表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/87

出会いはいつも唐突に

 前作「不良少女が異世界で王女様の影武者になったらしい」とは、作風が少し変わると思います。王道の学園青春ロックンロールラブコメディを目指して執筆していきますので、お付き合いください。

 「あーあ……」


 また今日も一日が始まる。俺の暗い高校生活の一ページがまた刻まれるってことでもある。


 「はあ……行くか」


 俺は中身の少ない薄い鞄を持って、家を出る。


 「行ってきまーす……」


 家を出る足取りも重い。行きたくねえなあ、高校。行ってもまた昨日と同じように、誰とも口もきかず、机に口づけするかの如く寝てるしかねえもんなあ……はあ……


 ああ、そういえば昨日、転校生が来るとか言ってたっけ。少しは変化があるか……ないか。俺には関係のない話だな。よし、いつものように……


 俺はポケットからスマホを取り出し、イヤホンを耳に着ける。いつも音楽を聴いて、周囲を遮断しながら通学や休み時間を過ごすのが俺の流儀だった。聴くのは気分によって変えるけど、「銀杏BOYZ」が多い。これは親父の影響だったりするが、今の俺にはぴったりの曲が多いのが気に入っている。


 「ん……?」


 見慣れた通学路に、見かけない女子二人がうちの高校の制服を着て、何か喋っているのを見かけた。しかし、見かけただけで、俺には関係のないことだ。そのままスルーして高校に着いた。


 俺は自分のクラスに入ると、誰とも口をきくこともなく、自席に座りイヤホンの音量を上げる。そして、机に突っ伏した。俺はまだ一年だからこんな日々があと2年以上も残ってんのか……想像するだけで胸やけがする。いじめられてないのだけが救いだが、誰からも相手にされないのはいじめられてるのとは違った意味できつい。まあ全てコミュ障の俺のせいなんだろうけど……


 そうしている内にHRが始まった。やれやれしょうがない、俺はイヤホンを取り、教師の言葉を聞くともなしに聞いていた。


 「……えーそういう訳で、今日からこのクラスに転校してきた村田紗奈君だ。皆よろしく頼むぞ。じゃあ自己紹介して」


 「……初めまして、村田紗奈です。よろしくお願いします。」


 急に俺の目の前に現れた(俺が見てなかっただけだが)その子は、静かに自己紹介を済ませると、指定された席に着いた。髪は長いけどきちんとポニーテールにしてあり、身長は150cm位か?結構小柄だな。で結構華奢。そして何よりその顔が……



 今まで見たこともない位、めっっっちゃ可愛い!なんだこれ。俺こんな感情になったことねーぞ。何かすげードキドキする。まともに顔も見れねー。良かった席が隣とかじゃなくて。いや、本音を言えば隣になりたかった。今まで恋なんて歌の中だけのもんだと思ってたのに。これが……恋?


 その日は、イヤホンを耳に当てて曲を聴いてるふりをして、机に突っ伏しながら、村田が何を言ってるのか逐一聞き漏らさない様にした。こんなこと初めてだ。陳腐な表現だけど、今まで灰色だった周囲の世界に急に色が付いたみたいだ。本当にこんなことってあるんだなー。



 ……でも俺はふと自分を振り返ってしまった。コミュ障で友達もいなくて、休み時間は机と接吻している俺があの子と喋れる日なんて来るのかな?


 村田は早速クラスの男子に囲まれて色々質問されていた。それを払いのけるように女子が話しかけて早速何人か友達ができたようだった。



 ……数時間にして遠いところに行ってしまった……



 その日俺は、帰って布団の中で、もう一度村田の顔を思い出して、全力ダッシュしてた。何とかお近づきになりたい……だけどこんな俺じゃあなあ……はあ……そんなことを考えている内に眠ってしまっていた。



 次の日、何だか世界が違って見えたのは気のせいだろうか。学校に行けば、あの子がいる。そう思うと、少しだけ今までとは違う感じがした。


 「行ってきまーす」


 今日はどことなく学校へ向かう足取りも軽い。しばらく行くと、昨日女の子2人を見た場所で、また同じような光景を見た。あの時はスルーしたけど、今度は俺の目が釘付けになった。女の子の片方が、あの村田紗奈だったのだ。急に緊張してきた俺だったが、当然話しかけられる訳もなく、横を通り過ぎていく。めっちゃ心臓がバクバクしてるのが分かった。……やっぱ、可愛いいいいいい!……でももう一人の子は誰なんだろう。俺は聞き耳を立てる。イヤホン何て今日はしていない。


 「もう、だからお姉ちゃんは!」


 「いや、んなこと言ってもさー、いい奴いないんだもん。あ、でも先生に聞いたらあんたのクラスに有望

株がいるみたいだね。今日、勧誘しに行くか」


 「まったく、強引なのはやめてよね。そうでなくても転校生ってだけで緊張してるんだから」


 「あんたは、昔っから緊張しいだったからね。まあ、見ときなって」


 「大丈夫かな……」




 何の話か分からんが、イケメンの話でもしてるんだろうか。それにしても姉妹だったんだな。姉の方は村田よりもう少し身長が高くて、ショートカットのボーイッシュな感じだ。だけど、こっちも顔は可愛い。でも村田紗奈には叶わないな。うん。俺は断然妹派だ。


 そんなことを考えながら学校に着く。……急に現実に引き戻された感じだ。俺はいつも通りイヤホンをし、机に突っ伏す。だけど、


 「おはよー」


 村田だ!俺は人知れずイヤホンの音量を下げる。友達と何を話しているんだろう。聞いてると他愛もない世間話だったが、相変わらずスクールカースト上位の男どもが群がっている。くそっ、気安く話しかけてるんじゃねえ!


 そうこうしてる内にHRが始まり、日常が流れ始めた。それが破られたのは昼休みのことだった。


 急にクラスの扉を開け女が一人飛び込んできた。村田の姉ちゃんだ!何だろう、村田に用事でもあんのか?


 「ちょっと!このクラスに遠藤っている?遠藤和人!」


 俺はぼっち飯を食べていたが、思わず吹き出しそうになった。遠藤和人!?それは俺の名前だった。


 ここから、俺の日常は少しずつ変化していくことになる……

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ