ったね」

「うんっ」


「未影は強い子だもんね。おかあさんの自慢だもの」

「うんっ」


「優しくていい子。私の大切な子よ」

「うんっ」

「未影、おかあさんはね。お空に行かないといけないの」


そっと抱きしめてくれたおかあさんが体を離して、私を見つめながら話してきた。

「お、お空?」

「そう。おかあさんはしんじゃたからお空に行かなくちゃ」

「や、やだぁ!!おかあさん、おかあさんといっしょ!」

また、ぎゅと抱き着く。


「そうね。おかあさんも未影と一緒にいたい。けど、無理なの。分かるよね?」

「———っ」

「おかあさん。未影をお空から見守っているわ。ずっと」

「ず、ずっと?」

「うん。未影は泣き虫さんだし、寂しがりだもの」

そっとまた体を離しておかあさんが涙をぬぐってくれる。



「でも、未影。貴方にはもう一緒にいてくれる人がいるでしょ?」

一緒にいてくれる人?

すると、おかあさんとはまた違う声と音が聞こえる。



『————―――――み……、か、げ!未影!頼む、目を開けてくれっ!!!』


この声。




「ほら、貴方にはちゃんと一緒にいてくれる人がいるわ。そうじゃなきゃ、ここまで来てくれないもの」

そう言っておかあさんは私の両手を握ってくれる。

「ねえ、未影の名前の意味を覚えている?どんな暗闇でも影が覆っていようとも未来へ進んでくれる強い子で未影よ。だから、こんなところでこもっていちゃだめ。前に進まなくちゃいけない。分かるわよね?」

おかあさんから何時も泣いていた私に言ってきた言葉。

私の名前の意味。

「————うん」

「うん、よく言ったわ。流石私の子。———―――――もう時間だわ」

すると、ぴきぴきと空間に罅が入る。

「いい、未影。これだけは忘れないで」



貴方はおかあさんにとっての宝物よ。

貴方の成長が見れてどれほどよかったことか。

もう言葉には言い表せないほど幸せだった。



「私の元に生まれてきてくれてありがとう。幸せにおなり、私の可愛い子」

「————っ、うん。おかあさんっ!!」

わたしもおかあさんにあえてよかった!おかあさん。

「だいすきだよ」

「——————ええ、私も大好きよ」

そして、空間が壊れた。





「未影!頼む、起きてくれ!!」


力強い声が聞こえてくる。



のろのろと瞼を上げると金色の輝く宝石が映る。

「きよう……」

「———っ、よかった。本当にっ」

名を呼べば、安心したように息をつき私を抱きしめてくれる。

ああ、やっぱり温かい音だ。

「おお、目を覚ましたか。よかったよかった」

紀陽の音に集中してたら聞き慣れない声が聞こえてきた。

見てみると紀陽の後ろには見たことのない人たちがいた。

「うんうん。“鎖”もちゃんと”外している”な。これで安心だな」

“鎖”?

よく分からない言葉に首を傾げていた。



その時。

ふっと視線に(よぎ)った緑色の光。

ぽおっと光るそれは蛍のように飛んで空へ向かっていく。



「………いってらっしゃい、おかあさん」

————いってきます。未影

おかあさんはそう言って空へと旅立った。





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