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第6話~魔法とは~

 自己紹介を行った後、俺たちは一つの部屋に案内された。そこは教室のような場所だった。まあ教室として使うんだから当たり前だが。


 ちなみにおっさんは「また後でな」とか言ってどっか言った。王様と王子は仕事に戻るらしい。なので、今は俺たち4人とアンジェリカさんとツルペタエルフのちびっ子の6人だ。ここでまずは座学を行うらしい。午後の魔法訓練と武器を使った訓練の前に知識を入れておくらしい。


「本当なら魔法知識以外も教えることになっていたのですが、今日は時間がないので魔法概論を教えて午後の訓練に臨みたいと思います。」


 ふむ。今日は、ということは…


「明日からも同じスケジュールということですか?」


 さすが翔。俺の思考を先回りしてきた。アンジェリカさんもいきなり質問されて戸惑ってる。


「え…はい。そうですね。午前中に魔法理論や戦術理論、地理、歴史、その他の座学。午後は魔法訓練を行った後ガルスさんの訓練です。」


「へー。魔法以外にもいろいろ教えてくれるんだね。てっきり私は実践的なことだけ教えてくれるのかと思ってたけど。」


「はい。国王様からは、可能な限りこちらの世界の知識をお教えするように、と。」


 王様も俺たちのこといろいろ考えてくれてるんだな…。はっ!?感心している場合じゃない!こう、のどまで出かかってるんだが。ガルス、ガルス…。


「ガルスの訓練では何をするんだ?」


「ガルスさんの訓練では、武器の慣熟訓練以外に魔法も使った実践的な訓練も行うと言っていましたよ。」


「ガルスさんは最強の騎士って話だから僕たちが武器の慣熟訓練を受けるのはわかるけど、魔法も使った実践訓練だということは教える側も魔法使えないとダメなんじゃないかな?」


「ガルスは魔法使える。伊達に王国最強の騎士じゃない。ガルスは騎士は騎士でも魔導騎士だから。」


 翔とちびっ子の最強の騎士発言でやっと思い出した。ガルスっておっさんじゃん!!飲んだくれのおっさんのイメージが強すぎて思い出せなかっただと!?


「じゃあ講義を始める。」


 愕然とする俺をほったらかしにして講義が始まるようだ。


 俺も気持ちを切り替えて席に座る。さてさて。見せてもらおう。異世界の魔法の性能とやらを!


・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・


 異世界の魔法理論を知れるということでテンションが上がっていたが、思いのほか共通部分が多くてテンションが下がった。少しぐらい期待させてくれてもいいのに!


 息をしろ!ファンタジー!本当は詠唱は神や精霊への呼びかけ何だろう?術式を現世に顕現させるための媒体とか現実的なことを言うんじゃない!実は空を飛んだりもできるんだろう?物理的な問題が多すぎて不可能に決まってるだろ?とか言わないでくれ。異世界に来てまで物理法則にとらわれるな。もっと夢を見るんだ!


 まあ、いいんですけどね。とりあえず魔法理論の復習と行こう。


 まず、魔法というのは、ざっくり言うと「魔力を使って術式を元に奇跡を起こす」というものだ。


 ここで、術式というのは一種のプログラムのようなもので、それを記述するものが必要になる。それが詠唱だったり、魔法陣だったりするわけだ。そして、詠唱や魔法陣などは魔力を魔法に変換する役割も果たす。つまり、詠唱や魔法陣などは術式の記述媒体であるだけでなく、実行媒体でもあるわけだ。


 因みに、詠唱や魔法陣などが発動する魔法に応じて形を変えるのは、術式を形あるものに変えているためである。例を挙げるなら、x=2という式を発動したいとき、詠唱なら「エックスよ。2として顕現せよ!」とかになり、魔法陣ならx=x=...=x=2が円形を形作ったりする。魔法陣がx=2とストレートに書かないのは魔力の循環経路確保のために円形の陣の形をとらなければならないためである。


 このままでは魔法とは何でもできるものと思えるかもしれないが、実はそうでもない。魔法のざっくりとした定義の「魔力を使って」と「術式を元に」の部分が結構曲者なのだ。


 術式が大規模になればなるほど必要な魔力は大きくなるし、詠唱の長さや、魔法陣の密度・大きさも大きくなる。それに、言葉や陣の形をとらなければいけない都合上、あまりにも複雑なものは現実的ではないのだ。空を飛ぶとかは風圧軽減や大気圧の調整、酸素の供給、姿勢制御、推進など術式がかなり大規模になるため発動できないというわけである。


 とまあ、魔法とは大体こんな感じである。ではお次は地球の魔法と異世界の魔法の違いだ。


 地球の魔法は魔法陣が主流だ。一部詠唱を混ぜる場合もあるが基本的には魔法陣である。そして、分類は白魔法と黒魔法に分かれている。とは言ってもそこまで深い意味があるわけでは無く、天使が使うから白魔法、悪魔が使うから黒魔法と呼ぶというだけだ。まあ、白魔法や黒魔法の間には結構明確な線引きがあるが、天使が白魔法を使うようになったわけや、悪魔が黒魔法を使うようになったわけはまた今度ということで。


 では、異世界の魔法はどうかというと、こちらは詠唱が主流らしい。魔法陣は廃れた技術で、今はかろうじて1工程くらいは刻印可能なようだ。なんでだろうな。


 ただ、属性は多岐にわたる。基本属性の火、水、風、土、光、闇の6属性、上位属性の炎、氷、嵐、地、聖、呪の6属性、レア属性、ユニークだ。一つ一つ見ていくと、基本属性はそのまんま。上位属性は、火と風の性質をもつものが炎、火と水の性質をもつものが氷、水と風の性質をもつものが嵐、水と土の性質をもつものが地、光の癒しと浄化の性質が特化しているものが聖、闇のデバフの性質が特化しているものが呪だ。


「誠…。…たよ。」


 レア属性は特殊スキルに分類されるもので、完全に古代の魔法陣に依存したものや、血統によるもの、種族によるものなどだ。例を挙げると、古代の魔法陣によるものは、その魔法陣によって魔法を発動する今回の召喚魔法や、魔法陣によってその人のステータスに付加された実例のある雷、血統によるものはテイム、種族によるものはリッチーの死霊術などだ。


「ねえ…ば!終…よ!」


 ユニークは瑠璃の煉獄などのように、その人個人の魔法だ。これらの属性は、術式的な分類ではなく、なんとなくだそうだ。なんとなくってなんだよ。


「ねえ。終わったよ。ねえってば!誠悟!」


 俺が異世界の属性の分類に突っ込みを入れていると、座っている俺の肩を瑠璃が思いっきり揺さぶってきた。


「なんだよ。そんなに怒ってると牛乳のカルシウムが全部怒りゲージに持ってかれてますます背が伸びなくなるぞ。」


「何度も呼び掛けてるのに返事してくれない誠悟が悪いんだもん。」


 だもん、てあなた。かわいいですね。ありがとうございました。


「おっと。それは悪かったな。で、何の用だ。」


「もう講義は終わったから、食堂に行くよ。」


「分かった。了解。」


 どうやら異世界魔法の普通さに思いのほかダメージを受けていたようだ。俺の意識が現実世界に復帰したのを確認すると、翔と神崎も話しかけてくる。


「ははっ。誠悟はそういうの好きだからね。」


「確かにな。ただ、いくら自分の幻想がことごとくフィンにバッサリ切られたからって講義を聞かないのはどうかと思うぞ。午後の実技に響くかもしれん。」


「ふふふ。誠悟は昔っから子供っぽいところあるからねー。でも、これで魔法に関しては私のほうが詳しくなったのだー。」


 うりうりと肘で突っついてくる瑠璃があまりにかわいかったので、講義は真面目に聞いてたことを証明するために立て板に水を流すがごとく講義内容を反芻してやると涙目になった。そんな顔も可愛らしい。あなた今日は絶好調ですね。


 俺の先程の長大な演説(講義内容の反芻)を聞いて驚いた顔で固まっているちびっ子の横を通り過ぎて廊下に出る。どうやら話を聞いていないと思っていたのでびっくりしたらしい。


 そんなことを考えながら、神崎の先程のセリフを思い出して、ちびっ子の名前がフィンであると再認識する。頭の中でちびっ子の名前はフィン、ちびっ子の名前はフィン、と繰り返す。


 すまん。人の名前を覚えるのが苦手というわけでは無いが、印象と名前を一致させるのに少し時間がかかるタイプなんだ。許せ。


 ちなみに、金髪碧眼の巨乳美人のアンジェリカさんは速攻で覚えた模様。しょうがないね。男の子だからね。

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