俺の幼馴染みの扱いが酷すぎるのでざまぁしてやった件
俺には幼馴染みがいる。
幼稚園の頃から一緒の、大好きな幼馴染みだ。
でも、最近……彼女の扱いが酷い。
それは……陰で行われる行為……所謂いじめとして現れた。
「あんた、気持ち悪いのよ、暗いし、ボソボソ喋るし、ホント……死んでくれないかな!?」
そんなことを陰険に言われても、曖昧に笑うだけ。
逆にそれが相手に不快感を与えるのか……言葉は余計に酷くなる。
「なんなのその髪? 長すぎるでしょ、私が切ってあげるわよ」
バリカンを持ってそんなことを言われて、必死に抵抗する。
なんとか逃げ出したが、周囲はそれを笑っていたそうだ。
「ほんと、あんたが幼馴染みとか信じられないわよ。天と地……いや、虫ケラと人間様よね」
どうしてそんな酷いことを言えるのか……俺の顔が不快感に歪む。
何もできなかった自分に腹が立つ。
明日から学校は長期の休みに入る……夏休みだ。
だから俺は夏休みの予定は一切入れずに……この期間を利用することにした。
つまり、夏休みデビューだ。
もともと素材は良いのだ……だから必死になって勉強する。
髪型、服装などのファッション、自信をつけるための言葉使い、身体を鍛えるための運動、学校では教わらない化粧なんかも猛勉強する。
どんなに変わっても、彼女の中身は俺の大好きな幼馴染みであることを信じて、俺は行動した。
全ては、夏休み明けのため。
夏休み明けに、全ての奴らを見返してやるため……俺は必死になる。
努力を重ねに重ね……夏休みをそれだけに費やす。
そして……必死に努力を重ねた夏休みはあっという間に過ぎ去る。成果は上々だ。
夏休み明けの登校初日……いよいよ、夏休みデビューの日だ。
俺は自信に満ちた一歩を踏み出す。
それに合わせて、俺の隣の彼女も歩み始める。
夏休み前に虐められていた、俺の幼馴染み。
俺が夏休みデビューをして奴らを見返してやろうと誘った幼馴染み。
それが彼女だ。
俺の横には、すっかり自信を取り戻した俺の幼馴染みの姿があった。
幸せそうに俺と腕を組み、並んで歩く。
俺も幸せだ。
いや、もともとこいつは可愛いのだ。そんなこいつが大好きだった。
それが、俺の知らない間に歪められた。
気づいた時には虐めは行われており、何もできなかった自分を恨んだ。
幼稚園から一緒で、可愛くて、俺の大好きな幼馴染み。
夏休み中に告白して、俺の彼女になってくれた。
前は……俺と付き合う自信がないと断られたのだが、それでも俺がしつこく好きでいた彼女……。
幸せそうに微笑む幼馴染みを見て。俺はやっと彼女を取り戻せた気分に浸る。
「は!? 誰よその女!? 私の告白を蹴ったくせにそんな女と付き合ってるの?!」
そんな幸せな気分の俺たちに、水を差す馬鹿が現れる。
夏休み前……こいつを虐めてた陰険女が難癖を付けてきた。
こいつは俺にフラれた腹いせに俺の幼馴染みを虐めていたのだ。
俺には好きな人がいるから付き合えない……そう言ったのは失敗だった。
こいつは俺の好きな人を幼馴染みと突き止めて、虐めを開始……それに気づかなかった自分に腹が立つし、気づいた時はもう夏休み前だった。
そんなことをしても、俺はこいつと付き合わないと言うのに……。
陰険女は、値踏みするように彼女の全身を見る。
「……まぁ、こいつならあの女より上だし、私よりちょっと美人だし……認めてあげるわ。ふん、結局はあんたも、あんな幼馴染みより、美人を選ぶのね」
幼馴染みを選ばなかったのだから、自分にもチャンスが来るはずだと思ったのか……その一言に、俺も彼女も吹き出す。
本当にこいつは見る目が無い。
俺たちが笑ったことも分からず、陰険女は眉を潜める。その姿が滑稽で、俺は教えてやることにした。
「彼女は、お前が虐めてた俺の幼馴染みだよ」
「……嘘」
虐めていた彼女を自身よりも上だと認めてしまった事実に、陰険女は顔を青くする。
「嘘よ……嘘よ!!」
喚き散らす陰険女を放って、俺たちは歩き出す。
俺達が入った教室も、一時的に騒ぎになる。
虐めてた周囲の連中も、すっかり綺麗になった幼馴染みを掌を返したように扱う。
中には「前から可愛いとは思ってたんだ」とか白々しい事を言う奴までいる。
ついイラついた俺は、彼女の肩を抱いて周囲を睨みつける。
「お前ら、こいつがこんなに可愛いなんて知らなかったろ? どいつもこいつも掌返しやがって、恥ずかしくないのか?」
俺の言葉に、周囲はバツが悪そうな表情を浮かべた。
俺の彼女兼幼馴染みは「そんな事言っちゃダメだよ……」と、周囲を庇う。
やっぱり外見が変わっても、中身は優しいままの俺の幼馴染みで、俺はそんな彼女を誇りに思う。
今まで虐めてきた相手に庇われた周囲は、ますますバツが悪そうにする。その顔が見れただけで、俺は満足だ。
陰険女が遅れて教室に入ってきて、俺達を睨みつけるが……もう彼女にそんな睨みは効かない。
ただ優雅に微笑んで……俺の手を取る。
がっくりと項垂れる陰険女……そして、周囲の奴らに聞こえない程度の声で、俺は一言だけ呟いた。
「ざまぁみろ」
流行の幼馴染ざまぁを書きました。
「幼馴染」が「ざまぁ」するので、これも幼馴染ざまぁですよね?