メール、そして異世界
学校に連絡を入れることを一瞬忘れ、
俺は届いたメールを開いて見る事にした。
「誰からだ? しろ・・つばき? 白椿?」
その宛名には白椿と人の名前みたいなのが確かに書かれている。
誰?迷惑メールかなんか?
と俺は最初思ったが、内容を少しチラ見して驚愕した。
文章の冒頭には一言でこう書かれていた。
『お主、その人の子にあらず異能の力、使ってみんか?』
俺は一瞬固まってしまった。
俺の力を誰かに知られた?そんなはずわない。でも、メールアドレスまでどこで・・
そんな思考が一瞬で頭を駆け巡り、急いでメールの中身を最後まで確認した。
『この話を信じるかどうかはお主次第だが、私はお前を知っている。その人にあらぬ力を持つ事を。
しかし、お主はどうやらその力を使っておらぬように伺える。
もし訳あってお主がその力をそちらの世界で使えぬなら提案があるのだ。
これまた信じるかはお主次第だが、私はお主が住む世界とは別の世界からこの話を持ちかけておるのだ。
異世界とでも言うのだろうか?普通は交わる事のない別の世界だ。
私の世界では面白い力を持つものが多く、他の世界から来たものも沢山いる。
そんな世界にお主も来てはみぬか?という提案だ。 決して無理強いはしない。
ただ、そのお主の力はとてつもない力を秘めている。
それがこちらの世界ではとても有利になる。
こちらに遊びに来るだけでもよい、よければその力をこちらで存分に発揮してはみぬか?
つまらなければいつでも帰ればよい。帰還の保障は私が必ずする。
そして、これは私の頼みだが、もし遊びついでに人助けしてもいいと言うのなら、その力でちと人助けをしてもらいたい。お主の力を見込んで頼みたい。
この全てはあくまで提案だ、遊びに来るだけでも良い。お主のしたいように決めておくれ。』
そんな内容だ。
俺は自分が気がつくまで開いた口がしばらく塞がらなかった。
これはただの迷惑メールじゃない気がするんだが?
そう思わずにはいられない。
理由は第一に俺の力を知っていること、
第二に俺が変な力がある位だ、こんな事が起っても不思議じゃないという事。
これを踏まえると本当の可能性が高い。
そう思った瞬間、俺は心臓の鼓動が強くなるのを感じた。
遊びに来るだけでもOK? しかも俺の力で人助けができるんだろ?
それに、この力も存分に使っていいのか?
最近の生活に暇を持て余し、力を持て余す俺にとっては興味をとってもそそられる話でしかない。
「おいおい、・・・まじかよ。こんな事ってあるのかよ。」
驚き半分、嬉しさ半分と言った気持ちでおれはメールに対して一人で呟いた。
だが、もうやる事など決まっている。
返答はYESしかない。
どうせおれの住んでるこの世界なんかじゃ力を使うことも無い。だったらついでに向こう側に移住する可能性も考えて視察しに行きたい!俺みたいな力の持ち主がいっぱいいるらしいし、それどころか俺は力は結構強い的な発言も見られる。これは行く価値はあると思うぞ!
「よし、早速返信するか!」
手短だが、いつでも帰ってこれるなら今すぐにでも行くと返信した。
その次の瞬間だ、すぐにメールが帰ってきた。
内容は間接的に話すが、 これからお主をこちらに呼び出す、その際に使いのものを出すからそいつに案内してもらってくれ。との事、そして、文の最後にあった
『四季の世界へこられますか?』
という所をクリックした。
そこで俺の視界は一瞬真っ暗になった。
――――
「ん?どうやら行きなりついたみたいだな。」
俺の目の前には荒野が広がっていた。
どうやら異世界、、、四季の世界?に繋がったらしい。
まさか本当に異世界に来るとわ・・・。靴も履いてなかったのに服装も靴もなぜか外に行く格好になってる。他には・・・無いか。ケータイもサイフもほかには持ち物なしか。まぁいいや。
この場合、本当ならあからさまに驚くのが当たり前なんだろうが、あまりにもテンプレすぎるし、実際に行きなり場面が変わるとビックリして言葉がでない・・。
取りあえず何か無いかあたりを見回すと一面岩だらけの荒野の場所に立っていた。
少し向こうに町と思われる外壁が見えるので、あそこまで行くのだろうと考えていると、うしろから声をかけられた。
「あ、あの・・・貴方様が別世界よりこられたお方ですか?」
「ん?」
俺は声のした方を振り向くと、そこには俺より頭1つ半位小さい女の子がいた。
見たところ13~15歳位かな?
そんなことより年齢とか話しかけられたとかより、その女の子の外見に俺は少し見入ってしまった。
髪の毛の色は真っ白で肩まで伸びている。だが、頭の上に耳がある。。。多分お尻のとこに尻尾もある。。揺れてるのが見えるし。
なんか犬っぽい感じ。人間・・・でわないのか?
まぁ、でもここは異世界、どんな人がいても、どんな化け物がいようとも不思議じゃない。
もしかしたらドラゴンとかゾンビとかもいそうだしな。
で、そんな事よりもだ。 この女の子が使いの人かな?
「その、白椿様のギルドへ道案内をするように言われたのですが・・・。」
すこしモジモジしながら俺に確認を取ってきた。
どうやらあってるらしい。
しかも何故かこんな歩きづらい荒野で着物ぽいものを着ているが・・もしかして俺のおもてなしのためとか?なわけないか・・・。
「ああ、話は聞いてるよ。君が道案内してくれるんだね?」
そう言うと俺が来客だと分かり、はい!と頷いて「こちらです」と言って町の方へと案内してくれた。
道案内にしたがって荒野を少し歩いていると、女の子はどう俺に話しかけたらいいのか分からないみたいで、きまずそうにしている。
ここは俺から話かけるべきか?
「あ、そういえば、着物きているけど歩きづらくない?大丈夫か?」
俺が気になったことを聞いてみると、あ・・と口を開いて説明してくれた。
「あ・・その・・お迎えをするのにいつも私が着ている服だと失礼になるかもしれないので・・・白椿様がお貸しくださいました・・。」
「そうか。別に変な意味は無いけどその着物似合ってるね」
やっぱりかと俺は思いつつ、お世辞では無く、かなり似合っていて可愛いので褒め言葉を行った。
俺が笑いながら言うと、「あ、ありがとうございます」と言って顔が赤くなるのが見えた。
俺・・・なにしてんだろ。逆になんだかきまずくしたキガスル。。。。
初対面でいきなり言うとかもはやナンパレベル。
そんな事を思いつつも荒野を歩いていると、向こうから人影が3、4人くるのが見えた。
近づいてくる人影を見ると、女の子は行きなり俺の方を振り向き、
「あ・・・、嘘・・そ、そんな・・。す、少し下がっていてください。」
と告げて、慌てだして何やら警戒態勢を取った。