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ADHD勇者! 〜異世界行っても本気出せない、寝坊から始まる勇者譚〜  作者: 由良太郎


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第8話 勇者、騎士団で鍛えられる


 王都騎士団の朝は、早い。


「集合ーーーっ!!」


 号令が響いた瞬間、ユラは飛び起きた。


「え、なに!? 敵!?」

「朝だ」

「朝が一番の敵なんですよ!!」


 寝癖を爆発させたまま、慌てて中庭へ飛び出す。


 すでに整列している騎士たちの中で、

 一人だけ明らかに“場違い”な勇者がいた。


(……全員ムキムキじゃん)


 剣。

 槍。

 斧。


 武器を構える音だけで、胃がキュッとする。


「よし、基礎訓練だ!」


 教官の声が響く。


「腕立て!」

「腹筋!」

「素振り千本!」


「せ、千……?」

「千だ」

「桁多くないですか!?」


 反射でツッコミを入れた瞬間、


「勇者、口を動かすな」

「はい……」


(でも考えちゃうんだよな……

 千回って、今何回目で、途中で数忘れて――)


「止まるな!!」

「すみません!!」


 案の定、回数を見失い、

 途中で立ち尽くすユラ。


 その横で。


「はいはい、次!」


 リリアが、軽々と剣を振っていた。


 速い。

 無駄がない。

 なのに、余裕がある。


(……え、あれ同年代だよな?

 ステータス配分どうなってるの?)


「ユラくん、何回目?」

「分かりません!」

「正直でよろしい!」


 リリアは笑いながら、ユラの剣を一度だけ払った。


 ――カン。


 軽い音。


 なのに、ユラの剣は宙を舞った。


「え」

「今の、受け止められたら合格点だったね」

「今の!? 今の何!?」


「基礎」

「基礎であれ!?」


 周囲の騎士たちがざわつく。


「さすがリリア」

「副隊長候補だな」

「勇者でも敵わんか」


 ユラは地面に落ちた剣を拾いながら、震えた。


(……勇者って、肩書きだけだな、俺)


 だが。


「でもさ」


 リリアが、少しだけ真剣な顔になる。


「反応は悪くないよ」

「え?」

「考えすぎるけど、直感は生きてる」


 ユラは目を瞬かせた。


「……それ、褒めてます?」

「うん。めっちゃ」


 その言葉に、胸の奥が少し温かくなる。


 ――と、その時。


 訓練場の隅で、騎士たちが小声で話しているのが耳に入った。


「聞いたか?」

「ああ……南区で、また」

「人が……変わったらしい」


 ユラの動きが止まる。


「……変わった?」


「魔物みたいに暴れたって」

「でも、元は人間だったらしい」


 空気が、一瞬で冷えた。


(……魔人)


 王城で聞いた言葉が、頭をよぎる。


「ユラくん?」


 リリアが心配そうに覗き込む。


「あ、いえ……」

「顔色、訓練前より悪いよ?」

「元からです!」


 笑って誤魔化すが、心臓はうるさい。


 ――噂は、もうここまで来ている。


 魔人事件は、

 確実に王都の“日常”を侵食し始めていた。


 ユラは、剣を握り直す。


 震えているのは、怖いからだ。


 でも。


(……それでも、逃げないって決めたんだ)


 勇者は、今日も訓練場で転びながら、

 少しずつ前に進んでいる。


第8話までお読みいただきありがとうございます!

今回は騎士団の日常と訓練を中心に、少し軽めの回にしてみました。

キャラ同士の関係性や空気感を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回から物語が一気に動き出します。

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