プロローグ2~地球の神様~
強烈な光に目を閉じていた俺は、ゆっくりと目を開ける。ラノベやネット小説もそれなりに読んでいる上に、召喚陣の内容まで読み取っていた俺は、ある程度現状を予想していた。召喚陣の「召喚」に関する部分を思い出してみても、十中八九異世界召喚だ。
しかし、その予想は大きく外れた。周りを見回しても誰もいない、真っ白な空間だ。目の前にお姫様もいないし、狂った魔法使いや、ずらっと並んだ騎士、使い魔を求める魔法少女もいない。隣にいたはずの3人もいなくなっている。
「ここは…?」
もしかして、神界?
そう思った瞬間、目の前に光が集まった。召喚陣の下品な目の痛くなるような光ではなく、どこまでも優しい光だった。
光が収まると、そこには光があった。うん、何言ってるかわからないが、俺もわからない。なんか白く光る球?がぷかぷか浮いていた。
「ようこそ神界へ。」
どうやらあっていたようだ。俺は、機械的で中性的な、しかし優しい声を出す球体に向き合う。
「こんにちは。」
うん、挨拶は大切だ。決して、何を言えばいいかわからなくなったわけではない。それより、なぜ俺だけがここにいて、他の人はどこにいるのか知りたい。
「はい。こんにちは。藤宮 誠悟さん。私はこの地球を管理する神です。時間がないので手早く説明します。」
丁寧に挨拶を返してくれた神様は、そう言って説明を開始した。
1、今回の召喚に地球の神様もこれから行く異世界の神様も関わっていないこと。
2、世界の格はそこを治める神によって決まり、これから向かう世界の神様は地球の神様よりも格が低いこと。
3、世界間移動は高い所から低いところへは一方通行であること。
4、誠悟以外はすでに異世界に行く直前であり、誠悟だけを呼び出していて、他の人は時が止まっていること。
「ここまでで質問はありますか。」
「どうして悪魔の俺にそんなことを説明するんですか?」
悪魔は忌むべき存在で、神聖な神様が気にかける存在ではないと思うのだが。それに、この場合、説明を受けるのは翔ではないだろうか。
「私達神にとって、自分が治める世界に存在するものは全て等しく民であり、そこに優劣はありません。それに、負のエネルギーの塊である悪魔になったにも関わらず、自我を保ち、日常生活を送り続けたあなたには前から興味を持っていたのです。」
だそうだ。でも、確かに、悪魔になる人間もたまに見かけたが、全員等しく残虐な性格に変わっていた。
「説明を続けます。」
5、負のエネルギーの塊、それも最上位悪魔である誠悟が異世界に行ってしまうと、その世界の中で完結していたエネルギー保存則が破れ、最悪世界が崩壊すること。
…いきなりヤバいのがきた。これが翔ではなく俺を呼んだ理由か。当事者は俺だけだからな。って冷静に言ってる場合じゃない!
「え!それヤバくないですか!?」
「ええ。ものすごく大変なことです。人間数人分のエネルギーなら私でも対応できるのですが、あなたの分は無理です。」
「召喚を止めたりできないんですか?」
「できません。召喚はほぼ完了しており、もし召喚を止めるならば、こちらの世界からあなた方を召喚しなければなりませんが、神は世界の管理者であり、世界の法則には逆らえません。」
本当にヤバかった。俺が召喚陣に飛び込んでしまったばっかりに。ごめんよ世界。
「時間がもうないので残りはいっきに行きます。」
6、世界崩壊を止めるために誠悟を人間に戻すこと。
7、世界の都合でいきなりただの人間に戻すのはあまりにも理不尽なので、悪魔としての力を向こうの世界基準に変更すること。
「え、え!」
いきなりで戸惑う俺をよそに、今度は俺が光に包まれる。その光は召喚陣の光と同じものだった。
眩しさに目を瞑り、今度こそ俺は異世界に召喚されたのだった。