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イッツオンリーバンド名

 「バンド名……どうしよっか」


 加奈さんが皆が思ってることを口にする。紗奈さんの歌唱力の高さからか、バンド名もふざけた物にはできない雰囲気が漂っていた。でもなあ……厨二全開のバンド名にしても、それはそれで嫌だしなあ。うーん。こういうのは普遍的な物がいいんだよ。ビートルズとか、それこそブルーハーツとか。まあ、銀杏BOYZは例外としても。俺の心の引き出しを探ってみると、出てくるのは……邦楽ならハイスタ、ブラフマン、WANIMA、10-FEET、STANCEPUNKS……洋楽ならGREENDAY、BLINK182、SUM41……しかし我ながら大御所バンドばかりだな……かといってキュウソネコカミとか嫌だし。


 皆も「こんなのは?」とか「こんなのどうですか~?」とか色々提案してくるが、決定打に欠けていた。むむむ。あっ!俺の中で閃いたことがあった。ゴーイングステディ。これは銀杏BOYZの前身バンドの名前だが、バズコックスというUKパンクバンドのアルバム名から取ったのだ。皆の好きなミュージシャンのアルバム名から取ったらどうだろう。


 「皆さんどんな音楽聞いてるんですか?好きなバンドとか聞いてもいいですか?」


 まず答えてくれたのは加奈さん。


 「好きなバンド?私はパンク一筋。NYからロンドンからLAから、日本で言えば80年代のインディーズから大体聞いてる」


 駄目だ、広くて狭すぎる。誰もスターリンの「虫」で行こうと言って納得するわけがない。INUの「メシ食うな!」とか。まあまともな名前もいっぱいあるんだけどさあ。


 「まどかさんは?」


 「私はメロコア系かな。後60年代のUK。私がドラムやってんのだって、キースムーンに憧れたからだし」


 ……この人たちは本当に現代の女子高生なのだろうか。JK臭がまったくしないチョイスをありがとう。


 「じゃあ、カスミさんは?」


 「わたしは何でも聞きますよ~。気に入ればですけどね~」


 うーん、一番とりとめのない感じだ。まあ、マニアックなバンド名を出されても困るだけだし、カスミさんはそれでいいと思う。でも、バンド名を決めるのにはちょっとなー。


 「じゃあ最後、紗奈……さんは?」


 うおおおおお、どさくさに紛れて名前で呼んじまったぜ!だけどこれは名前で呼ぶ流れのはずだ。うん。


 「私はお姉ちゃんに聞かされてるの以外だと、ラッドウインプスとかバンプオブチキンとか……あ、SEKAI NO OWARIも好きです」


 おお、一番JKっぽい!ただ、俺がその方面に疎い!……勉強しよう。


 うーん、皆の好きな音楽は分かったが、バンド名には中々たどり着かないな……そんな時、加奈さんがボソッと言った。


 「ねえ、皆。自由になりたくない?」


 ……急に尾崎豊みたいなこと言い出してどうしたんだ?バンド名「17歳の地図」とか言うのかな?それはちょっと勘弁だけど……


 「私ね、音楽特にパンクが好きなのは、とっても自由だからなの。だって極端な話3コード弾ければ成り立つのよ?他に何にも持ってなかったとしても。まあ、実際にはそんな単純にはいかないけど、その精神性は大事にしたい。だから、バンド名もそれを表したものにしたい」


 加奈さんは熱っぽく続ける。


 「決めた!バンド名は「GIRLS FREE!!」これで行きましょう!後ろにビックリマーク二つ付けるの忘れないで。これは、私たちの自由の象徴。何物にも縛られない決意!どう?皆」


 皆、加奈さんの熱さに圧倒されていたが、でも口にしてみると意外に悪くないかもしれない。GIRLS FREE!!か。……ん?ちょっと待てよ?


 「加奈さん……GIRLSって俺、男ですけど……?」


 「一々細かいこと気にしてんじゃないわよ!いいのよ5分の4女なんだから」


 そんなもんだろうか。まあ、皆がよければ……と俺は紗奈さんを見る。


 「紗奈。あんた一番目立つんだからあんたの意見が聞きたいわ。どう?『GIRLS FREE!!』」


 「うん、いいと思う。……自由ならちょっと歌詞とか間違ってもいいよね……?」


 何その可愛い理由。マジで。もう何でも許しますから!


 「紗奈らしいっちゃ紗奈らしいけど、まあ紗奈がいいなら文句ないでしょ?皆」


 まどかさんもカスミさんも頷く。勿論俺も。


 「よし、決まり!……あっ、ちょっと待って」


 何だ?加奈さんは急にスマホをいじりだす。


 「うん、被ってないわね。いや、どっかのバンドと被ってるとやだなーと思ってさ。でも、何か変なゲームと一緒の名前っぽいけど、まあ許容範囲でしょ。これで行くわよ。私たちはGIRLS FREE!!」


 こういう時はやっぱり加奈さんが頼りになるな。さて、バンド名も決まった。一発目にやる曲も決まった。後は……ただ進むだけだ!


 「よし、じゃあ早速練習しましょう!」


 俺が行き込んで言うと、カスミさんが一言。


 「ごめんなさい、さっきの曲、誰の何て曲ですか~?」


 あ、そっか、まだカスミさんには説明してなかったっけ。俺は銀杏BOYZとそれをカバーしたアイドルの動画を加奈さんに頼んでカスミさんに見てもらう。


 「成る程分かりました。この曲を練習すればいいんですね」


 加奈さんが答える。


 「最初はね。でも、慣れてきたらばしばしオリジナル作ってくから!皆!やるよ!」


 この時、加奈さんが紗奈さんより少しだけ輝いて見えたのは、俺の気のせいだったのだろうか。



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