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第一話 その少女、選定

これはとある時代とある村の(おぞ)ましい儀式がある。

それは村の中で生まれる忌み子を神に捧げることで村の繁栄がもたさられるというものであった。

そして、この日。儀式により1人の少女が殺された。

少女が忌み子と言われていた理由は彼女の耳が千里の声でさえも聞き取れ、また人ではないモノの声を聴きとれるからだ。

彼女の体はやせ細っていて、身なりも汚らしい、儀式により心臓を一突きにされ横たわった姿。

もうそこには意識はなく、濁った瞳に映っているのは淡い緑の光。




「かわいそう、かわいそう。このこはなにもしてないのに」



「どうして、にんげんはこのこをころしたの?」



「やさしいこだったのに」



「そうだよ。ぼくたちのことをきづいてくれたやさしいこ」



「このこをころしたいきもの、ゆるせない」



「このこ、このままだとまえのこのように”たべられちゃう”」



「どうしよう」



「どうしよう」




この声たちは誰にも聞こえない、この声たちは誰にも見えない。

この声たちは少女にとっては心の支えであった。

そんな時に声たちとは違う女性の声が聞こえてきた。


「この子は私の”器”に相応しいわ。とても綺麗な魂、そして心優しい心、この子を神の器になりましょう」


そう言って女性は少女の遺体に手を伸ばすと体から白い光が出てきた。

それは少女の魂だ。

これは少女が神となる日。


「お前は忌み子だ」

「この世にいないモノの声が聞こえるなどおぞましい」

「おまえなど神様の生贄にしかならないのだ」

「ああ、お前のような子がどうしているのだろう」

村で言われた言葉。


おなかすいた。のどかわいた。からだじゅうがいたい。


いたい、いたい、いたい、いたい。


あかあさん、いたいよぉ。


「ごめんね、ごめんねっ。守ってあげられなくて、ごめんね」


あかあさん、たすけて・・・・・・・・・・・。



「もう大丈夫よ。

もう、あなたを傷つける者はいない。

あなたにひどい言葉をかける者はいない。

いい子、いい子。よく頑張ったわね」



ふわりと温かい何かに包まれる。

おかあさんだと思ったけど違う。おかあさんの手は傷だらけだから撫でてくれるとすぐに分かった。でも、とても優しい手。



川の流れる音が聞こえる。

鳥たちの鳴く声、心地良い風が頬をなでる。

目を開けるのも億劫だったのに、体が重かったのになぜだか今はそれがなくむしろ以前よりも軽い。

恐る恐る瞼を開ける。

目を開けた先には樹木の枝。

そして、青く澄んだ空が見える。

「……ここは?」

少女は起き上がり、きょろきょろと周囲を見回す。

そこにあるのは樹木に川、どうやら森の中のようだ。

どうして自分がここにいるのだろう?だって自分は……。

あまり思い出したくない記憶にずきりと頭に痛みが走り、頭を押さえた。

すると、さらりっと栗色の髪が零れ落ちる。


「……………え?」


自身の指でつまむとそれは自分の髪だと気が付くが、自分はこんな髪をしていないことに困惑した。

慌てて川の近くまで寄って水面を鏡代わりに覗き込む。

すると、少女は自分の姿が変わっていることに目を丸くした。

栗色の髪は腰辺りで切り整えられていて、透き通るような翡翠の瞳。

狩衣のような白く染まっている袍や袴には緑色の糸で刺繡が施されている。

こんな服を纏った覚えはない。

肌も白く、顔だちも可愛らしい。

少女は依然と自分と比べモノにもならないぐらい自身の姿が変わっていることに動揺を隠せない。


「ど、どうして……?だって、わたし、しんで……」


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