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バカの国の救世主  作者: 柚木
1章 国宝を手に入れろ
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8話 救世主って呼ばれたい! その二

 ラスパーもついでに引き渡し、ノイル達は一度政府の預かりになることになり、俺達の宿もないとわかると、しばらく孤児院の管理を任されることになった。


「こっちは助かるけど、結構管理は雑だな」


 身元の確認も無しで、施設の管理を任せられるとは思っていなかった。


「深く考えないのがこの世界の良い所よ」


「考えなさ過ぎたせいで、俺がこっちの世界に来ることになったんだけどな」


 それも俺にしてみればよかったかもしれないけど。


「お掃除終わりました」


「お疲れ様。悪いな、雑用任せちゃって」


 ラスパーが暴れて散らかった掃除をやるって言われたからって任せてしまった。


「問題は晩飯をどうするかだな。自慢じゃないが、俺は自炊できないぞ。子供達の中に料理ができる子はいないか?」


「あれ? なんで私を見たのにスルーしたのかな?」


「聞く必要はないだろ」


 女神だって自慢してるんだし、自炊なんてやりそうもない。


「舐めてもらっちゃ困るわよ。貞操観念の塊で常に純潔を守って来た私に家事ができないと思ってるの?」


 恋人いない歴と年齢がイコールの人か。

 俺も似たようなもん……、いや、俺は自分の意思で作らなかっただけだ。

 言い寄ってくる女子も多かったし、こいつとは違う。絶対に違う。


「じゃあ、レヴィに任せてみるか。買い物は俺が行った方がいいか?」


「あんたみたいな坊ちゃんに買い物ができるの?」


 優位に立ったと思って調子に乗りやがって……。


「俺にはできないから家事全般はレヴィに任せることにする」


「任せなさい。完璧にこなして見せるわよ! あれ、料理だけのつもりだった気がするんだけど」


「気のせいだ。お前に期待してるぞ」


「それじゃあ、早速買い物に行ってくるわ!」


 この女神ちょろいな。

 こんな調子でよく魔王に騙されなかったな。

 レヴィが騙されたと気がついたのは家事が一通り終わった後だった。


 翌朝、ノイルが俺を起こしに来てくれた。


「タイガさんおはようございます」


「起こしに来てくれたのか、ありがとう」


 ちょうどいい場所に昨日よりも綺麗でふわふわの頭があり、何となくその頭を撫でた。


「あの、なんで撫でるんですか?」


「ごめん。小さくて可愛いからついな」


 デリカシーが無かったな。

 あんまり頭を撫でられたくはないか。


「小さい……」


 これは、小さいのを気にしてるのか。

 それは大分拙いことしたな。


「私って何歳に見えますか?」


 これは何て答えればいいんだ?

 見た目で言えば十歳だけど、もしかして二十歳超えてたりするんだろうか……。

 でも、二十歳超えてて孤児とは言わないよな。

 でもでも、それは元居た世界の常識だし、こっちではまだ孤児なのかもしれない。


「十歳?」


 深く考えて見当違いなことを言うよりは素直に思ったことを口にした。


「やっぱり他の子と同じに見られてたんですね……。私十七歳です……」


 同い年だったか……。

 十ニか十三だったら、発育の問題にできるけど、十七にもなるとそういう遺伝子なんだろうな。


「若く見えるね」


「この年代に言うことじゃないと思います」


「ごもっともです」


 俺も十歳に間違えられたら凹む……。


 朝食の時に孤児たちの年齢を聞くと、ノイルはこの孤児院で最年長だったため、孤児院の代表として一緒にバングの元に向かうことにした。



 城に着くとオーラルが俺達を出迎えてくれた。

 城の中を通り、城の裏手に出た。


「バング様がいらっしゃるのはこの山です。迷子にならないようにしてください」


 これガルヴァディスに来る前から見えていた山だ。

 地面が平らなせいで物の縮尺がいまいち掴み切れなかったが、こんなすぐそばにあった山なのか。

 山の入り口にある小屋の中に入り、受付らしい人に名前を伝え入山した。

 周囲は木のせいで暗くひんやりと寒いが、人の通る道だけはしっかりと整備されており、迷子の心配はなさそうだ。


「そちらの女性は、一昨日女神だと騒いだ方ですよね?」


 あの騒ぎを知っていて俺達をバングに会わせるつもりなのか。

 顔がトカゲのせいで、顔の変化がわかりにくいな。

 ラスパーくらい顔色がわかりやすかったらよかったんだけどな。


「何を考えてそんなことを言ったのかはわかりませんが、バング様にはそういう嘘はやめた方がいいですよ。あっさり殺されてしまいますから」


 会わせても問題が無いって判断か。

 バングの命を狙う奴でも会わせることで、世界最強は何物も恐れないってのを誇示したいのか。


「この道を道なりに進めばバング様がいらっしゃいます」


「この建物は何ですか?」


「控室ですよ。案内役や、面会が複数あった場合にここでお待ちいただいてます」


 控えめだけど、しっかり整備されてるな。

 それに結構中にある物は豪華そうだし、ここに来るのは一定の地位がある人が多いらしいな。

 そのままオーラルと別れ、言われたまま道を進んで行くと、洞窟の前で道が途切れていた。


「ここってことでいいんだよな」


 明らかにダンジョンがありますと言わんばかりの怪しい洞窟だけど、こんなところにこの国のトップがいるのか?


「警戒しなくていいわよ。バングの気配もするし、あいつ昔からこういう所で寝るのが好きなのよ」


「レヴィさんはバング様とお会いしたことがあるんですか?」


 これは何て答えればいいんだろう……。

 本当のことを言ってもいいんだけど、それはそれで面倒くさいな。


「当然よ。私は女神レヴィなんだから」


 こいつはこういう奴だよな。

 まだ出会って数日だけど、何となくこいつの事がわかって来た。

 また変な目で見られないといいなと思っていたが、ノイルの反応は違った。


「本当にあのレヴィ様なのですか? 遠い昔に魔王を封印した女神レヴィ様!」


 予想以上に食いついて来た。

 俺が思っていたよりも、信仰心は薄れていないのかも知れない。


「ということはタイガ様はレヴィ様の御使い様ですか?」


「そうなるのか」


 こいつの御使いかと言われるとそうなんだけど、個人的に違う気がするんだけどな。

 半強制的に手伝いをさせられてるし。

 その辺を一から説明するのは面倒くさいから御使いでいいか。


「やっぱり私の祈りは届いてたんですね」


「祈り?」


「はい。いつも寝る前にレヴィ様に祈ってたんです。早くここから自由になりたいです。って、そうしたらお二人が来てくださいました。あれ、違うんですか?」


「ううん。ちゃんとノイルの祈りは届いてた。遅くなってごめんね」


 そう言ってレヴィは笑った。

 何を言っていいのかわからなかった俺とは違い、女神としてノイルの言葉を受け止めた。

 こいつはやっぱり女神なんだ。

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