13話 変装大作戦【挿絵あり】
命の危険を察したマモルは、危機を避ける為にアパレルショップへと移動した。
「じゃ、私は車で待機してるからな。身なりを綺麗に整えてもらってこい」
「ありがとうございました姉御」
「おう。生まれ変わってこい」
「マモル、フィオさんのことはもう姉御呼びなんだな」
メイドのフィオを車に残して駐車場を後にしたカイとマモルとヴィオは、その足で目の前にある大きなファッション店へと移動した。
「外観もさることながら、出入り口から既にお洒落な気配が漂ってます……!」
「中も綺麗ですね! でもまずはマモルの身を徹底的に固めないと!」
「俺に武装でもさせるつもりか?」
冷静に指摘するマモルを連れて、カイは慌てて店へと駆け込んだ。
「シロヤマさん、慌てず騒がず落ち着いてくださいね〜」
ヴィオはその様子をニコニコ微笑みながら後から入店した。
「すいませーん! 店員さーん!」
店内へと駆け込んだカイはすぐさま店員を呼びつけた。
「はい。お客様、いかがなさいましたか?」
近くにいた女性店員がすぐさま反応し、丁寧な対応で言葉を返す。
「店員さん助けてください! 今すぐ服が必要なんです! 友達に命の危機が迫ってて……!」
「えっ?」
「カイ、端折りすぎだ」
慌てたカイによる主語の抜けた話に店員は疑問符を浮かべ、マモルは静かに指摘した。
「命の危機と申しますと……ええと、とりあえず鎧コーナーにご案内します……」
「あるんですかそんなコーナー」
「魔法使い御用達のお店なので一応……」
どうやら此処は防具屋と言っても過言ではないようだ。
「お2人とも、ここはわたくしにお任せください!」
カイに続いてお次はヴィオが説明の為に前に出る。
「店員さん、失礼します。本日はハルカワさんの風貌を変えていただきたく、このお店まで馳せ参じた次第なのです」
「要するに俺のイメチェンです」
「そうそう、イメチェンというやつです。マモルが不良に襲われないようなスゴイ防具をお願いします」
「なるほど……でしたら魔法武器コーナーにご案内します」
「俺に戦えというんですか」
「何かあったか存じ上げないのですが、ケジメはつけるべきかと……」
「貴方は俺の何を知っているんですか」
「でも元を辿ればマモルが原因だよな?」
「……いや、確かに俺が原因ではあるんですが……とりあえず見た目を思い切り変えたいんですよ」
「とりあえずハルカワさんを思いっ切りイメチェンしてほしいのです! お金に糸目はつけません!」
ヴィオは胸を張って堂々と伝える。
「いや、ヴィオさん……そうしたいのは山々ですが所持金が……」
「わたくしが払います!」
そう言い張ったヴィオは、懐からお札を何十枚も取り出してマモルに押し付けた。
「店員さん、お願いします!」
「いや、そんな……悪いですよ」
「大丈夫です! これは現代の案内代でもあるのですから、遠慮しないでください! と、いうわけで店員さん、ハルカワさんをお願いします!」
「分かりました」
ヴィオの言葉に店員は頷く。
「スタイリストをお呼びしますので、どうぞこちらへ」
「……はい、分かりました。ヴィオさん、ありがとうございます」
「どういたしまして! ハルカワさん、行ってらっしゃい!」
マモルは店員の案内により店の奥へと消えていった。
「さてと……ヴィオさん、どんな服を着たいとかイメージとかありますか?」
「あります! やはりストリートらしい服装で、パーカーは絶対に外せませんね! 一度着てみたかったのです!」
「ストリートっぽいやつですね、分かりました! 向こうに丁度いい感じのファッションが集まってますから、あっちに向かいましょう!」
「はい!」
数分後……
「カイさん、どうでしょうか!」
ヴィオは少しサイズの大きい紫パーカーを身にまとい、カイの前で1回転する。
「ヴィオさんお似合いですよ! 靴もいい感じですし、パーカーと元の服と組み合わさって、ポップな感じが出てかなり最高です!」
「わたくしから都会っぽさは出てますか?」
「出てます! どこからどうみてもシティーボーイですよ!」
「きゃー! やったー!」
カイから正直に褒められたヴィオは、その場で飛び跳ねて大喜びした。
「ではこのパーカーと靴を早速買ってきます!」
ヴィオはレジへと進もうとするが、何か思い出したのかその場で振り返りカイを見つめた。
「そうだ、カイさんは何か欲しい衣類はございますか? もしよろしければ此処で何か購入しませんか」
「あ、オレは大丈夫です! オレの装備は十分揃ってるので!」
「そうですか、分かりました。もし必要なものがありましたら、遠慮なくわたくしにお伝えくださいね」
「ありがとうございます!」
「そっちは終わったか」
カイとヴィオがそんなやり取りをする中、2人の前に革ジャンを着た不良じみた青年が姿を現した。
髪をオールバックにして革ジャンとジーパンを着用したワイルドな男だ。
「こっちも済んだぞ」
「…………誰?」
「どちら様ですか?」
「……俺だ、ハルカワマモル」
「マジ!?」
いかにもワイルドな青年の正体を知った2人は目を丸くして驚いた。
「不良から身を守る為の変装しに行ったら、俺自身が不良になってしまってな……」
「いや凄っ! オレ、最初見た時マモルだって分かんなかった!」
「素晴らしい! 先程の真面目な衣装も素敵でしたが、今の衣装も素敵です! カッコ良さが出てますよ!」
「魔法服だから防御力もあるそうだ。これなら表を出歩いても大丈夫そうだが……なんか落ち着かないな」
マモルは付近に置かれていた鏡の前に立つ。
「生まれてからこんな格好したことないからな……革ジャンもジーパンも馴染みがない」
「すげー似合ってるよマモル! これなら不良に喧嘩売られることもなくなるって!」
「後はその辺の物をなんでも蹴り飛ばす癖を直せば完璧ですね!」
「善処します。あ、ヴィオさんこちらお釣りです」
そんなこんなでヴィオとマモルは変装用の衣装を購入し、3人揃ってファッション店を後にしたのだった。
「さてヴィオさん、お次はいよいよデパートですよ!」
「楽しみです!」
カイとヴィオは上機嫌で駐車場へと向かう。
「……ん?」
「駐車場がやけに騒がしいな……」
駐車場の方から威勢のいい喧騒が聞こえてくる。
「なんかあったのか……?」
駐車場に近付くとそこには、やけに柄の悪い男女グループが屯していた。
見るからに不良で、どうやら彼らはフィオの乗る車を囲って騒ぎ立てている様子だ。
「ん……?」
しかし彼らはヴィオ達を一目見るや、すぐさま車からヴィオ達に視線を移した。
「あっ! 来たぞ!」
「あの水色スカジャンの野朗だ!」
「顔も髪型も報告通りだ! 間違いないよ!」
「スカジャン…………えっ!? まさかオレのことか!?」
なんと不良の群れはカイに真っ直ぐ視線を向けながら迫ってきた。
「お前かぁ……!」
不良の中で特に背の高い番長らしき人物は、カイへと迫りながら凄みのある声量でカイに声を飛ばす。
「仲間を氷漬けにしやがった上にその辺に放置しやがった奴ってのは……!」




