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魔王様、顔怖いです。  作者: ふかづめ
集い始める仲間達と初めての戦闘
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第15話 この木なんの木気にはなる

 お肉搬送組と合流したら、まず怒られた。それはもうこってりと。

 それもその筈まず俺とアリヤは見た目がズタボロで、殴られた痕や戦闘の形跡が会ったことから大体を察した三人にそれはもう怒られた。誠心誠意の謝罪をしつつ、何があったかの説明をした。


 森でゴブリンに襲撃されなんやかんやアリヤを助けてもらった時に事情を説明したら先程のトレントが俺達の拠点にくることにという話をしたところペイトンは大口を開け、凄く驚いているといった具合で呆気に取られていた。


「も、森(・)の(・)賢(・)者(・)と言われるポッド様を……!? どんな経緯があればそんなことになるんですか!」

「森の賢者ァ? ペイトンさんそれはないわ。ただの偏屈そうな爺さんって感じだったから気のせいだよ、そんな大層なもんじゃないって」


 好き放題言っていると、頭に軽い衝撃が走り何かが足元に落ちた。ひょいと拾い上げてみると爽やかな強い香りがする。


「木の実? なんでいきなりこんなもんが……」

上を見ても、木の実をつけているような木はない。なんとなくだが、先程の偏屈な爺が大きく笑っているような気がしたので木の実を眺め、勢いで噛り付いてしまった。


 美味い。多少硬いが実がしっかりとしていて酸味と甘みがほど良いバランス。しゃくしゃくと食べ続けると果汁が溢れ出てくる、強い香りも有ってか色々とあって渇いた喉に最高。


「ホリ様、好かれてるんですね。それトレントの実ですよ。森の恵みの中でも子供達に人気のある甘い果実です。多少硬いのが玉に瑕ですが……」

 どうやら先程の木《ポッド》に嫌がらせをされたようだ。甘味など久々に食べたのでこれはこれで感謝をしておこう。だが、それはそれ。腹立たしいのに変わりはない。


「燃やしてこようか、あの木」

ポツリと呟いた言葉、また衝撃がやってくる。足元には木の実、腹立たしいがこれは頂こう。鞄に入れながら、あの大木の大きな笑い声が聞こえてきたような気がした。


「とりあえず、木の協力も貰えそうだし収穫はあったかな。アリヤとの秘密もできたしね」

 アリヤを撫でながらそう言うと彼も少し照れるようにしながら笑っている。本当に無事でよかった。


「秘密……ですか?」「ナニナニ?」

「フフフ、内緒だよ内緒。ねえアリヤ?」「ハイ!」


 いい笑顔だ、邪悪だけど。まだ日は高いが、戻ったら少しは作業ができるだろうか。アリヤはベルとシーに囲まれ、秘密の内容を聞き出そうとされているが邪悪な笑みで煙に巻いている。


 道中、楽し気なゴブリン達を先頭にして、その後ろにいるペイトンと少し話をしながら歩んでいく。

「野生? のゴブリンを初めて見ましたが、あの子達とは別物のような気がしましたよ。なんていうかこう……凄く不気味な感じで」

「ああ、それはもしかしたら瘴気から出てきた連中かもしれませんね。アレから出てくる魔物は知能はほぼありませんから」


 そういうものなのか。確かに即座に攻撃を仕掛けてきたうえに何も喋らなかったからなぁ。もしあの時、すぐ傍にアリヤがいなかったら確実に死んでいるな。俺。


「ゴブリンでまだよかったですよ。モンスターやオーガ、獣の類などだったらかなり危なかったですし、下手をすれば死んでいますしね。やはり森の探索はまだ早かったでしょうか」


 ペイトンが怖いことを言ってくるが、ありえない話ではなかった。それでも、やはり森に赴くことで何か収穫があるかもしれないのだから、これからも機会があれば積極的に森へは足を運ぼう。


「まぁ、もしかしたらあの木に安全な位置とか教えてもらえるかもしれませんし、他にもトレントがいるかもしれませんからね。これからも注意を払いながら探索しましょう」

「そうですね、ホリ様も無事でよかったですよ」


 拠点につくと、あまりに泥だらけな俺とアリヤを見てパメラ達は驚いていたが、そこまでの怪我がないことを安堵するように胸をなで下ろして息を吐いた。


「ホリ様、今日はこれを飲んで休んでいただきます」

 ペトラが、以前に飲む事を拒否した謎物質をコップに入れ、再度持ってきた。おどろおどろしい色と、飲まれることを拒絶するかのような臭いがコップから漂っている。


「いや、大丈夫、大丈夫だから!!」

「いけません!! これは飲んで頂きます!! アリヤさんもですよ!!」

「エッ――」


 ペトラは言うが早いか、素早い手付きでアリヤの口にコップを押し付け傾けた。アリヤの喉が揺れている。おぉ…飲み込んでいる……?


「ギャッ」と小さく声を上げ、アリヤは倒れた。


 んー!? アリヤの指が最後の力を振り絞るように少し動き、よくわからない文字を地面に描いた後完全に止まった。丸っきり殺人現場なんですが……。


「ふう、これで安心ですね」

汗を拭うような素振りを見せるペトラの笑顔は眩しい。やりきった感じを出されても、傍から見ればそれは暗殺者が一仕事終えた場面にしか見えない。

「さぁ、ホリ様。アリヤさんも飲んで休まれたようですし、こちらをどうぞ」

 輝くような笑顔と対極にある沈むような闇を放つコップの中身。何だろう、あのゴブリンと対峙した時よりも生命の危機を感じる。だって、さっきはこんなに汗が噴き出てこなかったし!!


「いや、俺はほら、怪我とかしてないし。大丈夫だよ」「さぁ、どうぞ」

「アリヤほど、疲れてもいないしさ」「さぁ、どうぞ」

「気遣いはうれしいけど、大丈夫――」「さぁ、どうぞ」

「いや、あの――」「さぁ、どうぞ」

 

 無限ループって怖くね? どうあっても逃がしてもらえないと察した俺はコップを受け取り、ソレを口に含み薄れゆく意識の中で俺はそう思った。


暫くの後目が覚め、あれこれと体調も結構よさそうだ。薬、効いたのかな……? 皆には体を休めろと言われたのでそのままゆっくりとさせてもらっている……のだが、暇すぎておかしくなりそうだ。こちらの世界にきてからというもの、ほぼ休みなく働いていたからか。手持ち無沙汰というのがここまで苦しいものだとは……。


 あっ、そうだ……。

「パメラさん、みんなの防具どこかな? 少し借りるよ」

「ホリ様、どうされました? 防具ならそこに……」


 示されたところに防具が置かれている。

 先程使った時にプレートの角が少し気になったので、ハンマーで調整しておこうと思ったのだ。薄いからなんとかなりそうだが、この薄さでかなりの強度の為、調整するなら腕輪が早いと思った。


 ハンマーで潰さないように、角を丸めて……。一つ、ベル用の防具をダメにしたが他のは成功した。あとで謝っておこう。


「休まれなくて大丈夫ですか?」

「うん、少し暇でね。何かしようかなと思った時に防具が気になってね」


 少しは使いやすくなるだろう。パメラはみんなの着るものや、布を直している。丁度いい、気になっていた事を色々やりながら聞いてみるとしようかな。


「ここには慣れたかな? まだあまり何か設備が充実してるわけじゃないけど」

「ええ、毎日大変ですしやることも多いですが、逃げ続けていた日々とは比べ物にならないくらい楽しいです」

何かを思い出すようにして遠くを見ていたが、楽し気にあれこれと手を動かしてそう告げてきた彼女、良い笑顔だ。


「そっか、ペトラさんも忙しくさせちゃって申し訳ないね」

「フフフ、ホリ様。ペトラや私、夫にも敬称のような物はいりませんよ。呼び捨てで構いません」

「えっ、でもさ」「構いません」


 いかん、さっきのループが再び起きそうだ。魔族の女性は押しが強いのか? それとも親子だからだろうか? どちらにしろ、ペイトンは意外と苦労しているのかもしれない……。


「あー、わかったよパメラ。それでペトラはどうしたの?」

「娘は、夫と土を見に行ってます。トレントが来るということなので、土から石をどかしておこうと言ってましたよ」


 あー、どこにくるか聞いてなかったけどそういえばあの木はどうやって来るんだろう? あの森、あの場所にしっかりと太い根を張っていたのに……。


「そっか、場所を作ってくれてるんだね。あの木、結構デカかったもんなぁ」

「森の賢者と言われるポッド様ですしね。直に拝見したことはありませんが御伽噺《おとぎばなし》に出てくるほどの方ですよ。ペトラが大好きなんです」


 伝説になっちゃってるじゃん……、あの木が? 意外と危険だったりするのかな。木だから長生きなのか? 


「ハハハ、火の魔石で燃やそうとしちゃったけど、大丈夫だったかな」

「それは……、状況がわかりませんが、大変だったのですね」


 それはもう、と森での顛末をあれこれと話しているとペイトンらが戻ってきた。


「おぉ、ホリ様目が覚められましたか。心配しましたぞ!」

「ホリ様、体調の方はどうでしょう?」

「うん、薬のおかげか大分いいよ」

 よくないのは味だけだったのだが。というか、味を確認する前に気を失ったのだが一体どういう物が入っていて、どうやって生み出したんだろうか……。


「ホリ様、ホリ様……」

ペイトンが耳打ちするように小声で話かけてきた。ちらちらと母子で楽し気に話しているのを横目にひっそりと。


「大丈夫でしたか、娘の言う健(・)康(・)飲(・)料(・)はかなりのものです。休んで眠られたと聞いておりましたが、そうではないのでしょう……?」

「あぁ、まあね……。口に含んで、喉を通る頃には意識を失っていたよ……。ペイトンもそうなったの?」

手を頭に当てて、苦悶の表情を見せるペイトン。これは経験者の顔ですね……。


「やはり……。ええ、アレの作る薬の類は、どれも何故か刺激が強いものばかりで……、村でも度胸試しに使われるくらいの一品でしたよ……」


 ペトラ……! 恐ろしい子……!

 彼が涙ながらに彼女が過去作り上げてきた刺激物を消化してきた経験を教えてくれた。病気にならないように、怪我をしないように更なる配慮が必須になったことを再認識しておく。


 敵が来たら、アレをぶっかけてやれば逃げるチャンスになるかもと、今度から水筒に入れておこう。


「しかし、木がどうやってここに移動してくるんだろう。場所もどこにするか決めてないのになぁ。勝手に場所を決めてくれても何もないところだから構わないんだけどさ……」

「そうですね、一応魔王様が掘り返したところに目印を置いておきましたけど、もしかしたら全く違うところに行ってしまわれるかもしれません」


 まあ、移動できるんだからああ言ってきたのだろうし、場所が悪く邪魔になりそうなら移動してもらおう。


「とりあえず、今日の収穫の猪で食料もまた余裕が生まれることですし、食べられない臓物をまた土に入れておきますか?」

「そうだね、効果があるかはわからないけど。そこらに放置する訳にもいかないし。埋めちゃおう」

「ホリ様、今日は私達だけでやりますので。少し休んでて下さい」

 腰を上げ、さぁやるかと歩き出そうとしたらペトラにそう告げられる。断ってもまた押し問答が始まりそうだし、素直に言う事を聞いておこう。ペイトンにあれこれと頼んで送り出したが、こういう時に時間潰せる何かがあればいいのに……。オセロでも作るか? 異世界物定番のアレ。


 いや、娯楽に興じてる場合でもないか。大人しく体を休めながら魔法の練習でもしようかな。この場に残ったパメラにも話を聞いてみよう、彼女も魔法をたまに使っているし。


「そういえばさ、魔法を使う時ってどうしてるの? みんな普通に使ってるけど……何かコツでもある?」

「魔法を使うには色々とありますよ。詠唱が鍵となり発動するものもあれば、イメージで行える物もあります。無詠唱で発動するのは威力が低いものもありますが、日常で使う分にはイメージで行う無詠唱の物でも問題はありませんしね」


 パメラやペトラは魔法が使えるんだったなぁ。イメージか、イメージね……。

「ただ場合によっては魔石を使った方が早かったり、便利だったりするので日常で役立てばというものが多いですね」


 水とかもそれに当たるのかな。結構使ってるけどまだあまり魔石が効果を失ったところも見てないから、資源としては相当優秀だよな。


「でもやっぱり、農業とかには井戸掘ったり水路作ったりしてたでしょ?」

「ええ、うちの夫もいくつか井戸を掘る作業をしたりしていましたね。魔石にばかり頼れませんから」


 水は大事だもんな。農業やるなら井戸とかは必須だろう。

 その後パメラと話をしながら、魔法のトレーニングを続け食事の時間を待った。暇なので、風呂を入れにいきどうせ汗を流すならと剣の素振りをし、休みを満喫させてもらった。


 晩御飯の猪は美味しく頂きました。


 その晩のこと。風呂にも入ったし、色々と疲れてる筈なんだがどうにも眠れない。眠ろう、眠ろうとするとゴブリンを殺した事を思い出してしまい、目が覚めてしまう。


 少し、夜風にでも当たろうかと思い外に出た。今日も異世界にやってきて初日に見た星空が続いている。日本だとそんなに星を眺めることはなかったな。見えない事の方が多いし。


 周囲に灯りもないから、光の瞬きと闇の暗さがより鮮明に映っている。

 そして、特徴的なのはあの三つの月。夜の闇が広がっていても、月明かりで周りがぼんやりとは見えるな。一応灯りも持ってきたけど、遠出する訳じゃないし……。


 「ん?」

 あれはなんだろう? 夜の闇の中に、月と星の光でシルエットが浮かび上がっていて、何か巨大な物体が動いているように見える。とても、大きい……木……?!


「おいおいおいトト〇かよ……」

 あんなところに木なんてなかったはずだが、いつの間に……? とりあえず、行ってみよう! 場所は魔王が掘り返した土の傍だ!


 近くに来たが、月明かりに照らされながらその巨木は夜風によって葉擦れの音がまるで川の音の様にざわめいている。


「こんな所にこんな立派な木なんて生えてたか……? っていう事は……」

「おう、人間。きてやったぞ」


 いきなり現れた巨木はポッドと言われるトレントだった。いや大体察してたけどいつ移動してきたのこれ。


「いきなりで驚いたよ。よくここだとわかったな? いざとなったら移動してもらおうと思ってたからいいけどさ」

「そこに目印があるじゃろ。魔石の魔力が混ざった土もあったから、わかりやすかったぞ?」


 よく目を凝らして見ると、畑から退かしたのであろう石が積みあがっていた。目印……? まぁ後は以前に魔王が持ってきた魔石混入土のおかげだったようだ。


「何も手伝えなくてすまない。大丈夫だったか?」

「うむ、様変わりはしておるが以前この辺にいたことがあるしの。勝手知ったる土地じゃから大丈夫じゃわい。お前さんはなんで今時分こんなところにいるんじゃ?」


夜風が吹く度にざわざわと葉が揺れている音が騒がしい中で、多少照れ臭いが正直な気持ちを彼に言ってみた。


「ああ、昼の事を思い出して少し……目が冴えちゃってね。夜の散歩だよ散歩」

「ああ、ゴブリン相手にしてベソかいてた奴か。不思議じゃな、そんなに衝撃を受けるような出来事か? ワシにはわからんが……」


 ああ、こちらの常識ではやっぱり大したことではないんだろうなぁ、あの程度は。ていうかガッツリ見られてるし……。恥ずかしさから、つい頭を掻きながら説明をする。


「正直、生き物の命を自分の手で明確に奪ったのはアレが初めてでね。あの状況になるまで、相手を殺すっていう覚悟がちゃんと出来てなかったんだと思う。してたつもりだったんだけどさ」


 あの時のゴブリンの目、頭にこびりついたかのように浮かんでくるし。


「アリヤが……、仲間が殺される! って思ったら戦わないと、殺さないといけない時ってあるんだなって改めて実感して……それで」

「その結果が殺した相手への謝罪かい? よくわからんが……」

 ホント、よく見てるなこのトレント。疑問の表情を浮かべて俺をじっと見つめてくる木の幹。


「それはなんというか……、あのゴブリンのおかげでそういう戦う覚悟ができたし、こっちの都合で殺しちゃったし。そこから先は、混乱してたから俺にもよくわからないよ」


 葉のざわめきが一段と騒がしくなり、トレントは少し楽しそうに笑いながら「そうかい」と一言呟いた。


「人間と魔族が手を組んで事を成すか。以前にもそういう事があったな。古い、古い昔の話じゃけど」

「どんな事があったんだその時は」


 ポッドと言われるトレントは、昔を懐かしむような雰囲気で話を始めた。

「あの時は……、暴れ者の竜がおってな。名はニーズベルグ。誰が呼んだか、御大層に『邪神竜』とか呼ばれておった奴じゃ。人族や魔族の街を焼き払い、そこの連中を食い殺す。海に嵐を巻き起こしたり、雷を落とし海の住人を食い殺す。腹が満たされたら戯れで命を奪うようなクソッタレじゃったわい」


 おいおい、めっちゃラスボス感あるなそれ。今のこの世界にいなくて本当によかった。


「それでな、この世界に生ける主な種族……、人族からは勇者とその仲間達、魔族からは魔王と四天王と言われた傑物達、海からは海の王とその側近が手を取り合い、連合軍としてその竜に挑んだんじゃ」

「それでどうなったんだ?」


「長い時を戦い続け、竜は殺されたよ。ただ連合側にもかなりの被害が出てな。その殆どが死んでしもうた」


 当時の、最高戦力が手を組んでそれってどれだけ強かったんだよそいつ。よかったこの時代で。もしそいつが居る時に神様に「この腕輪をつけて戦ってね(はーと)」みたいなことされたらその場で死んで神をスコップで叩くところだった。


「そういえば、あの時も……」

「ん?」

笑いを噛み殺すようにして俺をじっと見ているトレント、何か腹立つ。


「いや、そういえばあの時も殺された人間抱きしめて泣いてた魔族がいたなと思い出してな。ちょうど昼間の誰かさんみたいに」


 木が小馬鹿にするようにこちらを見やり、したり顔で笑っている。


「ちょっと火の魔石取ってくるわ。盛大なたき火したくなった」

「冗談じゃ! やめろ! 全く。ちょっとしたジョークじゃのに……」


 それがどれだけ昔の話か知らないけど協力し合う時代もあったのか。なんで今のご時世こうなってるんだろうかね。やっぱり集団を纏めるのは共通の敵の存在が大事っていう事なのか。


 少し話をしすぎたか。夜風で体温が奪われたからか、少し体が震えてきた。


「そろそろ戻れ人間、木の洞《うろ》に話をしたから眠れるじゃろ。あぁあと、これやるぞ」

 木の根がこちらに伸びてきた。そうしてトレントから渡されたのは、木の形を象《かたど》ったブローチのようなものだった。


「これは……? ゴミ渡されても困るぞ」

「何がゴミじゃ! それもって森に行けば、ワシの仲間のトレントが力を貸してくれるじゃろ。ワシの香木で作ったブローチじゃからな」


 言われ、スンと匂いを確かめてみる。爺の加齢臭などはせず、森林の香りに満ちている。


「他にもトレントがいるのか? あの森には」

「トレントだけじゃない、色々おるよ。それに、それがあればそやつらに警戒されるということはなくなるじゃろ。ワシ人望あるし」


 イラッとする感情を堪え、礼を言っておくとしよう。役立ちそうだからな、無用な戦闘を避けられそうなアイテムは是非欲しいところだし。


「ありがとう、正直助かるよ。どうしても人間ってことで襲われると思うしさ」

「おう、まあそうなるのも仕方のないことじゃしな。感謝しろよホリ」

「ありがとうよポッド」


 そのまま拠点に戻り横になる。少し思いを話せたからだろうか? それともこのブローチの香りで心が休まったのだろうか? 不思議とそのまま目が覚めるようなことはなく、眠りにつけた。


 勿論次の日寝坊をした。

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