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短編小説シリーズ

Future Drop

作者: ex.MONSU

夜中に僕は見てしまう。いや。見つけてしまったのだ。誰が予測しただろうか。家の前に女の子が倒れているのだ。しかもこんな真夜中に。その女の子の髪の毛は腰ぐらいまであるのだろうか、結構な量の毛が地面に着いているのに、汚れてもいない。

「な……なんで女の子がいるんですか。僕は何かしましたか。神様」疑問だ。僕はこんな夜中に遊びに来る友人なんて残念ながら持ち合わせていない。


温厚な性格(自称)の僕は、とりあえず女の子を家へ運ぶ事にした。勿論変なことは考えていない。



「ふぅ...。疲れた...。」会社勤めで疲れているせいからか、女の子1人がやけに重たく感じられたが、取り敢えずは何とかなった。

「さて、どうしよう……。」僕は迷っていた。警察に「迷子です。」と言ってみるか、このまま一晩泊めるか。警察に言ったところで、今の世の中変な奴に思われて捕まる可能性があるか……。結局一晩泊めるしか選択肢はなかった。

「はぁ……どうして僕がこんな目に。」

「私の名前は、G-INKO(ジー‐アイエヌケーオー)です。」

「呼びにくい名前だな……って、え、ええ!?何?喋った?……まぁ人間だから当然ですよね。」

さっきまでいきなり寝ていた女の子がいきなり喋りだした。こんな時、普通の人なら、「起きた!?」ぐらいのリアクションをしただろう。あれだけぐったりしていた人間が、目を覚まして直ぐにてきぱきと話始めるのだから。しかし、思ってたより僕は冷静だった。アニメの見すぎだろうか。

しかし呼びにくいなG-INKOなんて、まるでロボットだよね。こんなスゴいロボットなんていたとしてもテレビで観た某有名猫型ロボットとかぐらいだよ。……ター○ネー○ーとかとおんなじ感じ?まぁ、ロボットとかでは無く、外国の人かな。取り敢えず疑問に答えてもらう事にした。

「ロ、ロボットみたいな名前ですね。」

「はい。私はロボットですので。」

「人間ですよね?」

「ロボットです。」

「人間ですよね?(汗)」

「ロボットですので。」

「人間ですよね!?(汗)(汗)」

「Robotです。」「わかりました…。ロボットですね。でも一体何で僕の家の前に?(何でいきなりネイティブ入った……?)」G-INKOは、きちんと座り直し、「さぁ?」と答えた。

「さぁ?……じゃあないですよ!……!」



G-INKOの髪の毛は、僕の予想通り長かったし、瑠璃色で艶やかな髪だ。僕はその髪を食い入るように見ていた。ただただ見ていた。その視線をG-INKOは見過ごさなかった。

「あなた。何を見ているのですか?」

「髪の毛を……見てました。」

「作り物ですが。見ても楽しくないですよ。」

「はぁ。話は変わるんですが、ロボットという証拠を見せてもらえたりしませんかね?(変えすぎか?)」「良いですよ。では、固くて要らないものを持ってきて下さい。本当に要らないものですよ。」

G-INKOの要求に僕は答えるしかなかった。彼女が本当にロボットという事を理解するためには。

「わかりました。探してきます。」

僕は少し慌てながら部屋を出た。

「探す。……っとは言ったものの……さて、どうしよう?」

僕は、いつの間にか腕を組んで考えてしまっていた。

「……!あれがあった。ブラウン管テレビが。あれは、物置に……ってあれは、G-INKOの後ろじゃないか。あの棚には……僕のコレクションがぁぁ……(G-INKOには見せれないぞ……)」

とりあえず部屋に戻ることにした。

「ありましたか。」「あるには、ある。」

「では、出して下さい。ロボットという証拠をお見せしますから。」

「じゃあ、出すから、もう少し寝ててください。(汗)時間が掛かりそうだから。」

「分かりました。ありましたら、起こしてください。」

「あ。うん。」

そう言ってG-INKOは眠りについた。

「ふぅ……なんとか寝てくれた。……っとこんなこと思ってる間に、ブラウン管テレビ出さないと。」

僕はG-INKOが起きないかどうか心配しながらも、テレビを出すことに成功した。

「お、おーい。G-INKOさん?」肩を擦ってみた。

「はい。なんでしょう。」

「テレビなんだけど、これでいいかな?……というか起きてた?」「十分です。私はロボットなので、すぐ起き、すぐ寝れますからお気にせず」

「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ、テレビを壊して見せてよ。」

僕は半信半疑のまま、テレビを壊させることにした。思い出詰まってたんだけどね。壊させるしかないじゃん。

「分かりました。」

G-INKOは返答すると、手をテレビに向け始めた。

「breakに移行します。」

そう言い放つと、奇妙な音と共に指の先からハンマーのような物が出てきた。

「breakします。」

「避けといた方がいいの?」

軽快に言った。が、汗が止まらなかった。指先からハンマーのような物が出てきた時点でもうロボットだと言うことはわかったのだから。汗が止まるハズも無い。汗が止まるハズも無い。もしかしたら殺されるんじゃないかと言う恐怖すら感じたのだから。

「避けないでよろしいかと。」

そう言い放ち、腕を上に挙げた。

「モードチェンジ」

ハンマーのような物は、音をたてて変形し始めた。その変形工程は無茶苦茶で、ハンマーのような物の左右の出っ張りが上に伸び、まるで粘土のようにドリル状に変形したのだ。

「夜中だから、音出さないでくれますか……」

「わかりました。break解除。absorに移行します。」

っとおもむろにドリルの先端が開き、G-INKOはテレビに先端を向けた。すると、テレビが吸い込まれてしまった。あり得ない事だ。「じゅ、十分伝わった!伝わったから、やめて。」この時も少し動揺はしたが、アニメで見慣れてるからかもしれないが、普通の人よりは、冷静だと思った。「わかりました。モードwomanに移行します。」

G-INKOはドリルを手に収納し始めた。長時間かけて。出す時は一瞬で、収納には半時間はかかるらしい。まず穴を塞ぎ、回してもいないドリルの隙間に油をさし、指に戻す時も、ハンマー状に戻してからじゃないと戻せないらしい。(ハンマーに戻すのにドリルに油さした意味はよくわからんが。)ハンマーは軽々指に戻って行った。気がつくと僕は、ハンマーが戻って行った指をまじまじと見ていた。

「どうですか。これで私がロボットだと言うことは理解されましたか。」

「え、あ!うん。わかった。わかった。」僕はテンションが上がりすぎて赤くなった顔を両手で覆いながら返事をした。はずだった。

「顔の温度が異常に高くなっております。熱でもあるのですか。」

そんな切り返しが来るとは、思っても見なかった。

「そ、そんなことより、さぁ、G-INKOって呼び方が長いから(めんどくさいだけだけど)、何か決めても良い?」

「はい。よろしいですよ。」(コイツがロボットで良かった……切り替えをきちんとしてくれるから)

「ノキ……ってどうかな?」

「よろしいですが、何故ノキなのでしょうか。理由をお教えくださいますか?」

「INKOだから、並び替えてノキ……なんだけど……」

「良いと思います。」そこで、だめです。。とか言われたら萌えたのに。だめです。。とか言われたら萌えたのに。

「はぁ。じゃあノキ。僕の名前は……(誰の差し金か分からない以上、本名を名乗るのは……)」

「お名前はなんでしょう」

「ろぶだ!まぁ本名を教えるのが危ないから、ハンドルネーム(略)なんだけど……」

「わかりました。ろぶ様ですね。存じております。私のマスターから。」

「まさか……もんS?」

「それ以上お聞きになるのであれば、お暇を頂きます。」

「家政婦ですか?」

「いいえノキです。」まぁ良い。これは後で聞くことにして……「どうして僕の家なんかに……」

ノキは首を傾げながら笑顔で答えた。

「命令ですから。ろぶ様を守れ。そう命令がインプットされておりますゆえ。」

「守る?誰から?」

「ろぶ様を探して、抹殺しようとしているアンドロイドからです。」

「アンドロイド……アンドロイド。ノキより強い?」

「いいえ。私よりかなり弱いです。ですが、どこかの魔法少女より強いです。」

あれか、魔法少女って……。

「ろぶ様、考えてはだめです。著作権引っ掛かりますから。」

モノローグなのに、どうして聞こえた……

「顔に出てます。汗のかきかたでわかります。」そう言うと、おもむろに僕の汗を拭き始めた……がしかし、汗が拭き終わられることは無かった。

「ちょっ。拭くの止めて。止めて。」

「わかりました。」

汗が止まらなかったのだ。ロボットとはいえ、女の子に汗を拭かれるなんて、汗だくにならない訳がないじゃないか。

「そ……そうだ!ふ、風呂!風呂入ってくるよ!そうしたら汗ぐらい止まるでしょ。」

「お供させていただきます。」

「は、はい!?いやいや。おかしいおかしい。ロボットが風呂に入れる訳ですか!?……じゃなくて!何故同伴していく必要があるんだ!?」

「マスターが、そうすればアイツは喜ぶだろうと。さらに言いますと、ロボットとは言いましたが、ロボットとは言い表せぬ凄さでして、更にはアンドロイドより高性能ですので、説明のしようが無く、私はろぶ様に分かりやすくロボットと名乗ったのです。ですので火水何でもいけます。」

「マスターって誰なんだよぉぉぉ!!!……ゴメン取り乱した。取り敢えず。風呂は一人で入るから。」

「分かりました。インプットしておきます。」

僕は、着替えを出して、足早に風呂場に向かった。(アンドロイドより凄いって……)そう考えながら歩く。すると頭に衝撃が走った。

「痛てぇ!!」

頭を壁で打ったのだ。ゴツン!っと言う音が廊下に響いた。

「何事ですか」頭を抱えてしゃがみこんでいたら、いつの間にかノキが背後にいた。

「……ノキ。頭を打っただけだ。心配するな。敵とかじゃないから」

「分かりました。」

そう言うとノキは、リビングに戻って行った。



僕は一、二時間の格闘の末にようやく風呂に有り付くことに成功したのだ。浴槽に入りながら独り言を言っていた。

「ふぅ。いきなりこんなことになるなんて……誰が予測した...。まるでアニメの世界じゃないか。こんな……」とその時、強烈な睡魔に襲われた。

「今日は、残業と……ノキ……とで、疲れた……から……かな……。」そのまま浴槽で眠りに着いてしまった。




……気がつくと僕はリビングにいた。寝ていたのだ。風呂場にいたはずだけど……服も着ている。隣にはノキも寝ている。座って。

「……服?服。服!?っというか!?服着てる!?」

この家にはノキと僕しか居ないハズなんだ。だから……つまりノキが服を着せたことになる。……見られた。見られた。見られた!……(さすがにロボットでもムリムリムリムリムリムリムリムリ)……今さらは無意味だろう。そう思った僕は、もう一度眠ることにした。明日に備えて。ちゃんとベッドで。我ながら冷静だな!と思いながらも。




次の朝起きると。家の壁が半壊していた。まるで重戦車にでも貫かれたかのように。見るとそこには、黒の長髪。身長190。腹筋が8つという人間離れした割れ方をした男が立っていた。

「やっと起きたか。ろぶ。貴様を殺しにきた。さっさと起きろ。」

あっ。これは夢ですね。はい。もう一度眠ります。おやすみなさい。……僕は眠りに着こうとした。が、轟音で無理だった。

「ろぶ様。夢ではありません。これは、現実です。こんなクズアンドロイドなんて一発で仕留められますけど、ろぶ様に取り敢えず一体目をみて頂こうかと思い、ガードに徹していました。」

「ノキ……それが事実だとしても、家が壊れちゃ意味が無いと思うんだけど?」

「マスターには、家ぐらい直せ!と言われましたので。」

「ま……マスターめ!」はぁ。コイツのマスターは一体何を考えているんだか……まさか敵まで同じ場所から来た……ってわけないか。

「軽く倒して見せますよ。」

「はぁっ!何をほざいている!貴様なんぞ一発じゃ!喰らえ!」

男は手に力を集中し始めた。

「はぁぁぁあ!」

光った。コイツ光ったぞ!……っとその時視界は一瞬大きな光でいっぱいになった。僕は目を腕で隠し、目を守っていた。

腕を避け、目を開けると、男の光は消え去り、塵となって消えていた。

後ろを振り向くと、ノキが天に指を指していた。

「ミッションコンプリート。」

そういい放った時に僕はようやく理解した。これからもこんな日々が続くのかと。続いて言ってしまうのだと。

「ところでノキ……」

僕は虚ろな目でノキを見ながら言った。

「はい。」

「家壊れてますけど。ノキはどうするつもりなんだい?」

「二時間で直せます。」

「野次馬はどうするつもりなんだい?こんなに大勢……」

「一分で。いえ。一秒で終わります。」

その時、いきなりノキは僕にサングラスを掛け、野次馬に、ボールペンのような物を向けて、発光させた。するとノキは、おもむろに話し始めた。

「あなた方は何も見ておりません。寝ぼけているだけです。家に帰って二度寝してください。」

すると、何だろうか。僕の家の前に居た野次馬達が何事も無かったかの様に去って行くではないか。僕は問いかける事にした。「何をしたんだ。」

その答えは即答だった。

「記憶の改竄かいざんをしました。この機能はマスター曰く、洋画の影響でだそうです。因みに人間とエイリアンの話だそうです。」

だと思ったよ。そんな感じの話しでしょうね。もしアイツなら。




こんな生活が毎日続いたある日……



目が覚めると、あの時……初めて敵が現れた時と同じ風景がそこにはあった。家の壁が半壊していて、まるで重戦車にでも貫かれたかのような風景が。もちろん敵が現れたのだ。

「初めの時は、こんなことあったけど、数か月はアリもしなかった。なぜなら、ノキが圧倒していたからである。」

「説明してないで、助けてください。」ただ1つ違う点があったのだ。今までの敵の攻撃をノキは全て右手1つで防御し、空いている左手で戦う等の戦法で戦っていたのだが、今は違う。両手防御なのだ。理由はわからないが敵が唐突に強くなった。それは僕にもわかった。

「説明してないで、助けてください。」

「助けてって言われても……何をすれば良いのさ!?」

「枕の下の拳銃を使ってください。」

「無理。」

僕は、無造作に断った。断ったらダメな場面なのに。その理由は、ただただ弾道がずれてノキに当たったらどうしようか。――それ以外の心配は無い。それさえなければ……。

「何故。助けないのですか。」

「ノキに当たったら怖いから……」

「タイミングを合わせて避けます。」

「タイミングか……わかったけど、命中率は期待しないでくれよ。」

「わかりました。早くお願いします。」

僕は枕の下に手を伸ばした。「AAADDD」と書かれた箱を発見した。明らかに拳銃のような名前だ。―――違いますよね。これ違いますよね。僕が箱を開けると、水鉄砲のような物が現れた。というか、水鉄砲で有名な黄色と青のカラーリングなんですが。

「……やってみるか。」

僕はノキの向こうに笑笑と笑っている敵に水鉄砲(もう水鉄砲で良いや)を向けた。敵は、スキンヘッドのムキムキの男。ではなく、超長髪のガリガリの男だった。なのに何故ノキが勝てない。それを思いながらも水鉄砲をやはり向けた。

「ノキ!撃つぞォ!」

「わかりました。避けますので。お願いします。」

僕は引き金を引いた。っとその時だった。水鉄砲からは水色のビーム光線が放たれ、僕は反動で転けてしまった(水かよ!)。っとその時、転けた衝撃で目を瞑ってしまった。


――目を閉じたため暗闇になった目を再度開くと――そこもまた暗闇だった。

「なん……とか……倒せ……ました。」

聞いたことある声が聞こえた。と言うか毎日聞いている声だ。幾度となく僕を助けてくれた声だ。そんな声は今にも消えそうになっている。僕の前から消えようとしている。抗うことも出来ず、ただ消えようとしている。

「ノキ!」

僕は命消えようとしているノキを抱き抱えた。暗闇と言うのは今じゃなくて、この先、ノキが居なくなる事を理解して、暗闇のような生活をおくることになると言う意味だ。

ノキの体をよく見ると、左腕が無かった。左足も無かった。どうしても、この暗闇の未来から逃げることは無理なのか。そう考えると、涙が出てくる……。このままじゃ、ノキが死んでしまう……。ノキのマスターってやつは、どこに居るのか!……って分かるはずが無かった。

そう考えていた時、僕の腕の中からノキが消えていた。

「ノキ!どこだよ!」

僕は、辺りをほとんど残って無い体力で見回した。だけど、涙で目が滲んで、前がはっきり見えてない。


「ろ……ぶ!」

謎の声が聞こえた。微かに聞こえた。だけど聞いたことが無い。

「ろぶ!」

声は近づいて来た。涙を払ってよく見ると、そこには、ブレザーを来た少年が立っていた。

「誰……」

「まぁ。そうなるよね。」

よく見ると、少年の後ろにはノキがいた。立っている。生きてる。僕は暗闇から眩しい光の中へと帰る事が出来たのだ。ノキが生きていたのだから。

「ノキが……生きてる……。腕も、足も……ある。君が治してくれたのか。」

僕は泣き崩れた。

「そうだ。ろぶ。生で君を見れるとは。思っても見なかった。」

「はぃ?まさかとは思うが……君は……。もんsなのかい?」

涙が止まった

「まぁね。正真正銘もんsだ。しかし、35年後の世界のね。」

「マスター。これ以上言ってしまうと、ろぶ様が、悲しまれます。」

「悲しむ?ノキ……どういうこと?」

「実は、G-INKOは、君を、ろぶを守る為の者なんだ。未来では、君は大活躍さ。むしろ英雄だ。でも、違う世界、パラレルワールドでは君はこの時代で死んでしまうんだ。それを防ぐために、G-INKO……いや。ノキを送り込んだんだよ」

なるほど。納得したよ。僕の疑問は解決されたよ。ノキがこれほど強かったのは未来の技術だったんだ。未来の世界での僕がどれほど凄いのかは知らないが、これからもノキに守ってもらいながら生きていこう。「分かったよ。でも、悲しむ要素がわからないんだけど。」

「ノキを未来に連れて帰る」

「え?」

「ノキの戦いは終わった。だからノキを未来に連れて帰る。」

「え?」

僕は「未来に連れて帰る」その言葉を聞くにつれて、止まったはずの涙が再び溢れだした。

「ノキを未来に。」

「マスター。これ以上おっしゃると、怒ります。」

「すまないノキ。」

「や……やめることは……無理なのか?」涙が止まらなかった。雨も降ってきた。暗闇から眩しい光の中へと帰ってくることは無理だったのか。この天気は、まるで僕の心のようだ。

「無理だ。ノキには未来の空気が無いとパワーが低下するんだ。」

「そんなこと知らない!」僕はいつの間にか、もんsを殴り飛ばしていた。もんsは痛みも見せずに立ち上がった。

「無理なんだよ。また未来で会えば良いのさ。最後にこの封筒を渡しておく。」

そう言って、もんsは僕に封筒を手渡しした。封筒の見た目は、新聞が1日分入っているだけのような薄さだったが、受け取って見ると、謎の重量感を感じた。もしかしたら、目が涙で霞んでよく見えなかったのかも知れない。その場で開けようと思ったが、もんsに「私が行ってからにしてくれ」と言われたから、そうすることにした。

「じゃあな。ろぶ。ノキ、行くよ。」

「はい。マスター。最後に時間をください。」

「良いよ。ろぶに別れを告げて来るんだよね?」

「はい。ありがとうございます。」

そう言ってノキは僕に近付き、僕の右のほっぺたに軽くキスをして、もんSへ歩いて行った。『いつかノキとキスするんだ。でも機械とのキスなんか嫌だ。』そんな変な感情もいつしかあった。だけどこのキスは機械のキスなどでは無かった。ノキという1人の人間がいるような、そんなキスだった。僕はほっぺたが熱くなった。こんな気持ち初めてだったからなのか、僕は知らず知らずのうちに下を向いてしまっていた。それでもすぐに前を向いた。ノキが居なくなってしまうから。


しかし、それは遅かった。下を向いた時点で終わってたんだ。僕の前にはノキの姿は無く、あまつさえ崩壊したはずの住宅や、道路も元に戻っていた。

「これまでのことは、全て夢だったのか?僕のこれまでの時間は、嘘だったのか?」涙が流れてきてしまった。やっぱり嘘じゃない!嘘な訳が無い!だって、ノキといた記憶はここにある!

「そうだ!もんSから貰った封筒が有るじゃないか!」

僕は、胸の前に封筒をつき出した。こいつを開ければ、何かがわかるはずだ。いや、解らなければオカシイ。涙を拭いて、封筒を開けた。

「何だよ……」そこにはICチップと書かれた物が1つと、ICチップの説明書と書かれた冊子が封入されていた。よく見ると、

「……!?」

[ノキの記憶]

と言う文章が一番下に書かれていた。

「ノキの記憶!?」

僕は、必死になって、1ページをめくった。明るい未来を信じて。僕は、胸の前に封筒をつき出した。こいつを開ければ、何かがわかるはずだ。いや、解らなければオカシイ。涙を拭いて、封筒を開けた。

「何だよ……」そこにはICチップと書かれた物が1つと、ICチップの説明書と書かれたA4冊子が封入されていた。

「……!?」

[ノキの記憶]

と言う文章が一番下に書かれていた。僕は、必死になって、1ページ目をめくった。明るい未来を信じて。

だけど説明書という割には、一行しか文章がなかった。

[君が未来でノキを作ったんだよ。]

それしかなかった。しかも100ページはあるだろうA4冊子に一行だけだ。他のページは白紙だ。

「……どうしろって言うんだよ。説明書とか、作ったとか……ロボットなんか作ったことも作ろうと思ったこと無かったのに、僕がノキを作った!?そんなことあるはずがない。」

僕がノキを作ったと言うのは、満更嘘では無いらしい。ICチップの裏に、確かに僕の字で[ろぶ]と書かれていたからだ。未来の僕は、未だにもんSに本名を告げていないらしい。

「僕がノキを作ったんだな。」僕は現代のもんSに連絡をとった。彼はまだ、高校2年だ。それでも、少しぐらいは知ってるだろう。

【もんSはロボットとか作ったことある?】

【無いよ?プラモデルならあるよ?】

【未来の自分に会ったことある?】

【無いよ。君には会ったことあるけど。】

【はい?】

【未来の君が来て、僕に封筒を渡して来たよ。】

【その中身って……】

そう。彼は、僕が会ったもんSとはまた違う未来の世界から来た僕に会ったそうだ。もんSの下でも僕と同じ事が起きていたのだ。

その日から僕達は、同じ時代では会ったことも無かったのに、共同生活をすることになった。勿論彼は学生なので、彼の学校の近くでの生活だ。職業も変えた。彼も部活を変えたそうだ。機械を作る部活があって、無理を言って入ったそうだ。

「これは、こう作るんだって!」

「違うよ。学校で何を習ったんだよ……」

永遠にこんな会話を続けて30年。僕らには助手が沢山いた。1つの政党が出来そうなほど。

僕らは、お互いに50歳前後になっていた。

「後は……このチップを入れれば……できるぞ。」

「そうだな。」

僕達は、お互いに顔を見合わせながら、

「「老けたな」」っと言った。お互いが会ったお互いの未来の姿はもっと若かった気がする。お互いにそう思った。

「「ICチップ、ダブルスロットイン!」」

僕達は、二人で守ってきたICチップを差した。


静かな時間が流れる。一分程度の事だったが、僕達には時間がその何倍にも感じられた。

「ただいま帰りましたマスター。」


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