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バカの国の救世主  作者: 柚木
0章 プロローグ
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3話 異世界転生のために死んでくれ! その三

「あんたの言うこと聞いてあげるんだから、絶対に私の世界に来てもらうわよ」


「ああ、約束は守るよ。それで、この指輪を付けてれば強くなれるんだな?」


 レヴィから縄と目隠しを外してもらい、反撃の準備を始める。

 始めるのはいいんだけど、この指輪をつけたらこいつの力を借りるんだよな……。


「これを付けたら頭のレベルも同じになるってことはないよな?」


「ならないって、私の崇高な知識をあんたに渡すわけないでしょ」


「それならよかった。頭がお前と同じになったらまるで意味がないからな」


「おやおや大雅君、それは私にバカだと言ってるのかしら?」


 自動車工場か? いや、スクラップ工場か。

 今回意外にも色々やってそうな跡が色々あるな。

 ここで廃棄するのは鉄屑だけじゃなさそうだな。


「なぁ、お前は銃に撃たれたら死ぬか?」


「さっきからお前お前って私はレヴィよ。女神レヴィ!」


「はいはい。それで、撃たれたら死ぬか?」


「そんなの平気に決まってるでしょ。私にダメージを与えたいなら太陽でもぶつけなさい」


「それでようやくダメージなのかよ……」


 お前にダメージを与えるためには、全人類を殺す覚悟じゃないとダメなのか……。

 それはいいとして、そのくらい頑丈なら後は攻撃力だけだけど、このコンクリでいいか。

 そんな軽い気持ちで何となく近くに落ちていた破片を握ると、粉になって手から零れた。

 こんなに強いなら作戦はいらないか。


「作戦は決まったの?」


「今回はそんなの必要ない。寧ろここで小細工をする方が相手に舐められる」


 俺は全力で倉庫のドアを蹴破った。

 豆腐よりも脆く崩れた鉄扉の音に近くにいた男が銃を抜いた。

 打ち出された銃弾の速度は遅く、力の差をわからせるためにそれを摘まんだ。


「お前達の事を教えろよ。そうすれば命は助けてやるよ」


 小さな弾丸を平らに握りつぶして見せると、男は全てを洗いざらい吐いてくれた。

 こいつ等は反社会勢力でこの工場も経営しているらしく、今回の様な荒事でも使っているらしい。

 今回の実行犯は全部で十人、その内一人はこいつらしく気絶させて眠らせることにした。


「ここの実態もわかったし、相手がやくざなら派手にやっても平気だな」


 縛られててストレスも溜まってるし、この工場をスクラップにしてやるか。

 近くにある物を力任せに破壊していると、すぐに連中が集まり始めた。


「おい、これは何の音、だ……?」


「その声はさっき俺を殴ったやつだよな?」


「これはお前がやったのか?」


「あんまりにむしゃくしゃしたからやってやったんだよ!」


 近くにあった車のフレームを片手で投げつけると、三人巻き込むことに成功した。


「後、六人だよな」


 叫んで背中を向けた四人を気絶させ、残ったのは見るからに屈強そうな大男と偉そうなスーツを着た男の二人。


「やれ。生かしておくには危険すぎる」


「そう言ってもらえて嬉しいよ」


「は?」


 大男はすでにスクラップの山に埋まっており、後はこのリーダー一人だ。


「俺はお前らを殺さない。だから、警察に全部話せ。それで命だけは助けてやる」


 そのまま一撃で気を失わせた。


「これで、終わりだな。レヴィもういいぞ」


「警察に電話とかするんじゃないの?」


「どっちでも変わりないって、父さんが俺を助けるために金を払うはずはない。適当に自分の兵隊を連れて調べるだろうさ。だから、これで十分」


 適当に持っていた紙に別れの言葉を書きリーダーの頭に張り付けた。

 父さんならこいつ等の親元から金をだまし取るだろうし、それを今まで育ててもらった恩返しってことにしておこう。


「別れの言葉なら直接の方が良くない?」


「いいんだよ。どうせ戻ってくる気も無いし、このくらいで感動する奴じゃない」


「それならいいけど。それじゃあ、転移するけど忘れ物はない?」


「持って行っても邪魔になるだけだからな」


「それじゃあ、一名様ご案内」


 俺とレヴィを挟むように魔法陣が上下に現れた。

 本当に魔法ってあるのか。

 魔法があるなら、これはもういらないよな。

 手に持っていた携帯を握りつぶし俺は魔法陣に挟まれた。



 魔法陣の中は目が潰れてしまいそうなほどに白く眩い空間でふわふわと浮いていて、レヴィに手を引かれながらその空間を進む。


「この先が私の世界よ」


 青い穴から飛び出すと、一面が青く何もない空間に飛び出した。

 随分殺風景な世界だなと思った直後、体が重力を思い出し自由落下を始めた。


「うわああぁぁああ!!」


 速度がどんどん早くなり、雲を突き抜け叫び終わったころには地面が目の前に迫っていた。


 これ死んだな。


 やくざに誘拐されたと時よりも確かに死を認識し、ドゴンと大地にめり込んだ。


「なんで空なんだよ! 地面に普通に転移してくれよ!」


 レヴィに怒鳴りながら地面から抜け出すと、クソ女神は優雅に紅茶を飲んでいた。


「それじゃあ、どれだけ頑丈化理解できないでしょ? 体の頑丈さを確認したそうにしてたから、女神からわかりやすく強くなったのを認識してもらおうと思ってね」


「凄いわかりやすく頑丈さは伝わった」


 魔王よりも先にこいつを殺してやろうかと本気で考えた。


「ここがお前の世界ってことでいいのか?」


 思っていたよりも異世界って感じがいしない。

 確かに草原や森なんかの自然は多いし、遠くには町っぽいのもある。

 だけど、地球でも探せばありそうな感じなんだよな。


「そうよ。異世界っぽくないとか思う気持ちももわかるわ。でも気候なんかの環境が似ていると似たような感じになるもんよ。でもね、一つそっちの世界とこっちの世界で決定的に違う所があるのよ」


「魔法とか魔王ってわけじゃないよな?」


「もちろん。天才なら周りを見て気がつくと思うわよ」


 こいつの言い方が一々ムカつくな。

 だけど、違う所ってどこだ? 草木が違うのは当然として、他に違和感はどこだ?

 遠くの建物は小さく見えるけど……。

 いや、いくら何でも見えすぎじゃないか?


「もしかして、この世界って星は平らなのか?」


「おお、大正解。良く気づいたね、そっちの世界でいう所の天動説って奴よ。まぁ、厳密には地面も動いてるから――」


 信じられないけど、世界が平らじゃないと、ここから見える町のサイズがおかしいことになる。

 俺、マジで異世界に来ちゃったのか……。

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