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とあるハイヤー乗務員の運命  作者: 三笠 大和
14/24

13 甥と知り合いと恩人と

この話も会話が中心です。

プロローグと合わせてお読みください。

松井夫婦はパニックになっていた。

まさか、中林さんが事故に巻き込まれるなんて、麻薬の容疑者なんて。

そして夫の俊晴は、後悔の念に苛まわれていた。


3時間ほど前の話になる。

決して人に話すことのできない出来事があった。

俊晴の携帯に電話があった。

知らない電話番号だったが、電話口は甥の俊樹からだった。俊晴と妻の麻紀、そしてもう一人の女性が同じ部屋にいた。

「伯父貴?」

「俊樹か?今取り込み中だ。後にしてくれ。」

「いや、まずいことになったんス。

ドラッグやってドリフトしてたら、ミスっちゃって、道端にいたおっさんを引いてしまって…」

「何をやってるんだ、俺は何も出来ないぞ。」

「そんな事言わないでくれよ叔父貴ぃ、揉み消すとかそういう事じゃなくてさ、なんか乗り切る方法ない?」

「お前はドラッグをやってたんだろ?まずはその反応が消えるまで、姿を消せ。」

「でも、どうやってポリの目を逸らすんだよ?」

「おいおい、警察署の副署長さんを捕まえてポリはないだろう?

まあいい、お前、まだ手元にドラッグはあるのか?」

「エクスタシーが結構あるけど…」

「お前の痕跡の無い様に指紋とかを消して、その男の指紋をつけておくんだ。そして、男のそばに放置しておけ。そうすれば、まず抗争の線を警察は疑うはずだから。」

「なるほど、わかった。所で叔父貴は今署にいるのか?」

「いや、いつものだ。」

「なんだよ、麻紀さんとトモカの調教中?よろしくやってくれよ。

でさあ、俺は?

車とかどうすればいい?」

「大きく壊れてるのか?」

「いや、助手席がちょっと凹んだ位で

人を引っ掛けた感じじゃない。」

「なら、そのままにしておけ。下手に修理に出したら足が付く。」

「ああ、そのままだね。足は付けないようにするさ。」

「他に見られたとかはないのか?」

「女を乗せていて、隣にいる。」た

「どういう関係だ?」

「こないだクラブでナンパしてついてきた女っす。」

「情はないか。それはお前に任せる。」

「わかったよ。じゃあ。なんとかするよ。じゃあな。」

全く、とんでもない甥だ。

いつも私をヒヤヒヤさせる。

ただ、今回の件は酷すぎる。

お灸を据えなくてはな。

「トモカ、今日は終わりだ。あの件は、今日またやってみろ。はい、終了。」

「はい…、ご主人様。」

トロンとした目で俊晴を智花が答える。

「終わりだと言いましたよね。ご主人ではなく…」

「わかった。未来ちゃんパパ。」

………

きっと俊樹が轢いてしまった男性は、光雄なのだろう。

私はなんてことを…


クリクリした目で未来ちゃんパパ!と慕ってくれる翼ちゃんの顔が浮かぶ。

家計が苦しく、私の趣味に身を投じた智花の顔が浮かぶ。

もし、私が冤罪で未来や美裕が友達から、いや社会から拒絶されるような事があったら、私は耐えられるのだろうか?

中林家にその状況を作ってしまったのは、紛れもなく自分なのだ。

「麻紀、中林さんの家にいく。

中林さんは絶対にそんな事をする人ではない。わかるだろう?

多分警察は夫婦揃って疑うはずだから、きっと任意同行を求めるはずだ。

まずは智花さんにアドバイスをする。

それが終わったら、変わってくれ。

翼ちゃんや碧葉ちゃんを見る人もいないはずだから、お前が面倒を頼む。

今すぐにでもできる事をしよう。」

松井家は8階、中林家は9階。

すぐにでも行ける。

お前は今は未来と美裕を頼む。

Tシャツとハーフパンツというラフな格好であったが、おっとり刀で俊晴は9階に駆けつけた。

間に合ってくれ。まだ警察に行かないでいてくれ。

俊晴は中林家の呼び鈴を鳴らす。

インターホンの対応は無く、ガチャとドアが開いた。

俊晴は対応者を見て、呆然とした。

「中林一佐……」

目の前にいたのは、自分の命の恩人である光雄の父だった。


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