4話 バイクと共に駆ける者【挿絵あり】
マモルとカイが能力者同士の約束事を取り付けた後……
真夜中。現場に到着した救急車に乗せられ病院へと担ぎ込まれたマモルは、検査を受けるも異常無しと診断されてそのまま解放された。
「良かったなマモル!」
「咄嗟に頭上を強化できてたらしい」
「マモルすごいな! 真面目メガネなのに反射神経がいいなんてな!」
「面目は余計だ」
「どこ切り取ってんだ?」
「カイ!」
「マモルー!」
病院の前で安心して軽口を叩き合っていたカイとマモルの元に、予め携帯で連絡していたお互いの両親が掛けてきた。
「父さん母さん! 実は……!」
「はぁ!? 友達を乗せてホウキごと落下した!?」
「何してるんだカイ!」
「情けない話なのだが……」
「カツアゲされたところを助けられた!?」
「缶を蹴って不良刺激してって……何してんだマモル!?」
お互いが事情を説明した途端、両親による謝罪合戦が幕を開けた。
「本当に申し訳ございません! まさかそんな危ない目に遭わせるなんて……!」
「いえ! 元はと言えばマモルが不良を刺激したのが原因で……!」
「いえ、それでも……!」
両親による謝罪合戦は長く続いた。このままでは埒が開かないと察したマモルとカイは……
「あの時俺達は、出来立ての友情を盾にして両親の争いを止めたんだったな……」
「友情を盾にというより、もはや人質に取ってたよあれは……」
数日後の夜。夜間散歩をする為に待ち合わせ場所で落ち合ったカイとマモルは、閑静な町中を歩きながら謝罪合戦の時のことを思い返していた。
「それより、今日はどうする? 能力について話し合おうとは言ったが、何から始めれば……」
「そうだなぁ……でも、話し合いをするにもまずは、お互いのことを知ることが大事だと思うんだ!」
「自己紹介から始めるということか?」
「そう!」
カイは手を叩いて言葉を続ける。
「話し合いをするにも、心のどこかに遠慮があったら意見も何もはっきり言えないだろ?」
「なるほど、先にわだかまりをある程度解消して、改めて本題に入ろうというわけか。一理あるな」
「その通り! さすがはマモル、理解が早い! と、いうわけで……」
カイはその場で足を止め、鞄から真新しいホウキを取り出した。
「マモル、今からゲーセン行こう!」
「さてはカイ、元より遊ぶ気だったな?」
大はしゃぎでホウキに乗り込むカイにマモルは訝しげな視線を向ける。
「いいゲーセンがあるんだよ! 夜も営業している安心安全な場所で、何よりも音ゲーの種類も豊富でさ! ゴデカやポコマジの新作は勿論のこと、あのキーボマやマンボーまで置かれていて……!」
「とりあえずカイが音ゲーというものが好きなのはよく分かった」
「ホウキに乗ればあっという間に……あっ、ホウキについては心配しないでいいからな! この間、新しいホウキ買ってもらったんだ!」
カイは乗り込んでいたホウキをマモルに見せる。
「今度買ったのは急落下しても、安全装置が働くから超安全なんだ!」
「ほぉ、いいものを買ってもらったんだな」
「今まで使っていたのはだいぶ古いやつだったからな……あ、因みに前のホウキは父さんにあげたよ」
「あのホウキはカイの父に渡ったのか。とすると、カイの父も魔法使いか?」
「うん。その魔法使いのお父さんの手によって、ホウキは【魔呪大剣ジュサツバッサツS】に姿を変えたよ」
「魔呪大剣ジュサツバッサツスーパー……!?」
「そうそう。魔大剣ジュサツバッサツの上位互換ね」
「その剣は進化前が存在するのか……にしても、なんだその禍々しいネーミングの武器は……」
カイのホウキは聞いたことない大剣に変化していた上に進化までしていた。
「ゲームに出てくる大きな剣だよ! 父さんそういうの作るの好きでさ〜」
「よりによってあんな事件を起こしたホウキでそんな恐ろしそうな剣を作成したのか……」
「うん! オレよりデカいよ!」
「いや、デカい小さい以前に……短期間でその武器を完成させたカイの父も凄いな」
「パーツはある程度揃ってたからすぐに完成したってさ。で、完成した剣の実物はすごくかっこいいんだけど、デカくて幅も取るから母さんは迷惑そうで……」
「早速厄介がられてるじゃないか……」
「まあ、その剣は今日家に来たお爺ちゃんが気に入って持ってって……あ、話の続きは空を飛びながらでもしよっか!」
「話の続きがかなり気になるな……」
マモルはすぐさまホウキの後部座席へと乗り込む。
「しっかり乗り込んだか?」
「ああ、乗り込んだ。確認を頼む」
「分かった! ……って、また反対向いてる!」
マモルはカイと真逆の方角を向いて後部座席に座っていた。
「前のあの出来事があったというのに……!? よくそんなことできたな!?」
「いや、カイの運転技術はだいぶ高い。俺はカイのホウキ操縦には全面的に信頼を置いている」
「信頼してくれるのは嬉しいけども! せめて同じ方向向いてくれ!」
「カイ、背中は預けた」
「出会って間もないのにめちゃくちゃ信頼されてる! でも今だけはオレの背中を見てくれ!」
カイはマモルを説得して向きを変えさせる。
「危ないなぁ……まあ、わざわざ確認取ってるあたり、マモルが本気で逆方向向こうとしてるわけじゃないのは分かるけども」
「よし、乗り込んだぞ。確認を頼む」
「よし、今度はちゃんと乗り込んだな! じゃあ早速出発……!」
「うぉおおおおお!!」
「ん?」
空へと飛び立とうとしたカイの耳に、けたましいバイクの音に負けないほどの野太い叫び声が耳に入った。
「な、なんだ……?」
「やけに騒がしいな」
叫び声はバイクの音と共に聞こえてくる。どうやらバイクに乗ってる男が必死になって叫んでいるようだ。
「事件かな……」
事件を察知したカイは、マモルを乗せたホウキを宙に浮かべると、バイク音と叫び声のする方角へと急いで飛んだ。
行き先は車の気配がない広い道路、遠くにテールランプの群れが観測できる。
「一体どこに……」
「あっ、いた! マモル、あれ!」
「ん?」
「あの大きな道路!」
程なくしてカイは叫ぶバイクを発見し、指を差してマモルに位置を伝える。
「誰か助けてくれぇー!!」
正体はバイクに乗った不良の群れで、今もなお叫び続けている。
どうやら彼は何者かから逃げながら助けを求めているようだ。
「ここまで聞こえてくるぞ。元気な奴らだ」
「言ってる場合じゃないって! アイツ一体何をしてるん……だあっ!?」
バイクの後方に視線を向けたカイは、そこでとんでもない光景を目の当たりにした。
なんと可憐な少年が、全力で逃げるバイクを凄まじい脚力で追いかけていた。
「お待ちくださーい!」
少年は全体的に芯が細く、身にまとう衣装は随分と高級そうだ。
手入れされた長い髪を高価そうな髪留めでまとめている。お金持ちによく見られる髪型だ。
どこからどう見ても貴族や王族に見える彼は、細い足からは想像できないほどにありえない速度で走行してバイクを追いかけている。
例え彼が魔法使いだったとしても、魔法道具も無しにバイクを追いかける真似は到底不可能だ。
「まだわたくしのお話は終わってませんよー!」
「もう勘弁してくれぇー!」
「こっち来んなー!」
王子様のような見た目の少年は不良達を追いかけ、バイクに乗った不良達は悲鳴を上げながら逃走を続ける。
「何なんだアレは……」
「マモル、とりあえずアレの後を追うぞ!」
「分かった」
奇妙な光景に困惑しつつも、トラブルを無視できないカイはホウキで空を飛び、バイクの群れと王子を追いかけたのだった。




