第11話 圧倒的ぱぅわー
ペイトンの妻パメラを説得するのは骨が折れた。彼女は淑女然とするタイプであり、とても丁寧な対応をしてくれるのだがその反面、芯が通ったという言ってしまえば気が強い方だったようだ。即座にペイトンが潰され、魔王が笑顔で一蹴され、俺がなんとか説得を成功させた。魔王も一蹴とは……、母は強い。
そしてその話がひと段落したので、スライム君達の料理とパメラが保存用に作っていたパンを頂く。すごい!これが黒パンって奴か、カッチカチやないか!! と彼らとは違うところで興奮している俺。
少し悪戦苦闘するが、なんとか食事を続けられている。顎が疲れたが俺以外はバリバリ噛み切れてることから基本的な力の強さというか、出力の違いを思い知らされる。
「ホリ様、大丈夫ですか? 御口に合いませんでしたでしょうか?」
パメラが食事があまり進んでいない俺を見て、不安気に聞いてくるが気を遣わせても仕方ない、そういうもんなのだ。このパンを作った奴は誰だァ!! と言い出すようなエゴイストでもない。
「いえ、黒パンを食べた経験が少なくてですね。少し感動して大事に食べているようにしているんですよ」
「このパンも正直言いますと、家から持ち出せた小麦粉を長持ちさせる為だけに作ったので……。魔王様もおられる食卓に出すには無礼な品なのですが、スライム様が食料を無駄にするのは許さないと仰りまして」
スライム君はこの拠点の、俺達の食料事情を一人で支えているからなぁ……。こと料理に関して言えば魔王より発言権があるだろう。っていうかスライム君と会話できるんだ……、会話できないのは俺だけか。
「えぇ、今はとにかく食べて動いて、全てに貪欲にいくべきですからね」
苦笑しながら返すと、そうですねと彼女は笑顔で返してきた。よかった、先程までスライム君の料理を食べ、改めて安心したのかオーク一家泣きだしそうだったからなぁ……。
オークはどうやら、肉よりも野菜や魚を好んで食べるらしい。ペイトンの「野生の猪なぞ、自分を食っているようなものですからな!」というブラックジョークにどう返せばいいのかわからなかった。それでも、そういった品を食える時は残さずに食べ切るというのは自然の恵みへの感謝があるからだとか。
今はスライム君からどうやってか奪ったと思われる木の実をムスメが奪って食べており、そのムスメの足元でポンポン怒りを表しているように見えるスライム君とその周りでゴブリン君達、一家の娘のペトラが慌てふためいている。
和やかに食事も終わり、ペトラが森に行く準備をしている。
「ペトラ、気を付けるんですよ。ゴブリンさん達とお父さんのいう事は絶対に守りなさい。あとはこれを持っていきなさい」
彼女は胸元から赤い鞘に収まっている短刀を取り出した。ペトラはそれを受け取り、一度その刃の状態を確認するように見てそれを胸元にしまった。
「うん、心配ばかりかけてごめんねお母さん。大丈夫だよ」
笑顔の彼女とは対照的に母親の方は心配ですと言わんばかりの表情だ。彼女達森の探索班を見送り、こちらも行動を起こす。
パメラさんは荷物などを整理し衣服などの直しをしたいそうなのでスライム君が連れ添い護衛してくれている。スライム君なら大丈夫だろう。戦うコックさんだし。
「さて、ホリ殿。こちらも始めますかな?」
「ええ、土を掘り返すのはペイトンさんが戻ってきてからという事になりましたし。本拠点の場所を見つけるのは今のところ最優先で行いたい一つですからね。魔王様の協力が不可欠ですし」
こちらはかなりの時間を要する場合もあるので、出来る時に出来る限りやっておきたい。この後にもやる事は多いのだし。
「では、まいりますか。少しこの前よりも速度を出しますので、そこだけご注意下さい」
「えっ」
そう言葉にしたタイミングで我々が立っている中間の位置から魔法陣が出現した。
あぁ、この浮遊感慣れないなぁ……。前回よりは余裕のある自分の順応力に感謝をしつつ、頂上より少し高い位置に至るまでにそこまでの時間は要さなかった。
「ふむ、やはり以前に横断した時と変わらず平坦な地が続いてるように見えます」
魔王がポツリ呟いたので、周りを見渡してみる。目に映るのは一面に広がる鈍色の空間。空の青さとのコントラストが現実感のなさを強調するようだ。確かに、軽く眺めただけでも平面が続いている。
「うーん、できればクレーターのような窪んだところを始めに選んでおきたかったんですよね……、これなら諦めて少し行ったところで掘削を始めたほうが結果的に早くなりそうですね」
「かもしれませんなぁ。まぁ、探索班が戻るまでは時間はあります。少し探索をしてみましょう」
ええ、と首肯し引き続き飛び続ける。途中から少し飛ばしてかなりの広範囲を探索したが、いい場所の発見には至らなかった。
どんだけ広いんだよこの山!!
かなりの時間探索をしていても、端が見えてくることはなく。それどころか、相当の距離を飛んだことにより、どの方向を見ても広がるのは鈍色の山と青い空の地平線。大海原で海の真ん中にポツンと立っているみたいだ。海ではなく山だけど……。
「広いですねこの山……、聞いてはいましたが、実際に経験すると尚更広さがわかりますよ」
こちらはもう連続して飛び続けたりしていて、やはり慣れない感覚が続いていたからか疲労困憊である。
「そうですなぁ。やはりこの山にクレーターのようなものはないのかもしれません。ということになるならば、やはり近場から作業をしていった方がいいかもしれませんな」
少しでも開けた場所があればよかったんだけどなー。でもこれだけ探して見つからないのなら、まさに砂漠でオアシスを見つけるようなものだろう。時間の無駄になるし、魔王への負担にもなりえる。
「そうですね。改めてこの広さを認識できましたし、それがわかっただけでも収穫です。探索班も戻ってきてるかもしれませんし、一度戻りましょう」
言うのは簡単だが、言った本人は方向感覚がもうない。魔王に丸投げでなんとかしてもらおう!
「わかりました、ではまた飛びますよ」
彼の声が聞こえた途端にまた浮遊感。何度か胃の内容物を戻しそうになったが、それも耐えていたらこの浮遊感にも慣れてきた。大丈夫だ。そのうち自分でも飛べるようになりたいな、と考えて帰路を行く。魔王は迷うことなく一直線に飛んでいるがやはり方向などに迷う素振りはない。何かコツでもあるのか?
そうして、時間は少しかかったが拠点の前に戻ってこれた。
「王女様! モドッテキタ!!」と声がすることから探索班も戻っていたのだろう。
ムスメが座り込んでこちらを見ながら手を振って「オカエリー」と声を出している。ただその座り込んでいるモノが少しおかしい。何か、小型の山? のようなモノに座り込んでいるのだ。あんなとこに、あんなものあったっけ……?
少し、嫌な予感はしたのだが魔王と並びそちらに歩み始める。近づいて行きながら、やはり違和感を覚える。大きさは山のようだが、その様相はというと何か、独特な艶のある質感の山なのだ。
うーんなんだろうあれ……。
そうしてムスメ達のいる場所に到着する。改めてその山を確認すると、それは巨大なトカゲのような生き物だったモノ。その首がスパッと鋭利な刃物で吹き飛ぶように斬り飛ばされてる……。
うぅっ、切断面見ちゃった……。
「なんかねー、ペトラが追われてたからやっといた。食料ゲットだぜ!」
ブイサインを浮かべ、そう語るムスメ。その追われていたというペトラも、先程からずっと震えている。彼女の衣服はまるで土の上で転がり続けたように黒ずみ、泥だらけだ。
「切断が……、目の前で……、頭が……プシャッと……」
目が虚ろになりながらもペイトンに説明をしている。これ追われたことよりもムスメの殺害方法がトラウマになっているんじゃ? つい頭を抱えてしまう。これでは、もう二度と森へ行かないと言い出しても仕方ないかもしれない。
「ホリ様! コレ! オオモノ!」
「ブリアンリザード! レアレア!」
ゴブリン達は飛び跳ねるようにはしゃいでいたり、ポンとブリアンリザードと言われる物の亡骸を叩いたりと楽し気だ。
「このサイズのブリアンリザードは中々見ません。ペトラが追われて血の気が引きましたが王女様の御力により事なきを得ましたし、これだけの大物に巡り合わせてくれたのですし、我が娘ながらよくやってくれたとも言えますね」
ペイトンがハハハ! と冗談交じりに報告をしてくれる。内容の酷さにパメラが頭を叩いているが。しかし、その改めて眺めているとその大きさに肝が冷える。
首が打ち落とされて、動かずにいるがその死体からでも感じる重圧に息を吞んでしまう。こんな奴に追い詰められたら……。あまり、意味のない想像をしても仕方ないな。その時は大人しくお経でも唱えよう。
「よくやってくれましたな!」とムスメの頭に手をやり、少し乱暴な具合に撫でている魔王。「やめてよ! カミが乱れる!」とムスメの絹のように美しい黒混じりの青い髪がぐしぐしとされていた。
彼女はぶつくさ言いながら髪を手で直している。
「でも、これよくもってこれたね。こんな大きいならさぞ重かったでしょう……?」
俺がぽつりと出した疑問の言葉に叩かれた頭をさすっているペイトンが答えてくれた。
「あぁそれは、私とゴブリンさん達で持ってこれましたよ。少々手こずりましたが、王女様の助けもあってなんとかなりました。頭部はペトラが持ってきてくれました」
「あぁ、それで彼女は少しというか、大分汚れてしまったんですね」
俺がそう言うと、ペイトンは少し視線を泳がせ苦笑いを浮かべている。違うのだろうか?
「いや、あのですね……、王女様の一撃で首が落ちたブリアンリザードの返り血をモロに浴びてしまいまして……、汚れはその時の物が中心です」
ホラー映画でよくあるあれか、可哀想に。食料にもなるようだし、素材もペイトンらに任せてしまおう。俺自身捌くようなことはできないから、できることは荷物の移動くらいなものだし。
そう思っていたんですがね……。
「ふぬうううおぉおうううおおお!」
重い! この頭重いよ!!
少しでも役立とうとしたが、あまりの重量に苦戦していると、シーが後ろからやってきて、こちらに手を貸してくれるようだ。
それのおかげで遅々として進まなかったのが割とスイスイ移動できるようになった。この頭を持ってきたペトラもそうだけど、彼ら全員パワー型すぎる。
頭部を所定の場所に持っていくとスライム君とパメラ、ベルの三人で解体作業をしていた。解体も少しは見慣れたと思っていたが、これほどの規模になると別だ。
スライム君に少し頼み事をして、その場を後にする。見た目も臭いも大規模な解体を味わい、少しフラフラするが気を落ち着けて、魔王と掘り返す作業について話さねば。
「魔王様、そろそろ地面の掘り返し作業をやってもらいたいのですが……」
「おぉ、そうですな。場所は決めてあるのですか?」
大体の場所の目星は思いついている。オーク達が住処にするといっていた拠点から少し行ったところに実験的にやってみようと思っていたのだ。ペイトンが主体となって当分は見ることになるし、パメラやペトラも近場ならば彼に協力しやすいだろう。
そこに歩いて向かっている。向かっているメンバーは解体作業をしている三人以外の全員が行くことになった。というより、全員が魔王が何をするのかを見たい野次馬根性で来ている。
「別にこなくても、休んでていいんだよ?」
「パパが何かするんでしょ? 楽しそージャン!」
ムスメは今日も自由だ。道中、アリヤとペイトン、ペトラから森での収穫を聞いておいた。どうやら薬草や野草、それらの種子などが採取できたようで成果としてはかなりのものだとか。
ペトラの犠牲? を無駄にしない為にも、この種子らは大事に使っていこう。いやペトラ死んでないけど。目的の場所についた。ついたわけだが……。
「魔王様、それでどうされるんです?」
「フッフッフ、私もこれで一端の魔王。少し派手にやってみせますよ」
手の輝きの中から長い杖のようなものを取り出した。その杖は支柱のところが黒く、柄のところに金の竜があしらわれ、その竜が宝石のように輝く水晶を抱えるようにして持っている。
「それは……、杖ですか?」
「フフフ、これは魔界に住まう竜アースグラントドラゴンの核を使っている杖でしてな。今回のようなことに向いているのです。それで、どれくらいの深さを掘り返しましょうか?」
そこなんだよなぁ……、数メートルくらい下から掘り返してみて、様子見をしておこうか……?
「正直、どれほどというのはあまり思いついてないんです。実験を繰り返していくしかないと思っていましたし……、魔王様にお任せしますよ」
彼はそれを聞くとふむと片膝をつき、地面の土を手に取っている。
「うーむ、ちょっと浅いところから掘り返してみますか。ダメでも、また更に下から土を持ってきてみてもいいですし。そこは判断がつきませんしね」
「ええ、元々肥料になりそうなものとかも使ってゆっくりとやっていければと思っていましたし。ペイトンさんが来たことで少し計画を早めたというのもありますしね」
そう会話を締め、魔王もそうですね。といい少し前に歩きだした。
「ふむ、では行きますかな。少し揺れるのでご注意を」
そう言い放ち彼が持つ杖の宝玉がキラリ、輝いたように見えた。軽くコツンと地面を杖で突いた刹那に、地面が唸りを上げるように震え出す。その現象に慣れている身としても、少し大きな揺れに戸惑う。
ゴブリン達はというと、慌てふためいている。この地は地震があまりないのだろうか?経験のない人にはこの震度の強さは恐怖そのものだろう。
珍しく、シーやベルが恐怖からか身を寄せてきて服を掴んでいる。
やめて、ズボン落ちちゃう。
そして、その揺れの最中のこと。地面から湧き出すように、土が盛り上がっている。よく見ると、土の色が他の場所のそれと違い湿り気を帯びているような濃い色だ。そうして揺れと共にそれらの現象が収まり、慌てていた彼らも落ち着きを取り戻していく。
俺はズボンを上げ、紐を縛り直しながら魔王のところに歩いていく。
「終わりましたか? 大分大規模な揺れでしたね。驚きましたよ」
「ホリ殿は平気なようで少し意外でしたが、彼らにはサプライズになったようですな」
悪戯が成功したように不敵に笑う彼の視線を追うとそこには、楽し気なムスメと一転して地面を這うようにしているペイトンらがいた。
「ええ、まぁ少し経験もありまして……、それで、土を見たところやっぱり少し表面のものとは違っていますし、期待できそうですね。ありがとうございます」
そう告げると、魔王は頭を掻き笑顔で照れ臭そうにしていた。怖い顔だけど。ゴブリンらが落ち着くまで、少し時間を置いておこう。未知の体験をしたのだろうからそれくらいは配慮すべきだろうし。
魔王とムスメは今の技を使う際にもっとカッコイイポーズがあるはずだと議論を重ねている。今のうちに、少しやりたいことをやっておこう……。
「ホリ殿? 何をされるんです?」
こちらの行動を不思議に思った魔王が聞いてくる。掘り返した土の傍で袋から先程スライム君からもらったブリアンリザードの内臓を取り出した為だろう。
これは食用にできない部位らしい。毒などはないが、臭みが強いという点とどう頑張っても日持ちがしないなどの理由から「いらない部位をくれ」といったら触手のような手でペイッと渡された。
まぁ、日持ちしないのと臭いが強い点から、どんな部位かは大体想像もついているが……。鞄に臭いが移らないかそちらが心配だった。
「少しこれを埋めておこうと思いまして……、肥料にでもなればいいかなーと」
農作物が育つ条件に色々な要素があったと思ったけど、そこまで専門的な知識はない。有機物植えておけば地面の微生物がなんとかしてくれるだろ!という軽い考えだ。あと植えようと思っている物と言ったら、お風呂で使った薪の灰とかだ。どちらにしても、大規模に出来る事はあまりない。
「おぉ、そうですか。それならばこれも使ってくだされ」
彼は輝く空間から一つの小瓶を取り出した。なんだろう? 受け取った瓶の中には、星の砂のように輝く粉のようなものが入っている。
「以前に、土に魔石を砕いて混ぜ込んでいる種族がいましてな。その者達曰く、土にいいんだとか。その者等に話を聞き土と樹の魔石を砕いたものを用意させました」
「それなら、何も手を加えない場所と臓物だけを入れた場所、魔石だけを入れた場所、両方混ぜ込んだ場所と分けてみましょうか。それでしばらくは様子見ですね」
魔王にはゴブリン達の様子を見守ってもらい、以前に魔王からもらった剣と腕輪のスコップを使って地面に肥料のようなものを混ぜてみる作業をしている。
魔王が掘り返した場所は数百メートルほどの広さがあるので、手を加えられる場所の方が少ないが経過を見れればそれでいいので良しとしよう。
立ち直った人から手伝いをすると申し出てくれたが、今日は魔王と一緒に空中散歩以外何もしていないので、彼らには休んでもらっている。森林探索から動きっぱなしでは疲れるだろうし、疲れていないとしてもオーク達は今日ここに逃げ込んできたのだ、心労も溜まっているだろう。
しっかし、くっさいなこれ!
「よし、こんなもんかな」
流石に日もまだ高く、汗が滴る。区分けの目印に石を置き、それぞれわかりやすくしておこう。石がないところは何もしていないところ、数が一つが肉片のみ。二つが魔石のみで、三つが両方を混ぜ込んだところだ。
両方を混ぜ込んだところは少々混ぜ込んだ量も少ないが、こんなに広大な掘り返し方をすると思っていなかった。
ペイトンが水を持ってきてくれた。汗となって出ていった水分を補給する。
「お疲れ様です。すみません、休ませて頂いてしまって……」
「いえいえ、今日は何もしていなかったのでちょうどよかったですよ。休めたようならよかったです」
彼も朝まではかなり追い込まれていたのだし、今は平気そうに見えても精神的に参ってる部分もあるだろう。殺されかけたが、彼の立場なら仕方のない面もある。
「パメラさんは今いませんが、ペトラさんは大丈夫そうですかね? 森での事もあったし相当参ってるように見えましたが……」
「ええ、あれも母親に似て気が強いところがありますから大丈夫ですよ! それにこういう状況になってわかりますが、やはり女性の方が精神的にタフな面もありますからね」
俺の問いに彼は朗らかに笑いながら答えた。確かにペトラも今はゴブリン達やムスメ達と和やかに話をしている。いい光景だ。
「それならよかったです。精神が参っていると体もついてきませんしね。ただあの頭を一人で持ってくるとはペトラさんも力があるんですね」
「ハハハ! 力があるのはオークの特徴のようなものですしね。それにペトラで力があるといったらパメラはバケモノのようになりますな! それはもうトロルやサイクロプスですよ!」
ペイトンが笑い混じりにそう言うと、彼の後ろから気配と声がする。
「ふふふ、バケモノね。そう、そういう風に思っていたのね」
にこやかに微笑むパメラ。
恐怖からか、後ろを見ようともしないペイトンには悪いが……、ここに居続けるのは無粋だろう。決してリア充爆発しろの精神から来るものではないのだ。
決して!!
スッと立ち上がり、ペイトンに深々と頭を下げ、回れ右をして。
「ま、まって……! いかないで……!」という縋るような声を聞こえないものとし。俺は魔王達の元へ歩き出した。
ありがとうペイトン。さようならペイトン。
しかしそうかぁ、パメラも力があるみたいだし、人数が増えても最弱なのか俺。やはり腕力だけ見ても、人間と魔族では大きく違っているなと実感する。ゴブリン達が俺の後ろを指さし、少し震えているが、気にしないことにして。
「戦闘も少し習っておいた方がいいんだろうなぁ」
後ろからの叫び声が途絶えた。
さようならペイトン。




