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バカの国の救世主  作者: 柚木
1章 国宝を手に入れろ
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13話 救世主って呼ばれたい! その七

 教会に戻ると、見事に全員が捕縛され地面に転がっていた。


「旦那、どうでした? 取引の場所は見つかりましたかい?」


 一人だけ捕縛されずに自由な男が親し気に話しかけてきた。

 今回は協力者だけど、この態度はどうなんだろうか、他の売人が恨めしそうに睨んでくるし、こいつはこの先この国で生きていけるんだろうか?


「まあな、それでレヴィを連れに来たんだけど、こいつ等をこのままってわけにもいかないよな」


 普段がどのくらいかわからないけど、四十人近くが教会に転がっていて、全員をバングの元に運ぶのは無理があるしな。


「いいんじゃない? こいつらがどうなってもこっちの良心は痛まないし、このままアジトに乗り込んでいいと思うわよ」


「あっしはどうしたらいいんでしょうか?」


 なんかウザいな。

 急に小間使いっぽさを出されてもこっちとしては迷惑極まりないんだけど、約束は約束だしな。

 仕方なく、こいつだけをバングの元に運び、他の連中は逃げられないようにさるぐつわを噛ませ、柱に縛り付けて置いた。

 余計な時間はかかったが、オーラルを追うために本棚の奥にある通路を進み始める。


 明かりのない通路を下に進んで行くと、奥の方にわずかな明かりが見えた。

 静かに近づくと、無駄に広い廊下が二方向に延びていた。


「どっちだと思う?」


「たぶん子供達がいるのは右だな」


「なんでそんなことがわかるのよ」


「方向的に左は城で、たぶん右は受け渡し場所と繋がってる」


「なんでそんなことわかるのよ」


「空き家から真直ぐ下りてきたからな。方向を考えればどっちに何あるかわかるだろ?」


 壁に手と肘を付けながら下りてきたが、螺旋階段にはなっていなかったし、それで気がつかない程のカーブなら方向が逆になるほど歩いてない。

 俺の説明に納得したらしく何も言わずに俺の後ろについて来た。


「なんで、オーラルは国宝を売ったのかしら?」


「それは本人に聞かないと何とも言えないけど、俺の予想だと唆されたんだと思ってる。それで、そいつから人身売買の細かい指示を聞いて実行したんだと思ってる」


「そんな素振りあった?」


「全体的にお粗末な部分が多かったからな、人身売買に対しては結構手が込んでるのに、あんなところで着替えたり、国宝の嘘もわかりやすかったからな」


「嘘?」


 こいつ気づいてなかったのかよ……。


「あいつ、国宝を動かせないように結界を使ってたんだぞ。定期的に国民に見せるはずなのにな」


「それって変なことなの?」


「あの竜玉は結界が重なって本物の様に見せてるんだぞ? ってことは、国民に見せるにはあの結界を外してあの台を移動させないといけない。でも、結界を外すと竜玉は消える」


「じゃあ、国民への展示はしてなかったってことね」


「そうなると、色々疑問が解け始めて全体が見えてくる。国宝を展示するって嘘を吐くのはバングに国宝を見せられないから、なぜ見せられないか、それは最初から取り戻していないからって感じで考えて行って俺がたどり着いたのは、オーラルは竜玉を自分で盗み、売り払った金と竜玉を取り返したという実績で宰相にまで上り詰めた」


 そこまでやったのに、俺と会話した時にだけあれほどボロをだしている。

 そうなるとオーラルにそれを吹き込んだ奴がいるはずだ。


「それで、裏に誰かいるって言ったのね。でも、この世界のほとんどはその程度のボロは気づかないわよ」


「それは不安材料なんだけどな」


 結局オーラルの嘘を見抜ける人がいなかっただけで俺だけが気づいただと、裏に誰も居なくて今の行動が無意味になる可能性もあるんだよな。


 それからしばらく進んで行くと、この通路の終わりが見えてきた。

 下りた時と同じくらいの階段を上ると、街の外にある森に出た。


「外で受け渡しってこと?」


「それはこの足跡を追えばわかるだろ」


 足跡を追っていくと、子供達の鳴き声が聞こえ始めた。

 森の中に人工的に開けた場所があり、そこでマントで姿を隠した連中が停められていた複数の馬車にノイル達を押し込んでいた。

 馬車が全車出発したが、連中の中で一際大きな奴とオーラルだけがその場に残った。


「いい加減隠れてないで出て来いよ」


「お前等は昨日の二人じゃないか! こんなところで何してやがるんだ!」


「お前の後をついて来たんだよ」


「使えねぇ野郎だな。まあいいさ、あの馬車を追いたいなら俺を倒してからにしな」


 マントを脱ぎ熊の獣人が俺達を睨む。


「お前を倒せば追ってもいいんだな?」


「倒せると思ってるならな!」


 熊の獣人は俺の胴体程の太い腕を全力で振り下ろす。

 体が地面に沈むほどの攻撃を片手で受け止めて見せると、熊の獣人の顔色が変わった。


「お前も力自慢ってわけだ。いいじゃないか、だが俺を力だけの男だと思ぶふぉ……!」


 受け止めたのとは逆の腕で熊の獣人の腹を殴ると、血を吐きながら膝をついた。


「悪いけど、お前の話し相手をしてやるつもりはないんだよ」


 膝をつき丁度蹴りやすい位置に下りてきた顔を蹴りぬき、決着をつける。


「あいつが一撃? お、お前等一体何者だ?」


「この世界の救世主。それで、お前に聞きたいことがある。お前を唆した奴は誰だ?」


「わ、わからない……、俺も、直接会ったことはないんだよ……、命令されてそれでやったんだよぉ……」


「それじゃあ、さっきの連中に聞くしかないか」


 オーラルの事はバングに任せてるし、俺達はこのまま真直ぐ馬車を追いかければいい。


「フライ」


 ふわりと体が浮き、雲の高さまで浮かび上がる。

 一瞬平らな世界に広がる広大さに目を奪われかけたが、何とか目的の連中を見つけた。

 魔法をかけているらしく、馬車とは思えない速度で移動しすでに森は抜けたた後だった。

 遠くにはガルヴァディスと同じ様に壁に覆われた場所が見えた。

 あそこに行くのかと思ったが、馬車は速度を急に緩めた。

 建物っぽいのがいくつか見えるけど、暗いし遠いな。

 あんまりぐずぐずしてると馬車も見失いそうだし、あの辺ならまだ追いつくな。

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