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短編

青い子

作者: 月蜜慈雨
掲載日:2026/03/07

 



 孤高を気取ることに意味なんてないけど。

 例えば一人でカフェで本を読んでいるとき、本当は本じゃなくて、周りの会話に耳を傾けていることが多い。

 そうすると、たくさんの声が聞こえてくる。人といるときでは得られない快感がある。

 孤高を気取ることに意味なんてないけど、一人でいることは、私にとっては意味のあることだ。



 今日も一人、夕方からカフェで過ごして、静かな喧騒の中にいた。立ち上るエスプレッソの香りが、私を癒し慰めてくれる。

 すっかり夜になってから店を出る。辺りは駅へ向かう人や繁華街に向かう人たちが、足早に歩道を歩いていた。

 このカフェから徒歩十分に私のマンションがある。

 涼しい夜風を浴びながらゆったりと家路につく。

 カメラで綺麗に撮れそうな夜空が、一枚の布のように空を覆っていた。



 ギーコ、と音が聞こえる。

 少し先にある公園の方からだ。

 木々の隙間から、女の子が一人、ブランコに乗っているのが見えた。

 まだ夕方の名残はあるが、もう辺りは暗い。心配だなと見ていると、女の子が突然こちらを向いた。

 その姿に驚きのあまり、持っていた鞄を落とした。




 生きているとは思えないほど、その顔は青白く。

 女の子の瞳孔が真っ暗で、それで。




 気がつくと、公園には誰もいなかった。一体どうしたというのだ。多分疲れていたんだろう。カフェに長居しすぎたかもしれない。

 気を取り直して夜道を歩いた。

 涼しい風が頬を撫でる。いつもなら気持ちいいと思うのに、何故か冷たい手で首を撫でられているみたいに感じた。



 すると、頬から雫が一滴伝った。それはすぐに、一筋の雨となり、私の肩や腕を濡らす。

 まいったな。今日は傘を持ってない。

 駆け足で、雨道になりかけの道路を走る。

 少々髪が、風呂上がりして時間が経ったくらい湿けた頃、自宅のマンションに着いた。

 これは早めに風呂に入らないとな。なんて考えながらエレベーターのボタンを押す。

 ボタンを押す。

 ボタンを押す。

 一向にボタンが光らない。

 エレベーターが動く気配もない。



 ヒューと風が吹き抜ける。

 冷たい、冷たい風が。

 カサリ、枯葉が擦れるような音がする。

 カサリ。

 息が浅くなる。

 肩に手を置かれたような気がした。

 ゆっくり振り返る。

 そこには誰もいなかった。

 閑散としたマンションの玄関口が見える。

 ポーン。

 エレベーターも動き出し、ドアが開く。

 そのままエレベーターに乗り込む。

 ドアが閉まって気づいた。

 私の階のボタンがない。

 それどころか、見覚えのあるボタンが一個もない。

 ここはどこだ。

 背筋に恐怖が這い上がる。

 開閉ボタンを押してもドアが開かない。

 ドン。

 ドン。

 ドンドン。

 ドアを叩いた。何度も、何度も。

 エレベーターが振動を始める。

 一体どこへ向かうとしているのか。

 下に動いた一瞬、ドアの向こうであの蒼白い女の子が私を見ていた。






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うわああああ!!! 怖い!!(;´Д`)
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