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言葉の定義

作者: HasumiChouji

「なぁ……これ、どうするんだ? マスゴミどもに何て書かれるか知れたもんじゃないぞ」

 党の役員の1人は、厳しい顔でそう言った。

 私は与党第一党の女性議員だ。あと、何年かすれば……どうでもいい「担当相」だろうが、閣僚の1人に選ばれそうな所まで来ていた。

 今回の裁判さえなければ……。

 よりにもよって、twitter上で、私がやったあるtwを政府批判派のジャーナリストから名誉毀損だと訴えられ……そして見事に敗訴したのだ。

「で……でも……国会議員と言っても、一個人ですので、間違いぐらいは……」

「君のフォロワー数は、ウチの新聞の発行部数より上だろ。なら、君のtwには、ウチの新聞の記事以上の責任が有るとの見方も可能では無いかね?」

 そう言ったのは、四国の地方紙とTV局のオーナー一族の出身である党の長老格の議員だった。

 早い話が、あの有名なゲーム規制条例を推してたところの元社長だ。

「マスコミを『マスゴミ』と呼んでる我々が、その『マスゴミ』並のお粗末な真似をしたとあってはねぇ……」

「高裁に圧力をかけるか? 人事交流で入ってる検事を担当の裁判官にするとか?」

「そこまであからさまな事をやったら、それこそマスゴミに何て書かれるか知れたもんじゃないぞ」

「全く、戦時中みたいに『紙の配給を止めるぞ』と云う脅しが効く時代が懐しいよ」

「いや、あんた、戦時中は子供だろ」

「だいたい、こんな粗忽者のメスガキを党の看板娘にしたのは誰だ?」

 おそるおそる手を挙げたのは、前首相だった。

 会議室に居並ぶ党の役員達は気まずそうな顔になった。

「でも、もう、SNSでは『普段からマスゴミなんて言葉を使ってるヤツが、そのマスゴミよりお粗末な真似するなんてブーメラン』とか書かれてますので、何かの対処は必要かと……」

 前首相は、私を擁護するつもりなのか、そう言ってくれた。

「じゃあ、何とかしましょう」


 その日の内に、当事者の私にとっても意味不明な閣議決定が成された。

「ネット上で『ブーメラン』と云う言葉で誰かを批判する場合、批判の対象は野党やその所属議員・支持者および報道機関・報道関係者であり、政府・与党およびその関係者への批判には使わないのが通例である」

 ……いや、だから、私が望んでたのは、そんな事じゃない。

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