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魔王様、顔怖いです。  作者: ふかづめ
戦いはいつも突然に。
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第45話 猫耳

 ペイトンの背に体を預け、意識を手放した俺は全身を襲う『アツイ何か』に体の感覚を支配され、再び目を覚ました。というより跳び起きるように体が起きた。


「ウワァァァァァアア!!」

「本当にやるか普通? 怪我人だぞ相手は……」

「でもォ、起きたじゃないのォ。お早うホリィ?」

「あ、あれ? ああそうか、ペイトンの背中で休んでそれで……あっ! 捕まってた亜人達は!? 皆怪我は!? というかラヴィーニア、なんでここに……? アァ、イツツツッ……」

 目の前にいたアナスタシアやラヴィーニアに言葉を投げかけるも、体の痛みがそれを上回るように主張をしてくる。半身を起こした状態で見るとほぼ全身に程度の違いはあれど怪我を負っている。


 痛みの主張が激しい肩や腹を触ると手当をされた後のようだが、それに加えて森を走った影響で小さく皮膚が切られていたり、服が裂けていたりと。

 そして俺の声が聞こえた事で今回の作戦に参加したメンバーが全員こちらを覗き込んでいる。

「ホリ様! ホリ様! ダイジョウブ!?」

「ああ、アリヤ……。うん、体は痛むけどってアレ? アリヤなんか焦げてない? どうしたの一体?」

 暗さではっきりとは明言できないが、体が茶色いような……。どうしたんだそれ? ベルとシーが俺の体を後ろから支えてくれている。

「アリヤ、髭ノ男ガ撃ッテキタ魔法ヲ剣デ切リ裂キマシタ! カッコヨカッタンデスヨ!」

 ベルの説明に、自慢げに胸を張るアリヤ。


「ええっ……? 無茶するなあもう。アリヤも後で健康飲料コースだね」

「エッ」

 俺の言葉を聞いた途端、胸を張りながらガクガクと震え出すアリヤ。二人で地獄に落ちような? な!? ゴブリン達に改めてお礼と感謝を込めて労う。彼ら三人も活躍したようだ、酒の席の話のタネにしよう。


 怪我人は今回も俺だけという訳ではなかった。それだけの事をしてきたのだ、これくらいの傷は覚悟していたがここにいるゼルシュを除いた者達の怒りはそこではないようで……。


「おいホリ、この左腕の傷は誰にやらしたんだ? お前の決断だから別にいいが、もっと自分を大事にしろ」

「そうですよ、結果が良かっただけに文句を言えないのが尚更質が悪い!」

「やったのは俺だが……。おいウォック睨むな睨むな!」

 アナスタシア、ペイトン、ゼルシュの三名がやり取りしている中、起こしていた俺の体を寝かせるようにして頭を抱きかかえ幸せ空間に俺は包まれた。


「ホリ……。少し横になってていい……。拠点まではこのまま連れて行けるよう荷車を持ってきてある……、よく頑張ったね」

 抱きしめられた事で顔によくわからないが柔らかいモノが当たり、そして頭を撫でられる。聖母がここにいる。

「おいトレニィア!! それは私の役目だろう! 何せホリは私の伴侶《パートナー》なのだ! 私に任せろ!」

「トレニィア? 貴方ァ、やるようになったわねェ」

 何か言い争う声が聞こえるがこの幸せ空間を全力で楽しみ、痛む体に鞭を打ち全力で味わいにいっている最中なのだ。静かにしてほしいな!


 そこから荷車に寝かされペイトンとアリヤも怪我をしているので大事を取り、荷台に乗り隣に座っている。アリヤは荷台の上ではしゃいでるように見えるが元気そうで何より。焦げてるけど。

 牽引しているケンタウロスも荷台を気にかけてくれているのか、振動がくるような事も少ない。そして、気になっていた亜人達についての説明をペイトンがしてくれる。

「じゃあ亜人達は先にポッドのところへ向かったんだね。大事になるような怪我人がいないといいけど」

「大丈夫だと思いますよ。一人、若い娘が手酷くやられていましたが……。顔を殴られて、牙をへし折られたようです」

「ああ、その子のおかげで今回うまくいったところもあるんだ。会ったらお礼しておかないと、無事だといいけど……」

「命に関わるような怪我ではありませんでしたよ。それを言うならホリ様が一番重傷です」


 ゼルシュが顔を覗かせ怪我の様子を調べるように全身を見ている。

「手酷くやられたものだ。あの野営地でお前がされた事を見ていた者達を抑えるのに苦労したぞ? 特にホリが蹴りを入れられた時なんて、全員が殺気立ってな。あの時点で殴りこもうとしていた程だ」

「え、あれ見えてたの!? 結構距離あったよね!?」

「ああ、それぞれの班の夜目が利く奴が交代で見張りをしていたからそちらの動向は探れていた。逐一報告し合うようにしていたしな」


 それを聞いた他のケンタウロス、アナスタシアの部下の人達が数名顔を覗かせてきた。

「一番危険だったのは間違いなく、ウォック様ですけどね」

「うわ言のように『殺す』しか言ってませんでした」

 ヒソヒソとこちらに教えてくれる彼女達、そしてその対象の人物はアラクネの長女と何やら言い争いを続けている。

「皆にも我慢させちゃってたんだ、ごめんね」

 それを聞き、反対側からオレグが顔を見せる。

「私としてはペイトン殿が見せてくれた漢気とその膂力で鬱憤も晴れました」

「でも……、ペイトンは……ちゃんとトドメを刺さないとダメ……。頭を潰さないと虫はいつまでも動く……。頭は私がちゃんと潰しておいた」

 恐ろしいアドバイスが飛んできているが、ペイトンの勇姿はケンタウロス達には割とよく見えていたようだ。顔を見せる者達が労うようにして彼《ペイトン》の肩を叩いていく。


「そういえば、何でトレニィア達ここにいるの? 拠点で休んでる筈じゃ」

「姉様が……、ホリに仲間はず「トレニィアァ? 貴方わかってるわよねェ」……森に食料を捕りに来た。ぐーぜん……」

 深く聞くと藪蛇だなこれは。とりあえずこういう時の対処方法は一つだ。


「悪いんだけど、また少し休ませてもらうね。薬草汁のおかげかわからないけど、痛みが和らいでも体力までは戻ってこないみたいだ」

 そう、寝てしまおうという対処法だ。


 起きたら体全快という事になっているのが理想だけどなー。

 目を瞑って感覚的には一瞬のように感じる睡眠。だがかなりの時間が過ぎていたようで、目を覚ました時にはポッドの根に頭を預けるように寝かされ、体全体が木の根に包まれていた。夜の冷たい風が顔を撫でるが、木の根から発せられてる温かさのおかげでむしろ心地よい程涼しく感じる。そして俺が起きた事に気付いた事で、以前より騒がしくなった木々が出す海のさざなみのような音に混り声をかけられた。


「お、おはようホリ、老人より早寝早起きとは関心じゃのう」

「おはようポッド、ごめんね。また力を借りちゃって」

「ファッファ、子供の面倒を見るのは大人の務めじゃ。ワシ、大人じゃし」


 後で健康飲料をサービスしよう、頑張る大人へのプレゼントだ。

 視線を動かした先にはゴブリン達が寝息を立てて休んでいる。彼らも疲れただろう、頑張ってくれた上にいつもなら休んでいる時間だし。


「ホリよ、今回少し無理をしたようじゃの。左腕の肉が何度か抉られていたり、強い衝撃を受けたようじゃな? 暫くは動かさない方がいいぞ。無理をしたら一生動かなくなるかもしれん」


 ポッドにそう忠告された。かなり無茶をしたからな……。むしろ大人しくしていれば後遺症もないという事を喜ぶべきか。暫くは安静にさせてもらおう、急ぐべき案件もないだろうし。


「わかった、ありがとうポッド。全快するまでどれくらいかかる?」

「ううむ、毎日ワシの所で回復して太陽が二回か三回上るくらいじゃな。それまでは掘削も、重い物も持たん方がいい。少し体を休ませい」

 二、三日で大丈夫なのか、重傷の割には早いがそれだけポッドの回復が優秀だという事だろうな。


「あいよ、それじゃあ周りにもそう言っておかないとな。そういえばポッド、ここに亜人達連れてこられた筈だけど、どうしたのかな?」

「お前さん結構意識を失っておってな。起きるまで待つと連中が言っておったが、そこで辛気臭く待たれても嫌じゃしな? 休むように言っておいたぞ」


 ポッドなりに亜人達の体調に配慮して休む事を優先させたのだろう。さすがの判断だ、ありがたい。それならば俺も少し休もう。

「色々と面倒かけて悪い。悪いんだけどまた寝かせてもらうよ、ポッドの治療が終わったら起こしてくれ」

「ホイホイ、ホリ。よく頑張ったな」

 彼に労われ再度目を瞑る。トレント達の葉擦れの音がリラックス効果を生んだのだろうか? 俺は熟睡をしてしまったようで、朝になるまで目覚める事はなかった。


 目を覚ますと体には様々な布が織り成すように掛けられており、体の両側にはゴブリン達、他にもケンタウロスやアラクネの姿が視界に入るが……。

「動けない……」

 毛布を掛けられた上に、風で飛ばないように各々が体重をかけて押さえてくれているのだろう。がっちりと固定されるようにして身じろぐ事しか許されなかった。


 ポンポンとスライム君が頭の上で跳ねている。触手で頭を触られるが、珍しいな。何か意味があるのだろうか? 触手が伸びてきた際にふわりといい匂いがすると、俺の腹から盛大な警笛が空腹を知らせてきた。

「おはようスライム君、お腹減っちゃったよ。何か食べる物あるかな?」

 彼はいつものように一つ跳ねた。近寄ってくる足音がいくつも聞こえる、今度は誰だろう? と待っていると、そこにはオーク一家が揃っていた。


「おはようございますホリ様、食事の用意ならできていますよ」とパメラが笑顔で教えてくれた。そしてペイトンとペトラの両名が朝の挨拶をしながら寝ている皆を起こす。

「ほら皆さん、ホリ様が起きましたよ。朝食にしましょう」

「みんな! 起きて起きてホラ!」

 ペトラの元気な声で、各々が覚醒していく。

「ホリ様! オハヨウゴザイマス!」と一番最初に起きたのはアリヤだった。朝一番から元気な挨拶を彼がしたことにより、他の面々からも挨拶され動く事ができるようになった。

 起き上がろうとした際に少しふらついたが、シーが手を貸してくれたので何とかなった。気配りできる人ってステキ。

 ベルはこの朝の時間、最高に機嫌の悪いラヴィーニアを起こすという無茶を頼まれて悪戦苦闘している。放っておくとしよう。



 食事の用意をしている方を見るとトレニィアもいる。彼女は最近スープ担当として新しい味を探求しているが、飲まないと悲しい表情を浮かべる為、主に俺とレリーア、たまにラヴィーニアも限界を超えて毎度のように完食を義務付けられているようになっている。


「おはようホリ……。もうご飯も出来てる……、食べよう……?」

「おはようトレニィア。そうだね、お腹減ってるから早速頂くとしようかな」

 フラフラと起き上がってきたラヴィーニアと、糸でぐるぐる巻きにされているベル、それを助けようと苦戦しているペトラを見ながら朝食を取り始めた。


 俺の前に出された料理は朝食だというのに、かなり重い物を中心に並べられている。スライム君がメニューを決めたらしいが、かなり出血していた事を知ってタンパク質を取らせようとしているのか? 

 そして突っ込みたくはないんだけどこの卵、何!? 出処を考えないようにして、お腹も減っているから完食したが、おかげで腹が重くて動きたくない。



 食後に俺の体の事や、亜人の事についても話をしておく。

「それじゃあ、ホリ様は暫く休養という事になりますね。安静にしてください?」とパメラに忠告された。ペイトンやペトラ、他の者達も何度も頷いている。


「私はその事を急ぎ各種族に知らせてこよう。アラクネは……、トレニィア。お前が次女に伝えておけ」

「わかった……。ホリ、またね」

 アナスタシアとトレニィアの両名がそう話し、行動を開始した。ラヴィーニアは先程、俺達の穴倉で完全に寝付いてしまったので、放っておくとして。


「猫人族の者達もそろそろやってくる筈です。パメラとスライム殿が食事を用意して、食べ終わったらここにくるように伝えておきましたから」

「そうか、それならここで食休みさせてもらおうかな。正直お腹一杯で動けないし、まだ少し体が怠い気がするからね」


 スライム君から渡されたお茶を頂き朝の空気を味わいつつ待っていたら、先にアナスタシアが各種族に俺の体調の事の説明を終え戻り、その後にゼルシュと共に猫人族がやってきた。

「おはようございます。一晩経って休めましたか?」

 俺がそう声をかけると、彼らは全員俺に向かって頭を下げ、一番前にいる初老の男性が口を開いてきた。年はかなりいっていると思うのだが、頭の上の耳がシュールだ。

「おはようございます。改めてお礼と挨拶をさせていただきたい。猫人族の酋長をやらせて頂いている、ヒューゴー・ロニーコリン・グウッドと言います。ヒューゴーとお呼びください。この度は誠に、誠にありがとうございます」


 彼は再度深々と頭を下げてくる。

「今回は私が代表として話をさせてもらいます。ホリと呼んでください。貴方達を助けたのはここにいる皆の総意です。ですので気にしないで頂けるとこちらも気が楽です。それに、そこの彼女にも助けてもらいましたしね」


 こちらも頭を下げ、言いながら俺が視線を向けた先には昨日一番手酷くやられていた少女。手当をされている筈だが、それでも痛々しい傷が残っている。だが昨日もそうだったが、黄色い双眸が力強く元気そうだ。多少食べかすが口元についているのは食事の後だからだろうか?


 彼女は俺と目が合うと、再度深々と頭を下げてしまったので表情が伺えない。

 ヒューゴーと呼ばれる代表の男性と話を続けておこう。あんな場所にいた理由があるだろうし。


「それで? ヒューゴーさん達はどうしてあんな場所で捕まっていたんですか? 元いた村とかは……?」

「はい、我々は犬人、猫人、狐人の三種族が集まった村にいたのですが、ある日オーガの一団に村を襲われ、そして奴らは村の物資を殆ど略奪、そのまま火を放たれたので這う這うの体で逃げ出しました」


 人間にやられたという訳ではないのか。オーガね、またこの名前を聞くことになるとはなぁ。そして他にも新たに種族が二つも出てくるとは……。


「そしてあの森を抜けて、私の兄弟のいる村へ向かっている最中にあの者達に捕らえられ、貴方達に助けてもらったという訳です」

 踏んだり蹴ったりだな。すぐに助ける事ができたからいいが、それでも運がいいのか悪いのか絶妙に判断に困るところだ。


 彼はまた頭を下げてきた。

「重ねて言わせて頂きます。この度は、我々を助けて下さり誠にありがとうございました」

「いえいえ。それでヒューゴーさん達はこれからどうされますか?」


 彼は頭を上げたと思いきや、俯き少し唸りながら考え込んでいる。

「まだ決め切れてはいませんが、私の兄弟のところへ彼女を先に送り出し、あちらが我々を受け入れられるなら私達はそちらに移り住もうと考えています」


 ヒューゴーが手を向けたところにいるのは、昨日俺がナイフを渡した女性。他の人よりも少し長身で、身のこなしも速かったのを覚えている。昨日はあまり意識していなかったが、意外と髪長い。


「彼女は山や森に入り、狩猟や採取をしながら村で生活をしていました。我々の中でも特に素早いです。うちの子が捕まらなければ、昨日もあの人族に捕まるような事もなかったでしょうが……」

 金の髪を後ろで結わえているその長身の女性が軽く頭を下げてきた。こちらも条件反射で返したが、頭に布が巻かれていたりと傷の痕が痛々しいな。


「そうですか。こちらとしても受け入れる準備を進めておこうと思いましたが、それなら……」

「えっ? ……あの、ホリ殿。申し訳ありません、我々を受け入れてもらえるのですか? 助けて頂けただけでなく?」


 ヒューゴーと呼ばれる男性は、驚いているのか先程まで眉の辺りから伸びている毛で見えなかった目がこれでもかと開き、食い気味に話を振ってきた。ここに来て初めて彼と視線を交わした気がする。

「? ええ勿論。ここにいる人達は、殆どがそうして集まってきた人達ばかりですよ。やる事に追われる毎日ですから大変ですがね」 

 苦笑混じりに俺がそう言うと、彼は体を小刻みに震わせ始めた。

「おお、おお……」

 ヒューゴーは膝を揃えるようにつき、祈るように手を合わせて声を小さく漏らしている。目にも涙を浮かべているようだが……。

「ど、どうしました? 何かありましたか?」

「いえ、大丈夫です。すみませんホリ殿、いえホリ様。我々もここに受け入れて頂くという話、ご再考願えませんか? どうか、どうか!」

「ええ、大丈夫ですよ。でもいいんですか? 御兄弟のところへ向かうと仰っていましたが……」


 彼に手を貸し立ち上がらせ、再度話を聞いてみる。

「正直言いますと、兄弟のいる村でも我々を受け入れる余裕があるかはわかりません。昨今の情勢で、あちこちの村で人族からも魔族からも、村の収穫を奪われているというのを聞いていました。ですので、受け入れて頂けるならば是非お願いしたいのです」


 亜人の立場がよくわからないな。昨日の連中は亜人も捕まえて商売してるって言っていたような気もするが、根本の村から逃げるようになった原因はオーガだっていうし。この世界では微妙な立場という事か?

「ええ、ですが現状でここにいる亜人は貴方達だけ。それでも構いませんか? 何より、我々も余裕がある訳ではありません。かなり厳しい想いをさせてしまうと思いますが……」

 彼は俺の手を握りしめ、何度も頷く。

「ええ、やれるだけの事はやらせて頂きます! ありがとうございます! それに我々亜人全体は人族よりも、どちらかというと魔族と交流を重ねてきました。ですのでご安心下さい」


 そうはいうけど、魔族のオーガに色々奪われたって……。

「ホリ様、オーガは交流して何かを得るくらいなら、いっそ全て奪ってしまえというような類の者達です。奴らに絡まれた事自体が彼らの不運だったと言えますよ」


 ペイトンが俺の疑問に答えるように、そう注釈してくれる。

「そっか、そういえばト・ルースもエンツォも気を付けろって言ってたなぁ。俺弱いし、会いたくないなー」

「そういえば、オーガが絶対に逆らえない部族が居ると言う話を聞いたことがあります。なんと言いましたか、姫、姫……」


 ペイトンが目を瞑り、思い出すように頭を捻っている。

「姫巫女の一族? ト・ルースが言ってたな。オーガの中でも、唯一マトモな頭をしてるって」


 ポンと手を打ち、思い出したようにすっきりとした顔で頷くペイトン。

「それですそれです。その巫女の言葉にはオーガは絶対逆らえないのだとか。その女性を先にこちらの仲間に受け入れられれば戦闘は避けられるでしょうね」


 オーガについてはまた全員で話し合っておくとしよう。ほぼ確実に会うであろう事案なら、即座に対処できるようにしておいた方がいい。



 そこからヒューゴーと話し合いを繰り返し猫人族が新たに仲間に加わった。そして歓迎会として酒宴も行う! 魔王に貰った酒はまだ三割程しか減っていない! 改めて凄い量を貰ったんだな……。日程としては俺の怪我が治ってからという事なので、数日後を予定しておいた。


 夕方頃に話し合いが終わり、彼らの住居も一時的に決めておいたので当分は問題ないだろう。すぐに建築するようだし。


 長時間の話し合いで、疲労も出てきたのか体が重い。軽く食事を済ませたので早く寝てしまおう。そうだ、早く寝てしまおう。


「ギャッ」

「アリヤさん? 疲れてたのかしら? こんなところで寝てしまって……。さぁホリ様! 薬草を煎じておきました! 飲んでください!」

 ペトラが右手に空になったカップを持ち、アリヤが突っ伏すように倒れている。また以前のように指で何かわからない文字を書いている。多分あそこには『ペトラ』か『薬草』と書いてあるに違いない。


「ペトラ、ペトラさん! 俺は大丈夫! ポッドに治療してもらってるから!」

 がしりと肩を掴まれた、怪我をしていない方の肩を掴むところに優しさが光る。その優しさを健康飲料にも含めて頂きたい。

「大丈夫です! ポッド様が『ホリにも是非飲ませるべきじゃ』と言っていました! さぁどうぞ!!」

「あのクソジジ――」


 これで健康になれる。

 薄れていく意識の中で、俺は明日を生き抜く健康を半ば強引に取得した。


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