表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカの国の救世主  作者: 柚木
1章 国宝を手に入れろ
11/88

11話 救世主って呼ばれたい! その五

「さて、誰に売ってるのか教えてもらおうか」


「売ってるとは何のことだ? 私は善良な孤児院の院長だぞ!」


 大分きょどってるな。

 現状が突然襲撃されたみたいなもんだし仕方ないっちゃ仕方ないけど、目が泳ぎ過ぎだな。


「そうだ。それになんで俺まで襲ったんだ。俺はここに異常がないか見回りに来ただけだ」


 流石にこのくらいは口裏を合わせるか。


「そんな嘘無駄だよ。ラスパーのところからあんたの名前が見つかってんの。それで今日一日あんたを付けてたんだ」


「そっちこそ嘘はやめるんだな。俺はラスパーの所では買ってないからな」


「ラスパーの所ではってさ、他の所では買ってますって宣言だよな」


「いや、今のは言葉のあやだ。俺は子供なんて買ってないぞ。こいつが売ってるって話を聞いて潜入捜査をしてたんだ」


「お前いきなり何言ってやがる! おい、こいつがここの孤児を売れと詰め寄ってるんだよ。だから私は無罪だ!」


 こいつら流石に白状するの早くないか?

 こっちはそれを期待してたとは言え、もう少し探偵と犯人みたいなことしたかったな。


「そう言ってるけどどうする?」


「当然二人ともギルティ」


「そんなわけで、二人を政府に引き渡して極刑にしてもいいんだけど、二人にチャンスをやる。正直に全部話せば殺しはしないけど、どうする?」


 二人はそのまま何も言わなくなってしまった。

 これはいきなり当たりってことでいいのか?


「そいつの正体を言ったら殺されるってところか?」


「そうだよ! だから俺達は何も言わねぇ! 殺されるくらいなら捕まった方がマシだ!」


 実にお決まりのセリフ過ぎだけど、本当にこういうこと言うんだな


「それじゃあ、誰が来ても殺されない所でなら教えてくれるってことでいいのか?」


「はっ、そんな場所があるならな。そしたら全部教えてやるよ」


「じゃあ、交渉成立だな。レヴィ、バングの所に運ぶから手伝え」


「はっ?」


「振り落とされるなよ。ファスト、フライ」


 体がふわりと空に浮かび、急加速する。

 城を通り越し、あっという間にバングの寝床にたどり着き、背中に背負っていた兵士を下ろすが、すでに気絶していた。

 数秒遅れて着地したレヴィも気絶している院長を落とし、引きずって洞窟の中に入った。


「昨日話は聞いていたが、手際がいいな」


「電撃作戦だ。一発で当たるとは思ってなかったけどな」


「だが、気絶してるみたいだぞ?」


「このくらいたたき起こせばいいだろ。おい起きろ、約束の絶対に安全な場所だ」


 自他ともに認める最強の存在。

 世界中でここよりも安全な場所はない。

 でも、そんな安全地帯でもやっぱり不都合はある。


「ん、んん? バング様?」


 起きた先からすぐに気絶した。

 気持ちはわからなくもないんだけどな。

 俺もレヴィから力を貰ってなかったら近づこうとは思わないし、目の前に現れたら死んだって思うよ。

 ニ三回目の蘇生でようやく気を失わない程には慣れてくれたらしい。


「ここ以上に安全な場所はないだろ?」


「そう、なんだけど……、バング様をそんな使い方していいのか?」


「そっちの二人は俺よりも強いぞ」


 バングの口からそう言われると、二人の顔から血の気が引いて行った。


「これでわかったか? お前ら二人は最高に安全だが最高に危険な場所にいるんだ。答えを間違えないようにしろよ」


 脅しをかけると二人は競い合うように色々な情報を吐き出した。


 人身売買は一人の男が取り仕切っているらしい。

 通り名は政府の上層部に勤めているOというらしい。

 頭文字を取るってどういう神経をしているかわからないが、オーラルはそこで国内の販売、国外にもルートがあるらしく国外でも同じことをしているらしい。

 そして三日後、国外に売る孤児たちを集める集会があるらしい。


「やっぱりオーラルか。そうなると、一度確かめないといけないな」


「何を確かめに行くんだ?」


「国宝だよ。バングは取り返された国宝を見たか?」


「いや、報告だけだな。その時はオーラルが宰相になったと挨拶に来たな」


「大事な物なんだからちゃんと確認しなさいよね」


「過ぎたことはもういいとして、バングの権限で俺とレヴィが宝物庫に入れるようにしてくれ。お前がこの国の代表なら、それ以上の権限はないだろ?」


「わかった。だが、誰か道案内が必要だな」


「それなら適当に兵士を連れてくるよ。ついでにそいつに宝物庫の見学を命令してくれ」


「俺が直接許可をしたと言えばいいのに、なんでそんな面倒なことをするんだ?」


「オーラルに余計なことをさせないようにさ。部外者がバングの名を語っているのと、この城の兵士が命令されて案内しているだと意味が変わってくるだろ」


「そんなに急いで確認しないといけない事って何よ」


「行けばわかるよ」


 そのまま兵士を捕まえ、その上官と共にバングの元に行きそのまま宝物庫に向かうと、こちらの動きを監視しているのかオーラルが現れた。


「おい、なんで宝物庫に無関係の人間を近づけるんだ?」


「バング様よりこの二人を案内せよ。と命令を受けました」


「バング様が?」


 何か言いたそうにしていたが、流石のオーラルもバングの名前には頷くしかない。


「それはお前達が直接受けたのか?」


「はい。直々に私達二人が宝物庫を案内せよ。とのご命令でした」


 当然そこに突っかかるしかないよな。

 どこの馬の骨かもわからない二人がバングの許可を得たなんて信じてもらえるはずはない。

 さあ、時間は稼がせないぞ。俺の読みが正しければこいつはそれでも食い下がるはずだ。


「ここから動かさないように、国宝には何重にも魔法でガードされています。解除には凄く時間がかかるのでしばらく待っていただけませんか?」


 ドンピシャだな。


「なんで、俺達が見に来たのが国宝だと思ったんですか?」


「おや、違いましたか? てっきり国宝を見に来たものだとばかり」


「いいえ、国宝を見に来ました。そういう風に聞かれたので国宝以外の物がないのかと思いまして」


「そんなわけないではないですか」


「でしょうね。解除は結構です。遠目からでも確認できればいいと思ってますので」


 もうここは通すしかないだろ。

 これ以上引き下がれば、俺達を盗人と疑ってるようなものだ。


「わかりました。中へどうぞ」


 宝物庫の中は名前の通り金や銀で溢れていた。

 金の像に装飾品が蝋燭の明かりを跳ね返し宝物庫中に広げる。


「どうですか? 財宝は全て残っていますよ」


「ええ、素晴らしい物ばかりですね」


 こっちの理想通りに動いてくれたな。

 国宝を見るのはあくまでおまけで、本当はバングの命令で財宝があるのかを確認する。

 さっきはそう思いやすいように言っただけだ。


「国宝はどこにあるんですか?」


「こちらです」


 引き留めないってことは、何かしら対策はしているってわけか。


「レヴィなら、遠くから見ても本物かわかるよな?」


「わかるわよ。人が作った魔法くらいなら関係ないわ」


 それが聞けて安心した。

 本物を見たこともない俺にはそれが本物かなんてわからないしな。


「こちらにあるのが国宝竜玉です」


 見るからに結界ですと言わんばかりの分厚い透明な壁、その壁の中央には燃えている様な赤い玉が一つあった。


「これが国宝ですか」


「ええ、バング様が女神から授かった物です。お時間を頂ければ近くで見て頂くこともできますよ」


「そこまでしていただかなくて結構です。それじゃあ戻ろう」


 兵士とオーラルに礼を述べ、俺達はバングの所に戻る。


「どうだった?」


「高度だとは思うわよ。あの結界も多重にかけられてるし、普通はあれが偽物って気づかないでしょうね」


「やっぱりな」


「さっき捕まえなくてよかったの?」


「ああ、国宝の件はそれで解決するけど、人身売買は解決しなくなるだろ?」


「そっちも解決するつもりなの? ノイルのため?」


「それもあるけど、一番は名声だな。魔王と戦うなら名前が重要だ。無名の人間が魔王を倒すから手を貸せなんて言って誰がついてくる?」


「それじゃあ、この世界の救世主になるのが目標なわけ?」


「そうなるな。まずはこの国の救世主になろうか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ