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美羽の行きつけ先

「し、司郎・・・様・・・?」


俺があまりの大金に一瞬遠い目になりかけてたのを美羽が心配してこちらを覗き込んでくれた。


「あ、いや。なんでもない・・ちょっと俺も大金すぎて驚いた。」

「わ、私も実は持った事は一度もありません・・。お母様が管理していた倉庫にあったのを見たことあるくらいです。。」

「そうだよね・・・計算したら俺の元の世界でもかなりの額だからね。 あ、あとまた様づけになってたよ?」

「へ!?あ、ああ!き、気づかないで申し訳ありません!」

「あ、いやいや良いんだ、呼びやすい呼び方でいいよ。ちょっと呼ばれ方に慣れてないだけだから。本当に遠慮しないで好きに呼んでくれ。」



美羽も驚いてたせいか、俺を様で呼ばないようにしてたらしいのが戻ってしまっていたらしい。

謝られたけど別に強制したつもりはないんだけどね・・・美羽が様づけで呼びたいならそれでも構わないけども・・。


「は、はい。分かりました」

「まぁ取りあえず、行きつけのお店に行こう。」

「はい。」


美羽の案内にしたがって後をついて行った。

しばらく歩くと、シャレた洋風な感じの店前に来た。

以外と大きい建物で、建物自体にウッドデッキがあり、外で食べられるようにテーブルなんかも置いてある。


「ここが私のよく来る行きつけのお店です。」

「じゃあここで何か食べてよう」

「はい」


来る途中に面白そうな店もあったし、行きたい店はマークしといた。これで帰りに寄り道すれば時間もしばらく潰せるはずだ。

取りあえず店に入って、何か注文してから決めればいいや。

そう思いながら俺は店に入ると、中は木の作りになっており全体的に自然なイメージで明るい印象を受けた。

二人で来店すると「いらっしゃいませ~」と店員から声がかけられたが、すぐに美羽に気づいた様子で話を続けた。


「あら、美羽ちゃんいらっしゃい。 今日は何にする?」

「あ、テリーヌさん今日は・・・」


テリーヌさんと呼ばれた30代位の女性は美羽の反応に気づいて俺を見ると、なるほどといったようにうなずいた。


「美羽ちゃんの彼氏さん?カッコいい彼氏さんね~」


テリーヌさんは微笑みながらあごに手を当てて、うんうんと頷きながら俺を見てくる。

まぁ、彼氏じゃないんだけどなんだか褒められてる気分になるな。

美羽の方は顔を真っ赤にしてブンブンと頭を振って弁解しようとした。


「そ、そそそそ、そんな!滅相もありません! 司郎様はその・・///」


もう美羽も年頃の女の子だし勘違いされたら恥ずかしいか・・・。

テンパッテ何かごにょごにょ言ってるから俺が説明したほうが良さそうだ。


「どうも、このお店を紹介されて来ました」

「あら、そうなの? 勘違いしてごめんなさいね~。何か美羽ちゃんが嬉しそうな顔してたからつい彼氏さんだと思っちゃったわ。」


嬉しそうな顔。。。普段はどうなのかまだ分からないが、言われてみれば美羽の真白なふさふさ尻尾も明らかにさっきより揺れてる。これは喜んでいるのかな?

テリーヌさんがそう言うと美羽の耳がへにょんと垂れてうつむいてしまった。

湯気でもあがるんじゃなかってくらい真っ赤になってるぞ・・・。


「ふふふ、本当にごめんなさいね。 じゃあ好きな席に座って待っててね。今メニューとお水だします」


テリーヌさんは我が子を見るようなに嬉しさ半分反省半分と言った顔で俺達に言った。

悪気は無い、むしろよく美羽の事を見ているみたいでとても優しそうな人だ。

俺と美羽は言われたとおり席に向かうと、お客は一人もおらず空いている席しかなかった。

空いている事もあって少し大きめの4人用席に腰をかけると丁度そこへテリーヌさんがお冷とメニューを持ってきてくれた。


「お冷どうぞ、これがメニューよ。あなたは始めてよね? なら季節ごとに変わるオールパイはうちだけで作ってるからお勧めよ。それじゃあ注文が決まったら知らせてください」

「あ、どうも」

「テリーヌさんありがとうございます」

「はい、ごゆっくりどうぞ~」


テリーヌさんは俺にお勧めの商品を説明してくれると、礼をした後少し離れてお会計近くで待った。

美羽も渡された水を少し飲んで、さっきの熱を冷ましていた。

テリーヌさんに聞こえないよう、美羽にお客さんが少ないのに何か理由があるのか間接的に聞いてみようと思う。


「へ~なんかいい雰囲気のお店だね~。ここは場所的に良いところなのに空いているね?」

「あ、えっとですね・・いつもは夜からのレストラン営業が本店でして、昼間はこうして美味しいお菓子を食べれるお店になるんです。だから夜になると沢山人が来るんですよ。」

「なるほど、レストランか。美羽も夜に来たことあるの?」

「はい、あります。よくお母様と来ていました。ここは結構常連客が多いお店ですので、昼間は空いていてとても居心地が良いんです。」

「そういう事か、確かにゆったりとくつろげて良い場所だね」

「白椿様のお手伝いの休憩の間、毎日ここに来てテリーヌさんにはいつもお話しを聞いてもらったりしていて、本当に良いお店です」


会話の内容が聞こえていたのか、嬉しそうに話す美羽にテリーヌさんはニッコリと笑って手を振ってくれた。

どうやらテリーヌさんは良いお話相手になってくれているみたいだ。

そんなテリーヌさんに二人して軽く会釈した後、メニュー表を広げた。

俺はメニューを見ながら何を頼むか決めた。


「美味しそうなものがいっぱいあるな・・・悩むけど、俺は言われたとおりオールパイにしようかな」

「今は春の季節なのでイチゴチェリーのパイですね。テリーヌさんが手作りで作っているのでとても美味しいんですよ!」

「へ~楽しみだな。美羽は何するか決めた?」

「わ、私は・・えと・・あまり無駄遣いはできませんので同じオールパイにします。」

「無駄遣いか・・これだけあるなら少し贅沢してもいいんじゃないか?」


俺は硬貨の入ってる袋の紐を持ってぶら下げて見せると、美羽はまたもブンブンと頭をふった。


「そ、そんな。それは司郎様のお金ですから、私なんかに使ってもらってわ・・・。。」

「え?お金は沢山あるからこれで払うよ、遠慮しなくていいからね?」

「で、ですが・・・」


言葉を少し濁して申し訳無さそうな顔を美羽はした。

流石に自分で払うなんて考えは・・・真面目すぎる。。。


「大丈夫、それにもうギルドの一員だしそんなに遠慮したり俺をつねに気にかけないでいいよ」

「は、はい・・。」


俺は少し苦笑しながらメニューを閉じて、テリーヌさんを呼んだ。

オールパイを2つ、注文を頼むとすぐに奥に入っていった。

少しパイが出てくるまでの間、美羽のギルドについて聞きたいことがある。

それ次第でいいことを考えてる。


「そういえば、美羽のギルドって子供達だけなんだよね?」

「え、・・はい・・私を含めて子ども12人だけです。」

「12人か~・・美羽が頑張ってるって事は皆やっぱり小さいのか・・?」

「私の次にりんちゃんが12歳で、ほかは10歳未満です・・・。し、司郎様は子どもは苦手だったり・・しますか・・?」


美羽はものすごく不安そうに聞いてくる。

俺は子供の面倒を見るのは好きな方だ。悪い子はそりゃ嫌だけど、多分美羽のところは皆で頑張って生計を立てているはずだから、きっと皆あんまり我がまま言わない良い子達だと思う。


「いや、大丈夫だな。 人数が多いけど家事とかはどうしてるの?」

「ギルドに帰れば私がやっています。私の次に年上の鈴ちゃんが私のいない間、家事や子供達の面倒を見てくれてます。 他にも年上の子が年下の面倒を見たり、自分達でやってくれているので何とか大丈夫です。」

「なるほどね、皆しっかりしてるね。 そういえばギルドはこの連合外にあるんだよね?」

「あ・・ギルドの場所なんですが、この連合本拠より少し北の方角にあります・・。」


やっぱりか。白椿殿は「駆けつけたときには全滅していた。」と言っていたからこの町、連合内では無いと思った。

やはりこの世界ではギルドは点々と居住区として存在している感じなんだな。

あくまでもこの町はギルドの集まりだからこそ、ここまで大きくなっているんだろう。


「そうか、じゃあここと行き来するのも少し時間かかるんだな」

「はい、・・すみません・・・少し遠い場所にありまして・・。あ、ですが司郎様は白椿様のお屋敷に招待されていますので整った施設で暮らせると思います」

「普通は皆、自分達のギルドで寝泊りしたりするのか?」

「はい、ギルドは小さな集落みたいな所ですので皆そろってその場所に住む事が多いです。」

「じゃあ、俺も美羽のギルドに行こうかな。場所は平気か?」

「えっ!?・・ば、場所はあるのですが、本拠が壊れてしまっていて・・。今は仮設で立てた所に住んでいるので司郎様は白椿様の所で休まれたほうが・・・。」


美羽は申し訳ないと言う様に俺を白椿殿のお屋敷に住むよう進めてくれるが、せめて一回位はギルドを見てみたいし、子供達の面倒も見れるなら少しは見てやりたいという気持ちがある。


「ん~。まぁ、でも子供達に挨拶位はしたいし今日一日だけでも見てみて、ダメだったらまた考えればいいよ」

「す、すみません・・・。」

「謝らないでいいよ、俺のかってにだからね」

「あ、ありがとうございます。」



まだ美羽は俺に気を使っているが、なんども言うがそんなに気にしなくてもいい。

俺がギルドに入ったのも招待してもらったお礼と助けになりたいって気持ちの半分半分位だからな。


そんな話をしていると、店の奥からテリーヌさんがパイを二つとジュースを持ってきた。





















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