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第7話~魔力~

また説明回です。

 昼食を食べ終えた俺たちは訓練場まで来ていた。


 誰もいない。どうやらおっさんは時間ぎりぎりまで粘って、遅刻ギリギリ…ではなく、遅刻する気満々のようだ。まあ、勝手な想像だが。


 俺たちの後から訓練場に入ってきたアンジェリカさんとちびっ子、もといフィンに連れられて奥のほうに行く。


「まず魔力操作の訓練を行います。暴発した場合も考えて、魔法防御能力の高い魔法射撃訓練場で行います。今日は魔力を体外に放出するところまでで終了する予定です。」


 さっきの座学ではフィンが講義を行っていたが、こっちはアンジェリカさんの担当のようだ。自己紹介の時にも魔力操作の講師を担当すると言ってたしな。その流れで魔法行使もアンジェリカさん主導でやるのだろう。個別の属性はその時々人を呼ぶとかかな。


 座学の時も講義は行わなかったのにアンジェリカさんがいたのは、医療知識を俺たちに教えるときはアンジェリカさんが教壇に立つからだろう。どっかの誰かさんのせいで今日はいるだけになっていたが。おのれおっさん。美女に迷惑をかけるとは!許すまじ。


「魔力の暴発って…。危なくないんですか?私4人の中で一番魔力が多そうで怖いんですけど…。」


「問題ありません。魔力単体ではそう大きな物理的な現象は起こりませんから。最悪を想定してもせいぜい周りの人の髪がぼさぼさになる程度です。今回は初めてなので念のため、ですね。」


 瑠璃とアンジェリカさんが話している間に件の施設に着いたようだ。


 しかし、瑠璃はあまり油断しないほうがいいぞ。確かに今の魔力程度なら全魔力を暴発させてもアンジェリカさんの言った程度のことしか起こりそうにないが、レベルが上がったらその限りではない。人が吹っ飛ぶ程度の爆発は普通に起こるぞ。いきなりの魔力増加で魔力操作を誤った結果、盛大に吹っ飛んだことがある俺が保障する。


 「では。始めます。」


 そのアンジェリカさんの言葉で始まった魔力操作訓練は難航した。当たり前だ。今まで存在さえ信じられていなかったものを操れと言われたのだから。


 だから俺は…


「え?お前らこんなこともできないの?」


 思いっきり煽ってみました。


「へー。そうなるんだ。どうやるのか僕にも教えてほしいな。」


「うむ。そもそも何をどうすればいいのか分からんからな。」


 俺の手のひらでこねくり回されて光る魔力を見て翔と神崎がそう言ってきた。ま、まあ翔は俺がそういうことできるって知ってたし?神崎は深く考えるほうじゃないし?別に思ってたリアクションと違った反応されたからって悔しいわけじゃないんだからね!


 では、気を取り直して我らが瑠璃ちゃんの反応を見てみましょう。


「わ~!きれいだね~。」


 目をキラッキラさせていましたとさ。くそっ!思ってたのと違う!


 一人悔しがっていると、肩をたたかれたので後ろを見た。そこには無表情ながらも好奇心が見え隠れするフィンと、困惑した表情のアンジェリカさんがいた。


「なんで光ってるの?」


「え?光らないの?」


 想定外のことを聞かれたので素で答えてしまった。詳しく聞いてみると、こちらでは魔力は基本的に目視できず、上級魔法などで魔力が高密度になるときに光ることもあるそうだ。


 あれ?おかしいな。確かに、魔力は目視できず感じることしかできないが、密度が高くなると光るというのは分かる。そして、今回はそんなに魔力を使ってないし圧縮もしていないので高密度でもない。でも、こう、魔力をシュンシュンさせると普通に光るぞ?これは地球の魔法を使う者たちでは常識だったんだが。


「それに、そんなに高速で魔力を移動させるのもおかしい。」


 あ、成程。そういうことね。魔力はシュンシュンさせるのがずっと当たり前だったから、なぜ魔力を高速で動かすのかはすっかり意識の外だった。


 少し話が長くなるが、元素の存在が当たり前になった現代、魔力にも元素があるのではないかと考えた魔法学者がおり、魔力の最小単位として魔力素というものが確認された。これは空気中にもごく微量に存在しており、これが集まったものが魔力だ。


 さて、地球の人間の魔術師ーー呪術師と呼ばれるーーは悪魔や天使と比べて魔力量がはるかに少ない。これをどうやって補うのかが呪術師の間では長年の命題だった。そして、現代の呪術師は空気中に微量に存在する魔力素を利用できないかと考えた。いろいろ試した結果、魔力を体外で高速に動かすと空気中の魔力素を取り込むことができると分かった。正直、空気中の魔力素はごく少量だし、高速で動かしても取り込める量はわずかで、気休め程度だが、呪術師にとっては切実な問題だったので、この知識は呪術師の間で爆発的に広がった。


 ちなみに、高速で動かした時に魔力が光るのは、空気中の魔力素が取り込まれるときに他の魔力素や元素、塵とかと衝突するときに発光するからである。


 まあ、そんな感じだったので、俺が見かけた呪術師は全員魔力を光らせており、気になった俺は詳しく調べて以上のことを知ったわけだ。


 だが、悪魔や天使はもともと魔力が高いのでそんな無駄なことはしない。だから、悪魔や天使の魔力が光った時は例外なく大魔法が来る。そこに俺は目を付けた。悪魔である俺が魔力を光らせたら、シュンシュンさせているだけでも相手が勘違いして良いフェイクになるのではないかと思ったのだ。魔力操作に長けたものは自分の魔力量を隠蔽でき、さらに幸いなことに悪魔である俺は悪魔や天使の特殊な目で魔力量が看破されるのをある程度妨害することもできたので、少ない魔力であることはバレづらい。


 結果、相手は大きな魔力を使って防御してもこっちはしょぼい魔法で攻撃し相手の魔力を無駄に消費させ、フェイクと思って防御に魔力をケチったら大魔法をぶつけるという手法でかなりの敵を屠ることができた。他の天使や悪魔が気付いて真似し始めていた時には、俺もかなりの力をつけていたという寸法である。


 要するに俺のせいで悪魔と天使の間でも、魔力を光らせるのは常識になった。


 とまあ、そんなことは言えないので、フィンやアンジェリカさんにはすまないが、適当なことを言ってうやむやにさせてもらった。翔たちには魔力量が増えるということは言ってもいいかなとは少し思ったが、これは呪術師たちの汗と涙の結晶だ。同じ前提知識は持っているのだから自分で発見してください。それに、翔たちの魔力量は多いので必要ないというのもある。


 そのあとは、フィンやアンジェリカさんの追及をのらりくらりとかわしながら、翔たちに魔力操作のコツを教えたりなんだりして過ごした。


・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・


 瑠璃がお約束で魔力を暴発させたりいろいろあったが、フィンとアンジェリカさんの訓練は無事終わり二人は帰っていき、俺たちはおっさんの訓練まで休憩になった。


「なあ。おっさんが時間通りに来るか賭けないか?」


「やめなよ。あれでもこの国では偉いんでしょ?」


 おい翔。「あれでも」とか言っちゃったらお前のおっさんへの信頼度が丸わかりだぞ。


 そうやって俺たちが適当なことを駄弁っていると…


 バアァァァァァァァァァァァン!!


 という音を立てて訓練場への扉が開かれた。


「おう!若人よ!訓練の時間だ!」

次回、おっさん登場!

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