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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界召喚する際は、事前にご連絡願います

僕の愛しい妹 ~異世界召喚する際は、事前にご連絡願います 番外編~

作者: 大福 苺

短編「異世界召喚する際は~」の番外編です。

重度のシスコンである柊要視点で語っています。

1、2、3を読んだ後にこちらを読むとわかりやすいかと。

誤字脱字あると思いますが、文章・表現などとくに気にせず、

軽く読んでいただけるとありがたいです。

◇◇◇◇◇◇


 柊要 5歳

 妹が大好きな幼稚園児




「うえーん!」

「まこと、そんなにないてどうしたの?」

「おにいちゃん!かけるくんがわたしのうさちゃんとったの~!」

「まことがいつもだいじにだいている、あのうさぎのぬいぐるみ?」

「うん。いやだっていったのに、ほしいっていってもっていっちゃったの。え~ん」

「ほら、なかないで。ぼくがとりかえしてくるから」

「ほんと?」

「ああ。だから、まことはおとなしくここでまってるんだぞ」

「うん!」




「おい。いもうとのぬいぐるみをかえせ!」

「あ!か、かなめくん…」

「どうせ、いもうとのことがすきだからこんなことしたんだろう?」

「う、うん…」

「いもうとはおまえのことなんかすきじゃない。だからあきらめろ」

「ううっ…ぐすっ…」

「ちっ。これはかえしてもらうぞ。とっととあっちにいけ!」

「うえ~ん!ごめんなさ~い!」




「ほら、まこと。とりかえしてきたぞ」

「わあ!おにいちゃんありがとう!」

「もしまただれかになにかされたら、ぼくにいうんだぞ」

「うん!おにいちゃんだいすき!」

「ふふ。ぼくもまことがだいすきだよ」



 僕は、幼い頃から妹が可愛くてしかたなかった。

 大きくなったら真琴と結婚する、と僕が言うと、「うん!わたしおにいちゃんとけっこんする!」と言って、にこにこしていた。まあ、妹は意味を分かっていなかったと思うけど。

 でもその時の僕は、妹と結婚できると本気で思っていた。


 そんな僕達を見て父さんと母さんは、あなた達は本当に仲がいいわねと言って、微笑んでいた。


 その両親の微笑みが怪訝な顔に変わったのは、いつの頃からだろう。



◇◇◇◇◇◇


 要 10歳

 妹を好きすぎてキス魔になった小学生




「要くんって、モテるよね。誰か好きな子いるの?」

「いるよ」

「え…うそ!だれだれ?」

「真琴」

「…それ妹でしょ?」

「そうだよ?僕は妹の真琴が大好き」

「そうじゃなくてさ、うちの学校の女子で好きな子だよ」

「だから、真琴が好きなんだって」


 仲のいい友達は、妹が一番好きだなんて言わない方がいいよと言って、残念なものを見るような顔をする。どうしてだろう。あんなに優しくて可愛らしい女の子、他にいないのに。


 僕は毎日、妹と一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、一緒に遊んで、一緒に登下校する。妹の声も顔も体も、すべてが好きだ。妹がいなくなったら、寂しくて死んでしまうと思う。

 最近は好きすぎて、手を繋ぐだけでは物足りずチュウをいっぱいするようになった。妹はくすぐったそうに首を竦めながら聞いてくる。


「どうしてお兄ちゃんは私にチュウばかりするの?」

「真琴の事が大好きだからだよ」


 僕は妹の体をぎゅっと抱きしめながら答える。

 妹は恥ずかしそうにうつむいてモジモジしている。


 ああ、なんて可愛いんだろう。


「でも、あけみちゃんのお兄ちゃんは、あけみちゃんにこんなことしないよ?」


 友達の兄妹の事を例え、僕の行為を疑問に思っているようだ。

 僕は素知らぬ顔をして、これは僕たち兄妹の愛情表現だからいいんだよと言って妹を丸め込む。


「そういうものなの?」

「そういうものなんだよ」


 僕は妹の頭を撫でながら、にっこりと笑った。


 外でも家でも妹にチュウをしていたら、父さんと母さんがちょっと焦ったように僕たちの間に割って入ってくるようになった。



◇◇◇◇◇◇


 要 14歳

 愛する妹を束縛したい中学生




 中学生になると、妹は可愛いというより美しい少女へと成長した。

 そして僕は、妹を一人の女の子として愛するようになっていた。


 妹に近づく、鼻息荒い異性に目覚めた男子たちを肉体的に痛めつけて撃退し、妹で妄想しようとするバカな男子を精神的に追い詰め破滅させる。

 妹には指一本触れさせない。妹を抱きしめるのも手を繋ぐのもキスをするのも僕だけだ。


 最近妹が細マッチョ好きなのを知って、体も鍛えた。背も中学に入ってから10センチも伸びて今は170だ。まだまだ伸びるはず。同級生の女子だけではなく、上級生と下級生の女子からも僕はモテるので、顔は悪くないと思う。


 妹を守りたい。妹にカッコいいと思われたい。僕のことをもっともっと好きになってほしい。そして、一人の男として愛してほしい。



「要先輩こんにちは!」

「こんにちは。真琴はいるかな?」

「あ、はい。柊さん、お兄さんが来てるよ」

「真琴、一緒に帰ろう」

「あ、お兄ちゃん」



 放課後用事がないときは、妹の学年のクラスへ迎えに行く。以前、妹が友達と二人で下校した時に、同じ学年の男子に告白されたという出来事があり、僕は警戒してなるべく一緒に帰るようにしている。


 校内を二人で歩いていると、男子共がチラチラと妹のことを盗み見してくる。僕が妹に気付かれないように奴らを牽制すると、みんな顔を青くさせなながら立ち去っていく。


 ああ。妹のことを二度と見られないように、その目をくり抜いてやりたい。


 そう思う僕は異常だろうか?

 でも妹の全てを僕だけのものにしたい。僕の全ては妹のものなんだから。


 中学生になってから、妹は僕と一緒にお風呂に入ってくれなくなった。妹の成長が生で見られなくなったことに、僕はひどく落ち込んだ。


 でも、悲しそうな顔で一緒に寝てほしいと言うと、優しい妹は苦笑しながらも応えてくれる。生で見ることはできないけれど、ベッドの中で妹の体を抱きしめて成長具合を確かめることはできた。


 ああ。妹に触れることが出来て僕はとても幸せだ。


 この頃の両親は、僕が妹と一緒に寝ることにひどく反対するようになっていた。



◇◇◇◇◇◇


 要 16歳

 妹を溺愛し過ぎて暴走する高校生




 妹が美少女過ぎて困る。


 俺が高校生になって、妹はまだ中学生。学校内で守ることが出来なくなり、今中学校では妹に告白する男どもが急増しているらしい。これは妹の友達のえつこちゃんからの情報だ。

 彼女は、俺が卒業してから妹のことを心配して見守ってくれている、とてもいい子だ。ただ、妹が腐のほうに興味を抱きだした元凶でもあるのだが。


 妹はまだ恋というものに関心がないようなことを言っていたが、いつそう思える男が現れてもおかしくはないほど、美少女に成長してしまった。いろんな男が近寄り、妹の視界に入るのだ。俺は内心穏やかではなかった。


 他の男に取られるくらいなら、いっそのこと俺が…。


 家の中で上半身裸で過ごしていると、妹が俺の鍛えた体をじっと見つめてくることがある。艶めかしい瞳でうっとりと、頬をピンク色に上気させて。俺はそんな妹を部屋に閉じ込め、思う存分抱きしめてキスしたい!という衝動に駆られる。


 子供だった頃とは違い、血の繋がった兄妹だということを頭の中ではちゃんと理解しているのだが、どうしても一人の女の子としか見ることが出来なくて、心と体は正直に反応してしまう。


 初手繋ぎも、初キス(唇以外)も、初恋も、初……も、俺の“初めて”はいつも妹だ。だから、妹の“初めて”も俺でありたい。


 ああ。こんなことを悶々と考えていると、俺の体は熱くなって…


 高校生だからね。いろいろとやばい感じになるのは仕方がない。妹を想像してもたげるとかさ。




「真琴。今日池袋に行くんだけど、買い物に付き合ってよ」

「いいよ。私も欲しいものあったんだ」

「なに?」

「えへへ。秘密~」


 妹の“秘密”はたいてい腐的なものだ。

 隠しているつもりでも、俺には妹のことは何でもわかる。知らないことはないと言い切れるほど、調べつくしているつもりだ。

 そうとは知らずに頬を染めてはにかむ妹を、とても愛おしく思う。


「準備できたら教えて」

「うん」


 そう言って、自分の部屋に向かう妹。

 俺はリビングで支度が終わるのを待つ。


「お待たせ」

「ああ。とても可愛いね、その服。真琴によく似合ってるよ」

「ほんと?ありがとう!」

「じゃ、行こうか」

「うん!」


 俺は妹と手を繋いで外を歩く。まるで恋人のように、指を絡ませながら。妹はそうゆうことに無頓着というか、俺がすることはもう当たり前のことだと思っているのか、特に嫌がったりはしない。だから俺は増々調子にのってしたい放題なんだけどね。


 俺たち兄妹は、顔が似ていない。俺は母さんのお兄さん(伯父さん)の若いころによく似ていると言われる。妹は、父さんと母さんのいいところを受け継いだ感じだ。だから他人から見ると、本当に恋人同士のように見えるらしい。何度か間違えられたこともあるが、もちろん俺は訂正しない。


 だって、俺にとって妹は恋人なのだから。



 目的の店を見つけて、妹が早く早くとぐいぐい俺の手を引っ張りながら歩いて行く。お目当てはコミックらしい。表紙には三人のスーツ姿の男が抱きしめ合っている絵が描かれている。タイトルには「獣」という文字が入っていた。おそらく内容はくんずほぐれつな状態になっていることだろう。


 商品の周りには女の子がいっぱい集まっていた。それでも、妹の手を放したくないので、一緒にその輪の中に入っていく。

 みんな一瞬ギョッとした顔をするが、妹が興奮して物色しているのを見て、今度は生暖かい眼差しを向けてきた。きっと彼女たちの中で俺は“可愛いけど腐女子な彼女の彼氏”という設定になっていると思う。

 心なしか同情されている気がするし。


 妹がレジに会計しにいくと言うので、俺は、買い物に付き合ってくれたお礼と称し買ってあげた。レジの店員は、本と俺を交互に見て顔を赤くしていたが、妹は瞳を潤ませながら、ありがとうお兄ちゃん!と言って上目遣いに俺のことを見つめてきた。


 そんな愛らしい表情を見て、小さなぷるんとした唇にキスしたくなったが、なんとか耐えた。俺の心臓に悪いから(というか理性が飛ぶので)、外でその表情をするのはやめてほしい。


 でも、いつかは本当に奪う予定だけど。


 その後俺の買い物を済ませ、お昼はカフェでゆっくりし、また妹の好きなものを見て回り、少し疲れたら甘いものを食べに行く。その日は、妹と楽しいデートをして過ごしたのだった。


 ああ、でも。今度は二人で外泊デートをしたいなぁ。




 夏休みに入った。

 今年は妹が高校受験生なので、家族で海外旅行する予定はない。俺は家で妹の勉強を見ながら、二人きりで過ごす時間を堪能していた。妹は家ではとくに無防備なので、いろいろとうまい言い訳をつけては、俺の限界すれすれまで密着しまくる。


 勉強に集中している隣で、俺は妹の頭の匂いをかいだり、横顔をじっと見つめたり、後ろから腰を抱いたりする。抱きしめる妹の体が柔らかく、気持ちよすぎてかなりやばいのだが、止められない。


 妹と結婚出来たら、毎日もっと深く濃く繋がっていられるのに。

 こんなギリギリのところで我慢しなくても済むのに。


 最近の俺の頭の中は、どうやったら妹と一生一緒にいられるか、という考えばかりが浮かんでいる。法的・道徳的には結婚できないとされているけど、俺的には結婚したい。真琴的にはどうだろう。


「ねえ、真琴」

「なに?お兄ちゃん」

「真琴はどういう人と結婚したい?」

「は?なに急に」

「いいから。教えてよ」

「結婚…って、全然想像つかないんだけど。相手に理想は無いけど、死ぬまでに1回は結婚しておきたいかも」

「結婚願望とかないんだね」

「そうだね~。ないね」

「そっか。相手が俺みたいな男でもいい?」

「お兄ちゃんみたいなの?」

「うん。俺」

「いいと思うよ」

「ほんと?」

「うん。お兄ちゃんみたいな人だったら結婚するかも」

「そっか。真琴は俺と結婚してもいいんだね」

「いや、だから、お兄ちゃんみたいな人ね」

「真琴も俺と結婚したいのかぁ」

「ねえ、聞いてる?」


 妹も俺のことが好きで、結婚相手でもいいと思っているようだ。

 嬉しくて唇にキスしようとしたらグーで殴られたけど。


 それ以来、俺は今まで以上に妹を溺愛するようになった。隙あらば押し倒して、俺の思いを遂げたいぐらいに。



 夏休みも中盤にさしかかり、勉強の疲れを癒そうと、俺は妹をデートに誘った。もちろん、甘いものを奢ると言ってうまく誘い出したのは言うまでもない。

 カフェで妹の大好きなケーキを一緒に食べ、まったりと過ごす。


 ほとんど家から出ていなかったので、妹の肌は白いままだ。美少女だからその色白さが映えて、余計美しさを際立てている。頬が緩むのを感じながら、向に座る妹を眺める。

 おいしそうにケーキを食べる妹が可愛すぎて、軽く死ねると思った。


 俺は妹の口の端についたクリームを指で取ってやり、それを自分の舌で舐めた。妹はキョトンとしていたが、周りに座っていた女性客が「きゃっ」と言って顔を赤くしていた。

 鈍い妹も可愛すぎてやばい。


 思う存分甘いものを食べた妹は、散歩しながら帰ろうと言った。手を繋いで大きな公園の中を並んでゆっくり歩く。高校生になってまた背が伸びた俺は、自分の胸下くらいにある妹の頭にキスをして、顔を埋めて匂いをかぐ。なんかもう、これが癖になっているようで、妹の頭を見ると反射的にキスか匂いをかいでいる。

 妹は黙って俺のしたいようにさせてくれているが、度を超すと殴られるので要注意だ。


「お兄ちゃん。高校生ってどんな感じ?」

「どうした?何か悩みでもあるのか?」

「そうじゃないけど…。お兄ちゃんと違う学校に行くの、初めてだなぁと思って」

「確かに。小学校、中学校は同じ学校だったもんな」

「今まで結構お兄ちゃんに甘えてたしね」

「お前は俺に甘えて当然なんだぞ。むしろもっと甘えてほしいくらいだ」

「えへへ。ありがとう。なんかお兄ちゃんといると安心しちゃうんだよね。このままじゃいけないと思うんだけど、なかなか兄離れできなくて」

「寂しいこと言うなよ。俺は一生お前の傍にいたいんだから」

「もう。お兄ちゃんも妹離れしないとダメじゃん」

「兄離れも妹離れもしなくていいんだよ」


 内心、ひどく動揺していた。

 妹が“兄離れ”とか言い出すから。


 兄妹でいる限り、愛おしいこの幸せな時間は、そう長くは続かないのかもしれない。

 家に着くまで、俺たちは他愛もない事を話しながら寄り添って歩いた。



◇◇◇◇◇◇


 要 17歳

 妹との結婚願望が強い高校生




 妹は高校生となり、市内の学校へ通うようになった。俺は市外の学校へ通っているので、登下校の時間が合うことはない。それだけでも苦しいのに、なんと異世界へ召喚されるという出来事が起こり、妹は異世界の男どもから結婚を申し込まれる事態に陥っていた。


 妹の裸体を見られただけでも許せないのに、他の男から結婚を申し込まれるとか。滅んで欲しい。


 このままではいけないと思い、異世界から戻ってすぐ俺は妹に結婚を前提に交際を申し込んだ。結果は、予想通り惨敗だったわけだが。それでも俺は諦めなかった。

 妹のことを一番理解して、愛しているのは俺だ。異世界の住人に何がわかると言うのか。


 だが、異世界から真琴を追って、一人の男がこの世界にやってきた。元国の宰相だった男は、妹の趣味に合わせてオタクとなっていた。そして、よく一緒に出掛けるようにもなった。着々と妹の生活に入り込んでくるあいつが、俺は嫌いだ。

  確かに顔は良いし財力もある。異世界人にしてはなかなかやるとも思う。だけど、妹だけは渡すわけにはいかない。そんなのは許さない。


 一時期、本当に妹を俺の部屋に監禁しようと思ったことがある。

 無防備に俺の部屋に入ってきてパソコンを使わせてくれと言ってきた時のことだ。俺のデスクトップの壁紙はもちろん妹の画像で、それを見た妹が顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたのを見たら、思わず抱きしめて頬にキスしていた。そして、部屋に鍵をかけ二人きりになり、妹を口説きまくった。


 妹はかなり引き気味だったが、あわよくば俺の気持ちを受け止めてくれたらと思い、俺は本心をぶちまけた。そのまま流れで事を起こしそうになったのだが、ちょうど父さんが部屋のドアをノックしたせいで未然に終わったのだ。

 妹は、そんな事をされる寸前だったとは気づいていなかったようだけど。俺は不完全燃焼で、その日はよく眠れなかった。


 もしかして、父さんはわざとあのタイミングでノックしたのではないか。


 そう思いながらも、今度妹が俺の部屋に入ってきたら手加減しないことに決めた。例え妹を泣かすことになったとしても…。


 この時の俺は、結婚できないならもう既成事実を作るしかない、と追い詰められていたのかもしれない。



◇◇◇◇◇◇


 要 18歳

 妹に対する◯欲がとまらない高校生




 大学受験生となり、俺は今、猛烈にストレスをため込んでいる。

 一番の要因は、妹と接触する機会が減ったことだ。こっちは勉強漬けの毎日。妹は休みの日になると友達と出かけてしまう。家の中でもほとんど顔を合わす機会が減ってしまったのだ。


 そのせいで、妹とラブラブなことをする夢を見るようになった。結婚式だったり、夜のベッドの中だったり、一緒にお風呂に入ったり、「あ~ん」と言ってご飯を食べさせてくれたり。

 朝目が覚めるといろんな意味ですごいことになっている。毎日それを鎮めるのが大変だけど。


 この前は、いい夢見て朝から妹と顔を合わせて上機嫌になれたと思ったら、また異世界に召喚されていた。お姫様の結婚式に呼ばれたのだ。俺の機嫌が最低値に下がったのは言うまでもない。


 しかも今回は、一番危険な男が妹の前に現れた。圧倒的な存在感と威圧感で俺たちの後ろに佇み、妹へ有無を言わせぬ求婚をした男。異世界の国の皇太子だ。


 今までの野郎とは比べようもない、絶対的な凄いオーラを持っている。まさしく、王になるために生まれてきた人物に思えた。現王のおっさんの顔はもう忘れたが、こいつの顔を忘れることはないだろう。


 そんな不穏な出会いがあって、なんとか無事に元の世界へ戻ってきたら、今度はあの元宰相が妹に求婚しやがった。異世界人はみんな、結婚することしか頭にないのか。まあ、他人のことを言えた義理じゃないけどな。

 妹は異世界人たちからの求婚をすべて断った。友達として仲良くしよう、と言って。

 俺はホッとした。あいつらの中から結婚相手を選ばれたら、もう生きていけない気がする。


 しばらくすると、異世界から今度は元執事の男が、真琴を追ってこちらの世界にやって来た。しかも妹から聞いた話によると、俺と同じ大学を受験するらしい。受かったら同期になるわけか…。なんだろう。俺たち…いや、妹の周りが怪しいことになっている気がするのは気のせいだろうか。


 今年の夏休みも、家族で海外旅行をすることはなかった。俺はあいかわらず勉強漬け。妹も来年は受験生になるので、悔いのないように遊ぶらしく、友達とたくさん出かけているようだ。


 ああ。真琴不足で俺死にそう。


 でも、大学受かったらバイトで金をたくさん稼ぐ予定だ。就職と共にその貯めた金で部屋を借りて、妹と二人暮らしをする。毎日一つ屋根の下で二人きりの生活。それを考えると、頑張れそうな気がする。


 冬休みになり、受験勉強もいよいよ佳境に入った。年が明けて家族で神社へ初詣に行き、俺は合格祈願をした。妹がお守りを買ってくれて、それだけで俺は受かったも同然に思えた。



 無事大学に受かり、計画通りバイトに勤しむようになった頃。

 再び、あの忌々しい召喚が妹の身に起こった。しかも、今回はすごく嫌な予感がする。

 早く妹を連れ戻さないと、災厄な事が起こりそうで、俺は初めて怖いと思ったのだった。



◇◇◇◇◇◇


 要 19歳

 妹を皇太子に寝取られた高校生




 妹は大学受験生となり、毎日勉強漬けのようだ。

 俺は夢に向かって、バイトで金を稼ぐ毎日だ。


 勉強の邪魔をしないよう、なるべく拘束したりしないように気を付けているつもりだが、一日一回は妹を抱きしめてしまう。こればかりはどうしてもやめられない。逆に俺のほうが英気を養うことになってしまった。許せ、妹よ。


 ある夜。妹が勉強を教えてほしいと言って、俺の部屋にやって来た。妹が俺の部屋に入った場合は手加減しないと決めていたので、俺はパンツ一枚という危うい恰好だったが、なんとか妹を座らせることに成功し、勉強に集中する妹の体を堪能した。


 俺の素肌に妹の体温が伝わってくることに歓喜し、興奮したせいでもたげそうになったものを何とか抑えていたら、妹は俺の腕の中で舟をこいでいた。


 そんな妹を愛でながら、俺のベッドに運んで隣に寝転ぶ。妹の体はポカポカしていて抱き心地もいい。興奮しすぎて鼻息が荒くなり、もたげそうになったものをなんとか抑え、俺は眠りについた。

 朝起きて妹が家から姿を消したことに気が付いた時は、死ぬほど怖かった。今までは気が狂いそうになったりはしたが、怖いと思ったことはない。何か良くないことが起こりそうな予感に、俺の体は震えた。


 悪い予感は当たって、妹は異世界に召喚されていた。しかも、皇太子とベッドを共にし、朝まで一緒に過ごしたというではないか。そして気がつけば、妹と皇太子が結婚する話になっていた。


 はあ?なんでそうなった。

 俺と寝ていたはずが、皇太子に寝取られるとか。


 俺は頭を鈍器で殴られた気分だった。元の世界に戻ると、妹の部屋には皇太子の部屋に繋がる“道”というものが出来ていた。受験生の妹の負担にならないように、皇太子は夜寝る時だけこちらにやってくると言う。俺と父さんは猛反対した。母さんはすごく嬉しそうにしていたが…。


 皇太子は父さんの意見を尊重し、受験が終わるまでは一度も来なかった。妹は無事大学に受かり、ストレス発散と称して今日は友達のえつこちゃんと朝から遊びに出かけていた。なのになぜ。


「ゼル君は食べ物で何が好き?」

「私は肉が大好物です。嫌いなものはとくにありません」

「あらそうなの。じゃあ、今日は焼き肉にしましょうか」

「焼き肉とはどういった料理なのですか?」

「うん?そうねぇ、お肉と野菜を熱い鉄板の上で焼いて食べる、ってことかしら」

「なるほど。美味しそうですね」

「美味しいわよ~。うふふ」


 だからどうして皇太子(ゼル)がうちにいるのか。


「お前、何してんの」

「これは義兄上。ご機嫌いかがですか」

「誰が義兄上だ」

「妻の兄上ということは、私の義兄上になるということではありませんか」

「何が妻だ。ふざけるな」

「マコトは私の妻になります」

「まだそうとは決まってない」


 俺とゼルの間で激しく火花が散ったところへ、妹が帰宅した。


「ただいま~って、ゼル!?なんでいるの?」

「マコト。会いたかったぞ」


 そう言ってゼルは立ち上がると妹を抱きしめた。


「あらあら、まあまあ」

「母さん…。そこは親として止めるべきでは?」

「いいじゃないの、婚約者なんだから」

「いつ婚約したのさ!?」

「え?二人は将来結婚するんでしょ?」

「するわけないだろ!」

「しますよ。義兄上」

「義兄上じゃないし、真琴は渡さない」

「いいえ、必ず妃にします」


 結婚すると言い切るゼルを俺はギロリと睨み付けた。

 ゼルは俺に笑顔を見せるが目は笑っていない

 妹はオロオロと俺とゼルを交互に見ている。

 母さんは…楽しそうだ。


 こうして、俺とゼルの妹を取り合う戦いが始まったのだった。



◇◇◇◇◇◇


 要 23歳

 妹と二人暮らし?の社会人1年目




 大学を卒業して社会人となり、俺は就職を機に実家を出て、マンションの部屋を借りた。

 会社まで電車で15分、駅から徒歩5分の好立地だ。実家までは電車で1時間くらいだろうか。

 妹と二人暮らしするために金を貯め、いざ借りたはいいが肝心の妹はまだ実家から大学に通っている。


 皇太子との結婚話しはどうなったかと言うと…残念ながら継続中だ。妹はまだ結婚する気はないと言っているが、ゼルは執念深く待ち続けている。早く諦めればいいものを。


 そういう俺も、妹のことをまだ諦めてはいない。結婚はできなくても一緒に住むことはできると思っている。往生際が悪いと母さんに言われたが、妹を愛しているのだから仕方ない。

 俺の全ては真琴が居てこそ価値が上がるのだと思う。


 俺が家を出てから妹が気落ちしていると母さんから連絡をもらった。少しでも俺の事を意識してくれているのだろうか。ちょっとくらい期待してもいいのだろうか。


 この前実家に帰った時に妹に合鍵を渡し、いつでもいいから部屋においでと言った。

 そして妹はたまにこの部屋に泊まりに来てくれるようになった。

 終電を逃したとか、翌朝早いからとか、理由はなんだっていい。この部屋で俺と一緒に過ごしてくれる。それだけで俺は癒され、心が満たされる。


 今夜も妹が泊まりに来ている。

 会社から帰ると、部屋で夕食を作って待っていてくれた。おかえりなさいと笑顔で俺を出迎えてくれる妹が、新妻に見える。俺はただいまと言って妹の頬にキスをする。

 食事にするか風呂にするか問う妹に一緒に入るかと言ってからかい、食事の際は今日はこんなことがあったとか父さんと母さんは元気だとか、二人で楽しく会話をする。


 予備の布団がないのでダブルベッドで一緒に寝る。実家にいた頃を思い出し、俺は妹を抱きしめながら眠りにつく。

 そして、朝目覚めて腕の中にちゃんと妹がいることを確認してホッとする。

 手を伸ばした先に妹がいることがこんなにも幸せだなんて。



 愛しい妹。

 他の男と結婚なんかしないでくれ。

 どうか俺といつまでも一緒に…


 隣で小さな寝息をたてる妹の頬を掌で包み込み、俺は初めて唇にキスをした。



END


お読みいただきありがとうございました。


最後にちょっとだけ、要の思いを遂げることができたかな?

シスコン暴走して怖かったけど、なんだかんだで愛着湧きました。

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