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話をしよう。

メインキャラクターと舞台の説明会。

必要よね……

ヒャッハーできれば関係ねぇぜ!って人は次話から本領が見えるかも。

 あれは今から7年前――いや、3年前だったか?

 まあいい。私達にとってはつい昨日の出来事なのだが――

 君たちにとっては来年くらいの出来事だ。


 何の話かって?

 私達がここに流れ着いた――正確には飛ばされてきた経緯の話だ。



 一目見て私達を“流れ者”と見抜き、“身分の保証を”と言ってきたマルグリットにここまでの道のりを掻い摘んで話しているところである。

 本格的に話し出すと長くなる上にまず信じてもらえないような話でもあった。一応メタ的に説明すると――


<-- メメタァ

 私は仲間――それはフィアーナではなく、冒険者としてパーティを組んでいた仲間のことだ――とともに、人間を主とする“人族”の脅威であり、私の祖国を内外から浸食していた強大な吸血鬼の勢力を退治した。

 本来なら英雄として扱われるところであるが、そこに至る迄の“日頃の行い”そして、国王からの召喚命令を無視して活動を続けたしていた為、帰還後その責を問われ追放処分となってしまった。

 その命令無視の行動も結果として吸血鬼退治に必要な要件だったのだが、国王として、国を、貴族たちを纏めるためとして、私は仲間たちと辺境の更に奥、いろんな部族が鎬を削る未開の地へと飛ばされてしまった。1名ほど召喚命令時にたまたま王都で活動していた仲間がこっそり貴族に取り立てられたようだが……まあいい。元々貴族なんてつまらないものになるつもりは毛頭なかったし。

 ちなみにフィアーナは元々その仲間でなく、呪いの装備によって私たちのパーティに敵対してきたところを取り押さえ、解呪して私が拾っただけなのだが、お互いそれなりに気が合って一緒につるむようになっていた。

 その後、追放先である吸血鬼の城跡を中心に、開墾をしたり町を興したり。発展させて一段落ついたというところで、私の存在そのものを取り込もうとする混沌の破壊神に直属になれと迫られ、丁重にお断りしようとした瞬間、力づくの手段に出てきた破壊神と元々私に加護と力を与えてくれていた善なる神とが衝突。その高次元の存在同士の衝突により歪み、穴が開いた空間に私は吸い込まれ、一緒にいたフィアーナもそれに巻き込まれて“この世界”へと飛ばされてきた。


 この世界に来て2年、私らは私掠船団と言う名目の海賊に拾われ、用心棒として金を稼ぎつつ、この世界の慣習や言葉を覚えた。そして“亜人”に対する忌避感が少ないというこの大陸にやってきたのである。

 亜人と呼ばれる種族は、簡単に言えば“人族以外”の人型、2足歩行する種族のことである様だ。つまりは現在の絶対的大多数である“人族4種”を覚えた方が早く、それ以外がすべからく亜人とされるのである。魔物である鬼と人の掛け合わせと言われる“鬼子”、竜と人との掛け合わせらしい“竜人”を始め、狐、狼、猫と言った獣の中でも、魔素の影響や突然変異等で発生した大型の獣、魔獣と呼ばれる存在と掛け合わされた“獣人”など旧き時代、魔法文明時代と呼ばれるらしいが、その頃に奴隷同然に扱われ、魔法やら生物学やらの実験台にされた者達の末裔が亜人であると言う。


 最初に流れ着いた南の大陸では亜人というのは人族からみると“敵性種族”であったらしい。その昔、人族対亜人種で文明崩壊レベルの大規模な戦争があったというのだ。徹底的に効率化された人族の魔法文明に対し、研究の結果、望まぬままに身につけるに至った圧倒的な身体能力や繁殖力で勝る亜人たちの、力こそ全ての戦争が行われた結果、どちらも致命傷レベルの損害を被ったものの、戦後――崩壊後はある程度の文明と知識を残すことができた人族がいち早く復興を遂げ、優秀な武具や魔法を持って亜人たちを地下やら辺境やらに追いやったという話である。

 人族4種とは、人間ヒューム森人エルフ火人ドワーフ翼人エアリスの4種であり、その内7割が人間であるという。何となくその辺りは私たちが“元いた世界”と近い。

 そして私はやや大柄で角を持つ“鬼子”、フィアーナは見ての通り“竜人”であり、起源は元の世界のものとは微妙に異なっている様だが、両者ともに“亜人”扱いである。故に南大陸では戦いに不自由しなかった。そして港町で暴れていたところ、竜人がトップを張っていた海賊――当人たちは私掠船と称したが――に拾われたのだ。


 今滞在中の“テラリア大陸”は通称『北大陸』と呼ばれ、こちらでは亜人はすべからく“侮蔑”の対象となるらしい。不愉快極まりないところだが“敵性種族”扱いよりはいくらかマシで、2年程身を寄せた実は自由の少ない海賊達とは別れを告げ、北大陸にやってきたところだ。

 こちらの世界にも“神々”は存在し、元の世界よりは若干弱いがこの世界に干渉できるらしいが、いきなり『異世界の神の喧嘩に巻き込まれて飛ばされて来た。』と言っても俄かに信じられないだろう。そこで私は、『でかい戦に巻き込まれて南大陸から逃れてきた。』とマルグリットに伝えるに至った。

-->


 要約しすぎ?下手に長話してボロ出すより数倍マシでしょう?下手に盛っても相方バカが台無しにする未来しか見えないし。

 そしてその説明をマルグリットは『一応』信じてくれると言った。元々これは海賊の竜人船長が、私たちが北大陸に降り立つに当たって用意してくれた『話』である。この世界の住人に違和感なく伝わったのだろう。2人とも隠し切れない角を持ち、“亜人”に分類されてしまう私達にはちょうどいい“口実”なのだ。



 次に私はマルグリットの方の話を聞く。

 当初は適当に誤魔化そうとしたが、私が事前情報――海賊のお頭に聞いた話だ――と照らし合わせて詳しく尋ねると、諦めたか苦々しい表情を浮かべて話だした。


 海賊から得た事前情報として、私たちが上陸した国はベルンシュタット。ベルンと略され、『北大陸』こと“テラリア大陸”の西端にある大きな国で、王家や貴族、軍の力が強い工業国であるという。そこを勧められたのは、現在ベルンでは亜人と人族との戦争が起きておらず、海から上陸できる範囲で、今の状況下で亜人が過ごすには最も無難な国であろうという話だったからだ。

 そのベルンシュタットでは現在、内戦は起きていない。北方で人間同士の中規模な戦争はあった様だが、すでに沈静化し、今は他国と比べてもだいぶ安定している国であるという。

 そんな中で同じ鎧を纏った推定騎士同士の殺し合いが起きていたとなると、考えられるのは暗殺か謀反だ。

 適当に誤魔化そうとするマルグリットにそう問うたところ、先ほどのものは暗殺であろうとの事実を認めた。相手の心当たりを尋ねると、それなりにあるらしいが現時点で迂闊なことは口にできないとそれ以上の説明は拒否された。

 私としても今のところそれを知る必要はない。護衛としてマルグリット一行を守るだけだ。ただ今後マルグリットを“後ろ盾”とするならその内知ることになるのかもしれない。私は漠然とそう思った。


 その後、今更現れた山賊バカどもを【水弾】のみで軽くあしらう(嬲る)と、程なくして森を抜け、開けた土地にある小さな都市が見えてくる。

 どうやらマルグリットの新領であるようだ。分類するなら城塞都市だろうか?8~10メートルほどの高さの城壁に囲まれた、直径1キロにも満たないこじんまりとした都市だった。その中央にやはりそれほど大きくない城が見える。私の生まれ故郷も似た様な城塞都市であったため、なんとなくだが懐かしさを感じた。こちらの方が一回りは小さいけれど。


 恐らくは西門だろう。から、中に入ろうとすると衛兵に止められた。しかしマルグリットが書状を見せると、衛兵たちは恭しく頭を下げ、マルグリットたちを中へと迎え入れた。衛兵たちはどうやら馬車で来ると聞いていたのだが徒歩で来たため、念のための確認を行ったとの事で、別に新領主にケチを付けたかったわけではなさそうだ。私達もその一行として町の中へと迎えられた。


 町の中はまだまだ未発達と言える街並みだった。

 南大陸や、隣国である――海賊、もとい、私掠船団の母港があったフィンの港町と比べれば相当に質も規模も落ちる。

 家屋はほぼ木造、幹線道路と呼べそうなものも、舗装は一切されておらず、石造りで立派なのは城壁と城のみだ。

 その城に到着すると、伝令が飛んだか、多くの騎士・兵士が私達――ではなく、マルグリットを出迎え、地に膝を付けた。そして恐らくその中のトップ、責任者であろう騎士が恭しくこう言った。


「ようこそお越しくださいました。マルグリット殿下。ズーデンスタットは殿下を歓迎いたします。」


 隻腕の新領主は“殿下”と呼ばれる存在らしい。どうやら私たちはいきなり大物を引けたのかもしれない。



 そう思った瞬間が私にもありました。


 運が良いのか悪いのか。

 これは、地味で多難(周囲が)な新生活の始まりであったのだ。



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