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バカの国の救世主  作者: 柚木
1章 国宝を手に入れろ
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9話 救世主って呼ばれたい! その三

 洞窟の中に入ると、外とは違い蒸し暑い。

 この山って火山か何かなのか? でも、火山ってプレートの近くじゃなかったっけ?

 関係ないのもあるんだっけ? 暑くて全然頭が働かない。

 奥に進むにつれ、気温はどんどん上がっていき、何もしていないのに汗がしたたり落ちる。


「ここ、暑すぎるだろ……」


「バングがいるからね。客が来るってわかってるのにこんな暑くしてるってことは歓迎してないわね」


「歓迎とかのレベルじゃねぇだろ。こんな暑かったら自分もダメージ受けるだろ」


「バング様はがこのくらいの熱でダメージ受けませんよ。マグマがお風呂の代わりだって聞いたことあります」


 もう人間じゃないな……。


「しかも、気持ちよくてマグマで溺れかけてたわ」


「それ、有害物質で気絶したんじゃないのか?」


「あいつはそのくらいの毒じゃ死なないわよ」


「バングってどんな奴だよ」


 マグマを風呂代わりにして、毒でも死なないって……、それ生き物か?

 ほとんど不死身とは聞いてたけど、そこまで常識から外れてるとは思ってなかった。


「真龍で、ガルヴァディスや世界中に住んでいる竜人の御先祖様です」


 竜人の先祖か。

 ってか、ガルヴァディスのってことはあのカエルや蛇も竜人なのかよ……。

 言われれば爬虫類とか両生類はドラゴンっぽいけどさ。

 そうなると、あんまり見た目は期待できないかな。


「そういえば、この熱はバングが嫌がらせでやってるってことは、レヴィも歓迎されてないのか?」


 ピタッとレヴィの時間が止まった。


「いい度胸じゃないの……」


 何かがレヴィの中で弾けたらしい。

 サウナ以上に熱い空気を思いっきり吸い込みレヴィが叫んだ。


「バング! 私が来てるのに嫌がらせするなんていい度胸じゃないの! もしかして私の事忘れたってこと!?」


 洞窟が崩壊しそうな大声が狭い洞窟で反響し、耳を塞がないと鼓膜が破れそうだ。


「今すぐ熱を止めれば許してあげるわ! 私の強さは十分わかってるわよね!?」


「レヴィ様? 本物? 申し訳ありませんでした。すぐに涼しくして飲み物の準備をしておきます!」


「わかればいいのよ」


 洞窟の奥から焦った声が聞こえてきた。

 洞窟の気温が高かったのは当時もこんな脅しをしてたからじゃないんだろうか……。


「お前声がデカすぎるぞ、鼓膜が破れるかと思ったよ。な、ノイル? おい、ノイルが倒れてる!」


「えっ? ホントだ、ノイル大丈夫?」


「はい、ちょっと、頭が、クラクラ、しますぅ……」


 熱中症? さっきの大声? それとも何か別の病気?


「とりあえず、奥に行こう。バングなら何とかしてくれるかもしれないぞ」


「そうね。どうにかさせるわ」


 ノイルを背負ってバングの元に着いた時にはノイルは復活していた。

 どうやら獣人の高感度な耳であの大声を聞いてしまい、酔った状態になっていたらしい。



「レヴィ様、この節は申し訳ありませんでした。急な面会だったもので……」


「洞窟に入った人の気配くらい読みなさいよ」


 人間じゃないとバングは思っていたよりもドラゴンだった。

 外の連中の先祖だって言うから、もっと大蛇とかそういう姿を想像してたが、対面したのは硬そうな鱗に覆われていた立派なドラゴンだった。


 そしてその立派なドラゴンを差し置いてなぜかレヴィが優雅にくつろぎ始めた。

 本来のここの主は俺達の隣で小さくなり頭を下げていた。

 小さくと言っても元がデカすぎて平屋の家くらいなんだけど……。


「それで、こちらの二人は誰ですか?」


「可愛い女の子の方はノイル。そっちの男は大雅。事情があって連れてきたわ。私の協力者よ」


 俺の説明が雑だなぁ。


「なるほど。そういうことですか」


 説明を聞き、バングは俺の匂いを嗅いで勝手に納得されてしまった。

 向く時は一声かけてくれないと、食われるんじゃないかと思っちゃうな。


「ところで、ルーとメイルは元気にしてる?」


「ええ、ルーは相変わらず端の海で寝ながら防衛。メイルはそんなルーの世話と打ち漏らした手下どもの殲滅の指揮を取ってます」


「ルーとメイルってどなたですか? 手下って誰の事でしょうか?」


「ノイル悪いけど、甘い飲み物が飲みたくなったわ。外のオーラルから貰ってきて。よからぬことを考えないようにノイルが持ってきて。果汁百パーセントの奴」


「えっ? わかりました」


 素直なノイルはレヴィの雑な人払いを信じてこの場から離れて行った。


「バング、ここからは真面目な話よ」


「魔王の件ですか。異世界からこの人間を連れてきたということは、封印前に言われていた通り討伐に動くんですね?」


「そう、そのための兵力を集めたい。それと、預けていた神器の部品を受け取りに来たの」


「了解しました。ですが、そうなるとこいつは何のために?」


「参謀役兼主力よ。私が封印中にここまで脳が退化してるとは思わなかったのよ」


「理解しました……」


 レヴィだけじゃなくてバングも同じ認識らしい。

 確かにラスパーは頭がいいとは言えなかったよな。


「それとあんた、政治くらいちゃんとやりなさいよ」


「えっと、何のことでしょうか?」


「孤児院の事よ。孤児院なんて名ばかりの人身売買の店じゃないの! 昔から命は売り買いするもんじゃないって言ってたでしょ!」


「人身売買ですか?」


 そのワードを聞いて、バングの目に疑問が浮かんでいた。


「とぼけても無駄よ。昨日その売り手を捕まえたもの」


「ちょっと待った。バングは本当に知らないみたいだぞ」


「そんなわけないじゃない。オーラルってのが昨日手を焼いているって言ってたじゃない」


「ってことは、そのことをバングだけ知らなかったことになるな。もしかしてバングは普段政策には関わっていないのか?」


「ああ。そもそも政治に興味はないからな。代表としてたまに表舞台に立つだけだ。一応代表として城下の事件や決まり事なんかは月一で渡されている。そこの棚にあるのがその書類だ」


 少し見せてもらうと、結構細かく内容が書かれていた。

 新しい法案、城の財政なんかが書かれていた。

 そこには人身売買の事は書かれていなかった。


「確かに書いてないな」


 事件の欄にはほとんど書かれていないか。

 パラパラとめくっていくと、一件の事件が目についた。


「バング、国宝の盗難事件って何のことだ?」


「そのままの意味だ。一月くらいで解決したがな」


「あんた、国宝って神器の部品じゃないでしょうね」


 バングはそっと目を逸らした。

 俺達が取りに来た奴なのか。


「こほん……。ですが、戻って来たので大丈夫です……。魔法を何重にもかけて厳重に保管してるらしいので」


「らしいって、あんたがやりなさいよ。ってかここで保管しなさいよ!」


 世界最強の番人付きだったら確かに安全だな。


「俺もそう言ったんだが、国民へ見せたり宰相の相続の時に渡すからと言われてしまい……」


 世界最強なのに押し切られたのか……。

 要は、バングは名ばかりの代表で実権は宰相が握ってるってわけか。

 そうなると、確かに国に直接関係ない事件はここまで上がってこないか。


「バングが無関係なのはわかったよ。でも、少し手を貸してくれ。人身売買にケリをつけようと思ってるんだ」


「いいだろう。そういうからには売り手の見当はついてるのか?」


「確証は何にもない。だけど、一人に当たりを付けてる。何もないよりはマシだろ?」


「それって誰なの?」


「オーラルだよ。手を焼いてるなら、バングに頼ればいいのにって思ったのと、この国宝の盗難事件だ。解決と同じ時期にオーラルが宰相になってる」


「国宝の盗難は自作自演。宰相になったのは人身売買を自分で握りつぶすためか」


「完全に想像だけだけど、この方針で行く」


 細かい話をしようと思っていたが、タイミングよくノイルが帰って来たので話は打ち切りになってしまった。

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