6話 宝石の王子様
真夜中、王子が作り上げた結界の中にて。
バイクを追いかけていた王子は、不良リーダーの所持していた魔法道具により作成された人型ゴーレムの大群に囲まれた。
王子をゴーレムで囲んだ不良リーダーは、魔法の杖のような物を取り出して構え、棒の先端を王子に向ける。
「どうせ逃げられないのなら、相手が追いかけられなくなるまで叩きのめしてやる」
「魔法道具……!」
カイは不良達の周りで起こった出来事に加え、不良が構える棒状の物体を見て驚きの声を上げる。
(しかもあれは魔法使い専用の杖……! あれは魔法免許を所持した、見習い以上の魔法使いじゃないと購入できない筈なのに……!)
杖は魔法の補助だけでなく、魔法そのものの威力も上げる。ごく普通の魔法弾ですら、岩をも砕く恐ろしい魔法に変えてしまう。
そこから分かる通り、魔法使いの杖は少なくとも一般人が取り扱っていい代物ではない。
仮に不良達が魔法学生だったとしても、学生の殆どは魔法使い見習いであり、本格的な魔法道具を所持できないはずだ。
「形勢逆転だな」
前線にはゴーレム、後衛には魔法使いの杖を構えた不良の群れ。これでは多勢に無勢だ。
「へへへ……! ここまで来ると相手が可哀想になってくるなぁ……!」
「ゴーレムまで出したのなら、こっちの勝ちは同然!」
先程まで意気消沈していた不良達はすっかり立ち直り、意気揚々としながら王子に杖を向けている。
対する王子は、先程までの柔らかな笑みを消し、真面目な表情を不良リーダーに向けていた。
「貴方達……どこでその魔法道具を?」
王子は真面目な様子で不良リーダーに尋ねる。
「言うわけないだろ?俺が素直に教えると思うか? 王子様」
「いえ、全く。期待してませんでした」
「そこまで思ってるに何で尋ねたんだ……」
どこか抜けている王子にあっけらかんと答えられ、不良リーダーはほんの僅かだがやりづらそうな雰囲気を出す。
そんな中、カイはそんな光景を真上から見つめ驚き焦っていた。
「大変なことになった……!」
「アレは流石にマズいな……」
魔法使いらしき王子1人に対し、相手は武器持ちの素人魔法使い集団。さらにゴーレムの大群まで出されたら、流石の王子も分が悪い。
王子がいくら力のある能力者といえど、武器を持つ大勢を相手取るのは厳しいはずだ。
「助けに行かないと! マモル、行けるか!?」
「頑張ってみる! とりあえず空から襲撃しよう! 相手が怯んだ隙に王子をあの場から救出するんだ!」
「分かった!」
マモルに断りを入れたカイは、王子を助けるために全力でホウキを飛ばした。
カイは手元から氷を生み出しながら不良達に突撃していく。マモルも手から炎を生み出し、ゴーレムに狙いを定める。
「それっ!」
カイは手元から生み出した氷を全力で飛ばした。王子の前に壁を出して守る為だ。
マモルも続いて炎の弾をゴーレム目掛けて飛ばすが……
「あっ!」
「攻撃が消えた!?」
しかし、飛ばした氷と炎は途中で何かにぶつかり、砕けて消滅してしまった。どうやら不良達を囲うようにバリアが貼られているらしい。
「弾かれた! 一体誰が……!?」
謎のバリアにカイ本人も阻まれ、これでは王子を助けに向かえない。何もできずに慌てるカイは、ただ王子に視線を向けた。
そんな中、不良と退治していた王子は顔の向きを少し変え、カイとマモルのいる方へ視線を向けた。
「あっ!」
王子はカイとマモルに向かってウインクを飛ばした。
(俺達のこと気付かれてる……!? っていうか、もしかしてあのバリアって王子が……?)
「あの王子のウインクってもしかして「手出し無用」ってことなのかな……」
「かもしれんな……」
カイとマモルを乗せたホウキが停止する中、不良達は王子に向かって武器を構えながら意気揚々と言葉を発する。
「さて、準備はできたか? 王子様」
「はい、私は大丈夫です」
「はっ、何も構えてないのに強がりを……野郎ども、ここは王子様にとびきり楽しいお遊戯を教えてやろうぜ」
「おーっ!」
「いひひひーっ!」
カイが意味を考える間もなく、不良のリーダーと仲間達は杖に魔力を込め、王子目掛けて魔法弾を放った。
「危ない!」
カイは叫ぶが、バリアが邪魔で先に進めない。
鋭く放たれた魔法弾の群れはあっという間に王子まで届き、王子の前で大爆発を起こした。
大量の土煙が舞い、王子の姿は視認できなくなる。
「ゴーレムを使うまでもなかったかな……? 我ながら勿体ないことをした」
「ギャハハハ! ざまあねぇ!」
不良リーダーは完全に勝ち誇り、周りの不良も下卑た笑い声を上げる。
「バリアのせいで王子の状態を確認できない……!」
「このままでは何もできんな……」
カイとマモルは動揺の色を浮かべながら王子のいる方角を見つめる。
「……ん? 何だ?」
が、土煙の中心からキラリと何かが幾つも輝いたかと思うと、輝く何かは周囲に向かって勢いよく放出された。
「あ?」
不良リーダーが呆けた声を上げる中、輝く物体はゴーレムに次々と命中。
謎の輝く物体が命中した部分から巨大な結晶が生み出され、ゴーレムは次から次へと結晶に覆われて行動不能となっていった。
「あっ!? ゴーレムが……!?」
前線で立っていたゴーレムが次々と停止していき驚く不良達だったが、後衛にいた不良達の足元にも輝く物体が打ち込まれた。
「ああっ!?」
「何だコレ……!?」
不良達の足元から巨大な結晶が生まれたかと思うと、不良の1人1人が結晶の中へと閉じ込められていった。
「動けねぇ……!」
やがて不良達は全員、堅牢な結晶の檻の中に閉じ込められてしまった。
「さてと……」
やがて土煙が晴れ、中から王子が姿を現した。
「おいガキ! 俺達に何しやがった!?」
「狭っ!? おい! 俺達を此処から出せ!」
「貴方達は警察に引き渡します、そこで大人しくしていてください! さて……」
王子は不良達にピシャリと言い放つと、周囲で固まるゴーレムに視線を向けた。
「このままゴーレムを放置しては、結界を解いた時に表に迷惑をかけてしまいます。彼らの片付けをしなくては」
王子はそう呟くと、手の中から生み出した宝石を操作して何かを生み出した。
宝石の美しい輝きを放つ円形の盾だった。
「あれは……盾?」
「バックラーのように見えるな」
カイとマモルが見つめる中、両腕に盾を装備した王子は途端に真剣な表情へと変わる。
「お覚悟をっ!」
王子はそう一言叫ぶと、構えた盾を近くのゴーレム目掛けて放り投げた。盾には光り輝く頑丈そうな紐がくくりつけられている。
「なんかヨーヨーみたいだな……」
呑気に感想を述べるカイだったが、そんなカイ達の前で盾に大きな変化が現れた。
投げられ回転しながら飛んでいた2つの盾の外側が、さながら花のように開花した。
「えっ」
花弁にあたる外側の部品は鋭い刃へと姿を変え、斜めに構えて細かいプロペラのような形状に変化。
恐ろしい形に変化した盾は凄まじい音を立てながら高速回転し、やがてゴーレムと激突した。
「!?」
高速回転した盾の斬撃は、結晶に包まれたゴーレムの身体をあっという間に真っ二つに。ゴーレムは何もできず力を失い、上半身は呆気なく後方へと倒れた。
「なあっ!?」
「嘘だろ!?」
想定外だったのか不良は叫び、カイは王子の盾が生み出したとんでもない攻撃力に驚き声を上げる。
「何だアレは……!?」
恐ろしい音を立てて胴体が割れたゴーレムは、その場でガラガラと音を立てて崩れて元の物体へと戻った。
その様子を真上から観測していたマモルは驚き戦慄する。
(何だあの攻撃……! あの王子、確実に只者じゃない……!)




