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7話 宝石王子との出会い【挿絵あり】

 街ひとつが再現された異空間の中。


 一般人の気配が一切ない道路の真ん中で、魔法道具を構えた不良の群れが1人の王子を相手に襲いかかるも返り討ち。


 不良とゴーレム軍団は王子の生み出した宝石の結晶に覆われ、行動不能となってしまった。


 そんな中で王子は、宝石を生み出す能力で作成したと思われる、輝く紐が付けられた2つの盾型の武器を装備。

 王子は盾を振り回し、結晶漬けのゴーレムの群れの始末を始めた。


「はあっ!」


 王子は紐を振り回して盾を操る。投げ飛ばされた盾は空中で凶悪な丸鋸のような武器に姿を変え、頑丈そうなゴーレム群を容易に切断していく。


「すごい! あの王子、ゴーレムを簡単に始末していく!」


「……いや待て、地面からまだゴーレムが生まれているぞ!」


「えっ!?」


 空中でホウキに乗り観戦していたカイは王子の戦いぶりに大はしゃぎするも、後部座席に座るマモルの指摘により我に返る。


 地面からはマモルの言う通り、戦闘中に生まれたと思われるゴーレムが発生。

 結晶もなく自由に動き回れるゴーレムは王子を目掛けて襲いかかる。


 ある者は両腕を振り回し、またある者は近くのコンクリート片を王子に向かって投げ飛ばす。


「危ない!」


 カイは慌てて叫ぶも、王子はすぐさまゴーレムの攻撃を綺麗に躱し、盾やゴーレムの影に隠れて防いだ。


「すげぇ……!」


「かなり手慣れているな……」


 バリアに阻まれて戦いに参加できないカイとマモルは、ホウキで宙に浮かびながら王子の華麗な武器捌きを見学する。


挿絵(By みてみん)


「くそっ……! ゴーレム! 何をしている! 遊んでないでさっさと倒せ!」


 不良操るゴーレムは怯むことなく王子に攻撃を仕掛けるが、近接攻撃を仕掛けようとしても王子に華麗に躱され武器で反撃された。


 遠距離からコンクリート片を投げても、投げた破片はすぐさま避けられたり、武器に割られ跳ね返されていた。


 さらに王子は、盾で器用に弾いた一部の破片をゴーレムにぶつけるというとんでもない技を見せる。


「……!」


 そんな中、ゴーレムは一際大きな破片を持ち上げて王子に投げつけた。


「失礼!」


 王子は近場にいたゴーレム数体を咄嗟に盾と紐でふん縛って手元に引き寄せ、大きな破片を未然に防いだ。

 王子が飛ばした破片は不良に飛んでいくことは無かった。だが、仮に飛んだとしても不良を覆う結晶により阻まれていたことだろう。


「ゴーレムが減っていく……」


 ゴーレムは次々と王子の武器の餌食になり、割られ砕かれて元の瓦礫に戻っていく。


 先程まで大量にいたゴーレム軍団は短時間であっという間に数を減らしていた。


 やがて新たなゴーレムは発生しなくなり、ゴーレムは地上から軒並み姿を消した。


「あっという間にゴーレムが消えたな……まさか怪我人無しで戦闘を終えるとは……」


 マモルは呆然として地上を見下ろす。


「すげぇカッコいい……! 俺もあんな風に力を使ってみたい……!」


 対するカイは、バトルを見学するうちに王子の能力捌きにすっかり夢中になっていた。


「くそっ!」


「さあ、どうしますか?」


 宝石により不良は全員閉じ込められている。


 狼人の不良リーダーが宝石の中で悔しがる中、王子は不良リーダーの前に華麗に着地した。


「まだ戦うのであれば、わたくしも喜んで相手になりますよ?」


「……いや、負けだ。降参だ」


「番長!?」


 余裕のある王子に対し、不良リーダーはあっさり負けを認めた。周りの仲間達は驚き声を上げる。


「でも番長……!」


「奥の手は呆気なく砕かれた。これ以上抵抗したところで、俺達に勝ち目はない。惨めったらしく反撃しても痛い目見るだけだ、諦めろ」


「そんな……」


 不良リーダーに論され、仲間の不良は力なくしおれる。だが、そんな王子の背後に不穏な影が。


 先程、この場から逃げた不良の1人が現場に戻ってきていたらしい。彼は手に杖を持ち、王子の背後にゆっくり迫る。


「!?」


「危ない!」


 カイは慌てて叫ぶも、それより早く王子が動いた。


「ほっ!」


「うわっ!?」


 王子は手に持っていた銃の玩具を背後に向け、不良の持つ杖を撃ち抜いた。


「ひっ、ひぃい!?」


 杖を弾き飛ばされた不良は悲鳴を上げながら腰を抜かす。不良リーダーは目論見が外れたのか、「チッ」と舌打ちをして俯いた。


「逃げ回って最後まで粘っておいて、ここにきてやけに素直になったと思ったら……」


「何とでも言え。お前みたいなガキに素直に従うかよ」


「どうとでも言いなさい。皆様には色々と話していただきたいことがありますから、そこで大人しくしててください」


「……何する気だ」


「皆様をすぐに警察までお送りします」


「この疾風のフェンリルを警察に突き出すだと……?」


「大人しくしててください、フェンリルさん」


 王子は不良軍団に何かする気なのか、その場で魔法を構成し始めた。


「誰が大人しくするかよ……! 俺は絶対にお前から逃げ……」


「問答無用!」


 王子は両手を合わせて魔法式に魔力を込め、魔法を発動させた。

 すると、目の前で拘束されていた不良軍団は王子の目の前からすぐさま姿を消してしまった。


 だが、それ以上に景色に変化が現れた。


「街が明るくなってる……」


 荒れた道路は一瞬で元に戻り、世界は元の輝きを取り戻す。一般市民も姿を現し、道路には車が行き交っている。


「もしかして……異空間から抜け出したのか?」


「そのようだな……」


 世界が元通りになり、カイとマモルはホウキで浮かんだまま静かに辺りを見回す。


「……あっ! 王子は……!」


 ここでふと王子のことを思い出したカイは、慌てて街を見下ろして王子を探す。


「……いない」


 先程まで王子がいた場所に視線を向けるが、そこに王子の姿はなかった。


「結界を消したのと同時に、王子も姿を消したようだな」


「そんなぁ……オレ、王子と話してみたかったなぁ」


 どこに目を向けても王子はいない。カイは目に見えて落胆すると、ホウキの上でポツリと独り言を呟いた。


「……っ!? おい、カイ……!」


「ん? マモル、どうした?」


 そんな中。マモルは唐突に何かに驚き、慌てて前方に指を向ける。


「どうしたんだ? 前に何か……」


 カイはマモルの指差した前方に目を向けようと体を動かす。




「私とお話、ですか?」




「えっ?」


 どこからともなく王子の声が聞こえてきた。


「奇遇ですね、私も貴方と是非お話ししたいと思っていたんですよ」


「えっ、どこに……」


「カイ! 前!」


「前……うわっ!?」


 なんとカイの乗るホウキの先端に王子の姿が。唐突に前方に現れた王子に、カイは驚きの声を上げた。


挿絵(By みてみん)


「おっと、驚かせてしまい申し訳ございません。私を助けようと駆けつけてくれた、とても心優しい貴方に興味があって」


「あっ!? えっ!? あの一瞬で此処まで……えっと、ありがとうございます!」


 どこか気の抜けた王子に対してマモルは半ば困惑しつつも、カイは敬語でお礼を述べる。


「あっ、でも……確かにオレ達は王子を助けに向かおうとはしましたが、仮に助けに向かったとしても何も出来なかったかな……」


「王子……? いえ、わたくしはそのお気持ちが何よりも嬉しかったのです」


「なんて優しい子なんだ……あっそうだ、オレはシロヤマ・カイって言います! 後部座席に座ってるのはオレの友達のハルカワ・マモルです!」


「ハルカワです」


 カイは王子と向かい合い、元気に自己紹介をする。マモルもとりあえず言葉を放つ。


「シロヤマさんにハルカワさん、ですね? 私の名前はヴィオです、よろしくお願いします」


「ヴィオさん…………あっ」


 マモルは王子の名前に何か思い当たるものがあったのか、その場で固まる。


「ヴィオさんですね? ……あっ、そうだ。ヴィオさん、さっきの戦い見ました! 能力であんな鮮やかに戦うなんて……!」


「カッ、カイ……!」


 何かに気付いたマモルは、意気揚々と会話をするカイを慌てて呼び止める。


「ちょっと待……っ!?」


 だが、そんなマモルに視線を向けた王子は、人差し指を立てた右手をそっと口元に寄せた。静かに、というジェスチャーだ。


「……!?」


「マモル、どうした?」


「いや……駄目だ。これを言ったら俺は消される……」


「誰に消されるんだ……?」


 何かに怯えるマモルにカイは困惑するも、とりあえず再び王子に向き合う。


「……あっ、こんなホウキの上で話すのも危ないですよね」


 カイはそう言いながらホウキの操縦を再開する。


「折角ですし、どこか安全な場所に降ります? コンビニで何か買って、それ食べながら話でも……」


「コンビニ?」


「はい。24時間営業してるので……あっ」


 と、此処まで言いかけたカイは唐突に口を閉じた。


(よく考えたら……ヴィオさんは見るからにお金持ちの人だし、お金持ちとは無縁そうなコンビニには興味ないかもしれない……)


 カイは以前、金持ちの友達にファストフードを分けたら微妙な反応をされたことを思い出した。

 恐らく王子もコンビニとは無縁の存在なのだろうと直感したカイは、慌てて言葉の訂正をする。


「あっ、えっと……! マッ、マモル……!」


「俺に振るんじゃない……! えっと、向こうに魔法使いが集まる自然公園があるので、そこに直行するのは……」



「是非っ! わたくしもコンビニにご同行させてくださいっ!」



「「えっ?」」


 しかし、マモルが仕切り直そうと口にした言葉を王子に遮られ、むしろ大喜びでコンビニに食いついてきた。カイとマモルは思わず呆けた声を出す。


「いいんですかヴィオさん……?」


「はいっ! わたくし、前々からコンビニに入ってみたかったのです! あの手の最先端なお店とはずっと無縁で……」


「最先端……」


「そ、そうだったんですか……!?」


 想像以上に乗り気な王子に驚きつつも、カイは満更でもない様子。

 むしろコンビニをよく利用するカイとしては、コンビニにここまで興味を持ってくれるのはとても喜ばしいことだった。


「じゃあ、よくコンビニを利用する俺がコンビニを軽く案内しますよ!」


「やったー! よろしくお願いします!」


 大喜びで返事をした王子は、どこからともなくホウキを取り出してカイの隣に浮かんだ。

 そんな王子に対してカイは「へへっ」と得意げに笑うと、楽しそうにホウキを飛ばした。目指す先は大きめのコンビニだ。


(大変なことになった……!)


 カイが楽しそうにホウキを飛ばす中、マモルは表情を強張らせて考え込んでいた。


(もし俺の間違いでなければ、ヴィオさんは……!)

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