初めての戦闘
俺はルーリアと出会った場所から更に森の奥に移動していた。討伐を依頼されたは森の奥に生息しているそうだ。
俺は移動しながらルーリアと話をして情報を聞き込んでいた。
「そういえば、今から討伐する魔物ってどんなやつなの?」
「ええっと、確か角狼の群れです。角狼は一匹なら難なく倒せるんですが、群れになると格段に強くなるのでホーンウルフの群れを倒せたならFクラス卒業って言われている魔物なんですよ。」
まあ狼位なら大丈夫だろう。名前に角って付いてるから多分、犬に角が付いているような感じだろう。
「あと、角狼は危険が迫ると…」
ワオォォォォン!!
動物の遠吠えが聴こえてきた。これはおそらく角狼の声だろう。獲物でも見つけた事を仲間に知らせているのだろうか。
すると、四方の林からガサガサと草を鳴らし何匹もの狼が現れた。
「見つけた獲物って俺らの事か!」
俺は爪に力を込め、ルーリアは腰に差した剣を抜いて戦闘体制に入っていた。
現れた狼は俺が思っていた通り、狼の額に角が一本生えた姿をしている。しかし、角が思っていたよりデカイ。ほとんど狼の体と同じくらいの長さで、先端が槍の様に鋭く、捻れている。
そんな狼が四匹林から飛び出してきて、俺とルーリアを囲んでいる。
まあ、探していた相手から出てきてくれるなら好都合だ。囲まれているのは不利だが、なんとかなるだろう。
ルーリアが背を向けた状態で呟く。
「ベルアさん。少しの間、引き付けておいてくれませんか?
少し引き付けておいてくれれば、一撃で倒しますから。」
「わかった。頼むよ。」
会話を終えると、俺は《操爪》を発動させ一足飛びに前方にいるホーンウルフに近づくと、爪を横殴りに斬りつけた。しかし、完全に虚を突いたはずのホーンウルフは素早く後ろに後退し、肩を浅く斬りつけられるだけに留まった。だが効果はあったようだ。斬りつけたやつ以外の角狼も殺意の目線で俺を射抜いている。
角狼は以外に仲間意識が強い魔物なのだろうか。
「グルルルルゥ!」
俺が斬りつけた角狼が御返しとばかりに、角で俺の心臓を狙ってきた。しかし、傷で速度が鈍っていて先ほどよりも速度がない。角を右に避けて今度こそ、爪を叩きつけようとすると、今度は右にいた角狼が突撃してきた。
どうやら角狼の攻撃方法は角による突撃しかないようだ。
俺は爪を角に当てて突撃の軌道を無理矢理ずらした。進行方向は俺の目の前にいる、最初に俺が斬りつけた角狼のいる位置に。
通常時ならば避けられていただろうが、傷を負って速度が下がった状態では避けられまい。
角狼の体に角が刺さった。血が飛び散り、骨が砕ける。
よし、一匹倒した。これで四対一よりは楽になるだろう。
ちらりとルーリアの方を見てみると。
「世界に満ち満ちる精霊よ。我はルーリア、我が対価を受け取り力を示せ………」
なにやらぶつぶつとよく分からない事を唱えていた。本当にあれで角狼を倒す事が出来るのだろうか。
ぉっと危ない、戦闘中だった。
残った三匹の角狼の方を確認してみると
うわぁ、ヤバい。凄い怒ってるよ。目がすごい血走ってるもん。仲間が傷つけられただけでも激昂したのに、仲間を殺されたのだからそりゃあ、凄い怒りだろう。
「「「グラアアアアァァァ!!!」」」
三匹の角狼が地面を蹴り、一斉に突撃してきた。一匹の角は腕を狙い、もう一匹は足を狙い、最後の一匹は腹を狙っている。怒りのせいか、速度は先ほどの突撃よりも速かったが、狙いがお粗末になっている。
二匹は狙いがそれ、空を切ったが腹を狙ったやつは正確にこちらを狙っていた。こいつは迎撃しなきゃいけないが、速度が速くて爪が間に合わない。
せめて、軌道を少しでもずらす!
爪には魔力が纏われているが、更に魔力を送り、魔力でできた爪を伸ばした。俺の魔力はもう残り少ないので、あまり伸ばせなかったが、角に引っ掻けて軌道をずらす位はできるだろう。
「オォォォォォ!!」
気合いの雄叫びをあげながら、腕を出来る限り伸ばす。爪の先端が角を押して軌道を変え、角狼は俺のわき腹を削りながら、背後に通り抜けていった。
「ベルアさん!準備出来ました!!そこから離れてください!」
俺は腕と足の四足歩行になって、全速力でその場を離れた。そのままいると、角狼を一撃で倒す|何かを一緒にくらってしまう。
「『氷竜の轟』!!」
ルーリアの手から凝縮された魔力の塊が角狼らが固まっている所に向かって打ち出された。
魔力の塊が地面に着弾すると、着弾した地点から順に凍っていっている。
数秒もすると、着弾した所の周囲十数メートルと三匹の角狼が氷付けにされていた。そして、
パチンとルーリアが指を鳴らすと、
ガシャァァァン
氷が粉々に砕け、先ほどと同じ風景と息絶えた三匹の角狼の屍が地面に転がっていた。
しばらくの間、無言が続いたが、実感が追い付いたのかルーリアが、
「やったぁ!角狼の群れの討伐、達成だぁ!」