宿酔
情動と衝動が絶え間なく押し寄せる。取り留めない感情は何ら形を成さず、結局何かを作る事も出来ない。剥離した現実感と、コマ落ちしたかのような知覚では、世界の全てが不確かだ。之こそが酩酊。酒に酔うという事だ。自分を失う少し前。世は事も無しという、全肯定の時間。この先に宿酔いという悪夢が待っていようとも、アルコールは必要なのだ。全てを快とする為に。
やがて朝が訪れる。凡そ人生全ての最悪を集めたかのような不快に襲われる。全てを否定して、全ての感覚を閉じたくなる。見たくも無い悲劇を、瞼を縫い付けられ無理やり見せられる様な最悪。頭は割れそうで、体は自分である事を拒否するかの様に、今直ぐここではない何処かへ行きたいかのように居心地の悪さを主張している。之こそが宿酔、悪夢の結晶、昨夜の夢の結実だ。
二度と酒など飲むもんか、今まで何度となくした虚しい誓いを今もまた。夜は繰り返し、人生も繰り返す。酩酊も、悪夢も、宿酔いも、全てが繰り返す。