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3 my doll No.100

残酷な描写があります。ご注意下さい。



 それから数日後の夜。家にいた翔は、黒い表紙のアルバムを見ていた。表には『my doll(俺の人形)』と記されている。

翔は、そのアルバムに貼られている写真を愛しそうに眺めると、熱のこもった溜め息を吐いた

 今日は色々忙しかった。先日の事件の事を、現場周辺の家に聞き込み調査をしたり、長谷部祐司の過去を調べたりと、忙しかった。

勿論、めぼしい人物は見つからず、安西は疲れた顔をしていた

「見つかるわけねぇのにな。」

頁を捲りながら、翔が言った。

 しかし、安西は見つからないと肩を落としていたが、翔にとっては新たな収穫があった。それは―――

「さて、次の目標(ターゲット)の事でも調べるか。」

と翔はアルバムを棚に置いた。そして、パソコンの電源を入れる。

そう、その収穫とは次の殺す相手のことである。

 彼が良い目標を見つけられたのは、偶然の出来事だった。

 ある宅の女性に事件について聞き込みをしている時、突然としてその者はやって来た。

『すみません、○○健康食品の者ですが、お宅健康の事に気を使ってますか?…あっ、お客様が見えていましたか。また後で伺いますね。すみません。』

三十代前後に見える訪問販売者の男性。見た目は人の良さそうな愛想の良い人間のようだ。

しかし、翔は"そういう人間こそ裏があるはずだ"と考えた翔は、次の目標をその男に決めた。

 名前はもう分かっている。彼の胸の辺りに付いていた名札に、『加賀(かが) 辰巳(たつみ)』と書いていた。

それをもとに調べればいい。と考えながら、画面上に記されたパスワードを素早くキーボードで打ち込む。すると、新たな画面が表示された。

その表示された画面とは、どうやら個人情報のようだ。

びっしりと名前が上から下まで埋まっていて、上部には『個人情報屋K・H』と記されている

これは、翔がいつも目標(ターゲット)を調べる時に使っている闇サイトで、極悪犯罪者の殆どは使用しているらしい。

「加賀…加賀っと。」

 翔は気が遠くなる程あるかの行を上から調べながら、加賀を探していた。

「甲斐…火枝…あっあったあった。」

調べ始めて十数分。ようやく加賀辰巳の欄を見つけ、迷うことなくクリックする。すると、履歴書に貼られていそうな加賀本人の写真とびっしりと記載されている個人情報。

翔はノートを取り出し、それを写し始めた。

『my doll.No.100。加賀辰巳。年齢29歳(独身)。身長174センチ、体重69キログラム。○○県○市○○マンション在住。○○健康食品の営業部に勤めていて、社内の評判も良く人気もあるが、一部の人間からは恨みを買われている。裏では、悪徳な商売方法で客に売りつけているという噂もあるらしい。行動範囲は毎週月〜土曜日の午前中は会社で仕事。午後からは営業をしていて、仕事を終えるとキャバクラや同僚と居酒屋で飲んでいる。

そして、午後11時に帰宅。その際、近道として、普段はあまり人が通らない○○の裏路地を使用している。また、休みの日は家に引きこもり、ネットで悪徳な商売をしているようだ。そして、女関係は複雑。過去になんどかもめ事があったが、加賀は全て難なく回避していた。』そこまで書くと、翔は筆を止めた。

「やっぱりな。こういう奴ほど、裏で何してるか分からねぇからな。…と言っても、俺が言える立場じゃないけどな。」

クックッと喉を鳴らして笑う。そして、彼はノートを閉じ棚に直した。そのノートの表には『my doll 情報book』と書かれていた。

 次の日、翔は安西と別行動で情報を集める事になった。それは安西の提案で、"その方が効率が良い"らしい。なので、安西は一連の事件の関連性を、翔は聞き込み調査をしていた。 しかし、翔がしていたのはそれだけではない。聞き込み調査もだが、加賀の行動範囲も調べていた。

すると、あのサイトに記載されていた通りの加賀は行動していて、翔はあらためてあのサイトの良さを実感した。

 そして、署に戻り調査報告をしながら、翔は加賀の殺害計画を着々と頭の中で練っていた。 それから数日後の午後10時半頃。翔は闇にとけ込むように、とある裏路地にいた。

そこは、サイトに記載されていた、加賀が毎日利用する近道で、まるで人が通る気配はない。

しかも、バブル崩壊時からある古い無人の廃墟ビルが建ち並んでいる為か、かなり暗い。

唯一の明かりは、チラつく街灯のみで、翔はその方が効率がよいとほくそ笑んだ。

 服装も、黒いパーカと黒いジーンズ。それから、サングラスをかけ、フードを被っていた。

フードの間から覗く髪の毛も闇のように黒く、その場に隠れるには充分な格好だ。

「早く来ねぇかな加賀(アイツ)。」

右手に持つ鉄パイプを強く握り締め、翔は加賀が来るのを待っていた。

「あの馬鹿部長〜、俺をなめやがって〜!!」

 そんな時だった。遠くから加賀の声が聞こえて来たのは。

酒に酔っているのか、上司の悪口を口ずさみながら。

―――来た!!

それに気付いた翔は、酷く興奮していた。鼻息は荒くなり、まだかまだかと心臓が高鳴っている革靴が地面を蹴る音と心臓が高鳴る音。そして、加賀の声が、これから起きる事へのさらなる興奮を呼び覚ます。

「あーあ、人生やり直してぇ〜。」

ようやく、足音が近くまで来た頃。加賀がボソリと呟いた。

すると翔は、

「じゃあ…死ねば?」

と薄気味悪い笑みを浮かべ言う

「だっ誰だ!?」

それに驚いた加賀は、驚き辺りを見渡した。

「そうだな、正義の味方…とでも言おうか。」

街灯の灯りのなかに翔の顔が浮かび上がる。

「ふっふざけるな!!か…金か!?目的は金か!?金なら…ホラッ!!いくらでもやるから…殺さないでくれ!!」

「金?」

カツアゲか何かと勘違いしたのか、加賀は内ポケットから財布を取り出し中を見せる。財布の中には何枚もの万札が入っていた。

――金?

「ハハハハハッ!!」

「?」

翔は、いきなり声を張り上げ笑い始めた。それを見て加賀は不思議そうに小首を傾げた。

「金なんざ興味ねぇ!!」

「じゃっじゃあ…いったい…――」

「お前の命だよ!!お喋りはここまでだ!!死ねッ!!」

という声と同時に、翔が鉄パイプを思いっきり振り上げた。

口元は緩み、角がつり上がっている。

「うわあぁぁぁああ!!」

間一髪の所で加賀は避けた。

目標を仕留められなかった鉄パイプが地面に力強くあたった。

キンッという甲高い金属音が辺りに響く。

「逃げてんじゃねぇぞ!!加賀ぁ!!」

「な…何で俺の名前を!?」

「うるせぇ!!」

一発で仕留められなかった事に腹を立てた翔は、鉄を振り回した。何度も何度も地面にあたり、そのたびに金属音が響いた。

 しかし、

「うわっ!!」

避けている内に足が縺れ、加賀はその場に倒れ込んだ。

「残念、ゲームオーバー。」

そう言った翔の顔は不気味な程笑顔で、それを見た加賀は思わず、

「あ…悪魔…。」

と、呟いた。そして振り下ろされる鉄パイプ。

「ぅぎゃあぁぁぁあああ!!」

見事に加賀の前頭部に当たった。彼は激痛のあまり、悲鳴を上げる。

「ハハハハハッ!!」

何度も何度も同じ所にそれは振り下ろされ、そのたびに傷口から鮮血が吹き出る。

それはもう噴水のように。

「…ぁ……。」

しだいに加賀は何も言わなくなった。否、息をしなくなっていた

「逝ったか?」

翔はそう言って、加賀の呼吸を確かめる。しかし、加賀はやはり呼吸をしていなかった。

死んでもなお、彼の見開いた目は翔を捉えている。

「さて…。」

だが、翔はそれをものともせず、ポケットからいつも愛用している長めのバタフライナイフを取り出した。ある事を行う為だ。

翔にとって、先程の事は料理に例えると"前菜"にすぎない。そして、今から起きる事こそが"メイン"なのだ。

「〜♪〜♪」

鼻歌を交えながら、服の上から心臓の上辺りにバタフライナイフを突き刺す。そして、上下に動かしながら肉を切り開いていく

それはまるで鶏の胸肉のように弾力があり、翔に更なる興奮を与える。おかげで、鼻息も荒い。

「お前のも赤いんだな。」

そう言って切り開いた先にあったのは、夢でも希望でもない。先刻、死んだばかりの加賀の心臓だった。

まだ温かいそれを手掴みで取ると、邪魔な血管を取り除く。

そこからドロドロと、残っていた鮮血が滴り落ちた。「俺の愛しい心臓ちゃん♪」

翔は切り取った心臓を持ち上げると、彼は軽く口付けた。

そして、動かなくなった加賀の方に目を向けた。

「何?お前も欲しいの?ならやるよ。」

翔はそう言うと、加賀の開いた口に臓物を詰め込み始めた。

不気味な程、嬉しそうに。

グチャグチャと無理やり詰め込んでいるためか、加賀の口は裂け、臓物は変形していた。もはや原型など留めていない。

「どうだ?美味いか?」

翔はクックッと喉を鳴らす。

そして、ポケットからデジタルカメラを取り出し、写真を取り始めた。

――フフ、またコレクション増えたな。

彼はそう思って再び笑った。

 それから、翔は暫く死体を眺めると、何事もなかったかのように清々しい顔で、歩き出す。

明日も仕事だからと、顔を血に染めながらゆっくりと。

すると、その姿を死体になった開いた加賀の目が見つめていた。




 次の日の早朝。加賀の死体は偶然散歩で通った老人夫婦によって見つけられ、今は警察と警察関係者が現場を捜査している。もちろん、安西と翔も来ていて、青いビニールシートに覆われた加賀の死体の前にいた。

「クソ、またか。」

安西は、ビニールシートを捲り中を確認する。「うっ…。」

血の腐ったような臭いと、あまりにも残酷な光景に、安西は吐き気のあまり口を抑える。

彼はこういうのは慣れている筈だったが、今回はそうもいかなかったらしい。

「安西先輩大丈夫ですか?」

そんな彼を翔は不思議そうに見つめる。

「笹川。お前は見ない方がいい」

「なぜです?」

「いいから見るな。見ない方が身のためだ。」

そう言って、安西はビニールシートから翔を遠ざける。

「はぁ…そうですか?」

と意味が分からないと言うように、白々しく翔は首を傾げていた。

「しかし…許せないな、こんな事。」

安西が言った。怒りで拳を握り締める。

「はい…許せないですね。」

続いて翔が言った。怒りではなく、湧き出てくる笑いを必死に堪えようと拳を握り締める。

2人は同じ行動わしているようで、本質は全く真逆だった。

「なんやなんや?なんか重たいわぁ、この現場。そないしとったら、見つかるものも見つからんて。」

そんな時、後ろから妙に明るい関西弁が聞こえてきた。

「あっアンタは!!」

その声に、安西と翔は振り向き、翔が声を上げた。

「久しぶりやなぁ。会いたかったでぇ、笹川チャン。」

すると男は、嬉しそうにニンマリと笑った。

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