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オズの人形師  作者: 夕見人
4/12

AIエリカの証言


 まず、機密事項として船体コード、航行ルート、所属星に関しては秘匿義務があります。ブラックボックスの記録も音声のみとし、内容に関しても一部伏せさせていただきます。ご了承ください。


 本船、試験船シンシア号は最新式アルクビエレ・ドライブのプロトタイプ試験船として製作されました。

 AIは宇宙船汎用型R21モデルシリーズ、搭載時にエリカと名づけられています。

 乗組員は以下の4名です。船長兼メカニックのジョナサン・キーン、通信士マリア・エリア、エンジニアのリーナ・アドロヴァ、医師ミハイル・アドロフです。

 船には他に医療補助ロボットが2体、生活補助ロボットが2体、救難艇が1機搭載されています。


 シンシア号は該当区域において、アルクビエレ・ドライブの長距離高速運用の耐久試験を行う予定でした。

 該当区域まで所属星系から約5千光年あり、そこまではアルクビエレ・ドライブと亜光速航行を繰り返し、試験を行った後、また同様の方法で戻る計画です。


 乗組員はバディを組み、二交代性で船の運航の任にあたりました。

 組み合わせは船長ジョナサンとマリア、リーナとミハイルです。

 往路は何の問題もなく、シンシア号は予定通り325時間後、該当地域に到達しました。到達後24時間おいて、乗組員4名全員がブリッジの操舵席に座った状態で試験は開始されました。その際、マリアが所属星に通信を行っております。


『こちらコード――シンシア号。通信アクティブです』

『こちら――コントロール。通信アクティブ』

『これより500秒後――型アルクビエレ・ドライブの耐久試験を行います』

『了解。成功を祈る』


 通信は超光速タキオン通信が用いられていました。往復伝搬時間は約300秒です。

 以下はブラックボックスに記録された通信後のブリッジの会話です。


…………

『これより――型アルクビエレ・ドライブの長距離高速運用、耐久試験を行う。エリカ、ドライブ発動まで30カウントを開始』

『30からカウントを開始します』

『終着予定地、通信準備完了』

『A1からK3、オールグリーン。ドライブ発動準備』

『発動準備完了』

『20』

『インフレ、クランチ傾向ともに確認。AからGまでインコントロール』

『重力計・時間計のシフト確認。ともに基準値です』

『エリカ、HからKを10カウントからアクティブ』

『10、HからKアクティブ。……5……、4……、3……、2……、1、ドライブを発動します』


『……――よし、うまく乗ったな』

『速度1000万Cで安定しています』

『あー、やれやれ。これからまた二交代制か?』

『ああ。そうだな。リーナとミハイルは先に休んでくれ。ただ、後1時間は念のため眠らないように』

『OK、リーナ食事にしよう』

『うん。ジョー、マリア、がんばってね』

『ふふ、異常があればエリカが知らせてくれるから、ここにいるだけですよ』

『マリア』

『冗談ですよ、船長』

 …………


 リーナとミハイルはここでブリッジから退出します。

 ジョナサンとマリアは残ってデータの集積を行いました。歪曲面に想定以上の値が検出されましたが、航行に異常は見られなかったため、試験は継続されました。途中、リーナとミハイルが二人と交代し、その際、歪曲面の値に関しては情報が共有されました。


 問題が発生したのは試験開始42時間後のことです。

 その時リーナとミハイルが2回目の任に就いていました。私のCPU稼働率が急増し、同時にインフレとクランチの出力バランスが急激に崩れたため、ドライブ航行は自動キャンセル、私は稼働を停止しました。

 通常、AIは船が慣性航行中でなければ稼働停止にならないように設定されていますが、ドライブ航行は船が存在するバルブ時空が移動するので、バルブ時空内で船速は0となっていました。しかしその直後、異常な時空歪曲の余波はバルブ時空にも歪みが生じさせ、シンシア号は急激な加速度変化に見舞われます。

 慣性相殺はかろうじて働いたものの、シェイカーの中身のように振り回され、結果、亜光速で宇宙空間に投げ出されました。


 その時の姿勢制御と座標把握が負担となり、私の代わりに作動したばかりのサブシステムも一時ダウン、再起動まで最低限の船内環境維持とブラックボックス以外、他の制御系統に関しては手動操作が余儀なくされました。


 この後、数日間の記録はサブシステムに蓄積されましたが、現在は同期済みです。

 事故直後のブラックボックスの音声です。


 …………

『警告。CPU稼働率が規定値を超えました』

『え……?』

『異常検知。ドライブを自動キャンセル』

『速度0C、エンジン出力0%。AIに異常が発生したため、サブシステムに移行します』

『リーナっ、2人にコールかけろ』

『もうやってる! ジョー、マリア、早く出て……』

『サブシステムが正常に……』

『っ、リーナ! 耐ショック! 捕まれ!』

『きゃ、っ、』

『リーナ! ぐっ』

『……ぁ』

『う、ぅ』

 プ、ヒューン……

 …………

 ……


『……サブシステムが再起動しました。自動操舵の作動を確認……インアクティブ。手動操縦に移行します』

『ミハイル! リーナ! 何が……』

『あ、ああっ、リーナ、リーナ! しっかりして!』

『エリカが落ちたのか! ちっ、自動操舵も全部だめか! マリア、通信!』

『ぁ、は、はいっ!』

『はぁ、は……。……サブシステム、エリカの再起動は』

『利用できません』

『手動でただちに減速する。慣性相殺の稼働率から許容加速度を算出。宙図を表示しろ。減速にかかる時間もだ』

『現在、慣性航行中。……減速を確認。停止するのに1020分かかります』

『脱出可能速度までならどれぐらいだ』

『適正速度までおよそ420分です』

『通信アクティブ! こちらコード――応答願います。現在、座標――から進路座標――に向けて航行中。AI非常停止。サブシステムが起動しています。自動操舵はインアクティブ。現在手動で制御。速度0.88C、慣性相殺の稼働率は24%、エンジン出力は22%。応答願います』

『マリア、マイクを繋いでくれ。代わりに2人を。こちらコード――。船長のジョナサン・キーン。現在舵制御の稼働率が40%から徐々に下がっている。座標――から進路座標――へ減速を行いながら航行中。繰り返す。こちらコード――。AIが非常停止。サブシステムは起動。自動操舵はインアクティブ。速度は0.88C、減速しながら進路座標――へ航行中。慣性相殺の稼働率24%、エンジン出力は22%、舵制御は40%。徐々に減少。繰り返す……』

『ミハイル! 起きてミハイル! リーナが!』

『う、ぐ、……マ、リアか』

『ミハイル! リーナの意識がないの。何が必要? 救急バッグはここに……』

『警告。進路上に――が存在します』

『わかっている。コード――、現在速度0.87C。進路上に恒星――。限界宙域までおよそ200分』

『こちら――コントロール。通信アクティブ。現状の報告を願う』

『マリア、繋がった。ミハイル、医務室は最低限動いている。D1、D2を呼んだ。リーナと一緒に医務室へ』

『あ、ああ……』

『マリア、通信速度は?』

『最速です。亜光速航行中なので、船内時間で往復伝搬に約70秒かかります』

『情報を送り続けろ。進路座標、速度、エンジン、舵、慣性相殺の稼働率だ。サブシステムじゃ複雑な演算まではできない。向こうで計算させるしかない』

『わかりました。救難艇はどうです?』

『あっちはエンジン出力が低いし、その分AIの処理が劣る。脱出するにしてももう少し速度が落ちないと危険だ』

『こちら――コントロール。現状は把握した。AIの非常停止の原因はわかるか? AIが復旧すれば稼働率は戻るはずだ』

『こちらコード――。AIの非常停止について、原因は不明です。エンジニアのリーア・アドロヴァは負傷のため、離脱。医師ミハイル・アドロフも自身の負傷と治療のため、離脱しています。復旧は難しいと考えます』

『マリア。このままだと――に突っ込む。ちょうどいい位置にガス惑星があるから重力アシストで公転軌道……、いや、多分飛び出すな……、重力アシストとエアロキャプチャだ。それで減速し進路を変えて、一つ奥の――の周回軌道に入れないか。もう少ししたらおそらく舵が効かなくなる。減速するまで飛び続けるのは無茶だ』

『わかりました。こちらコード――。惑星――について、重力アシストとエアロキャプチャによる減速、進路変更及び、惑星――の周回軌道へ投入することを提案します……』

 …………



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