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ADHD勇者! 〜異世界行っても本気出せない、寝坊から始まる勇者譚〜  作者: 由良太郎


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第7話 勇者、王都に立つ。

 王城の謁見室は、息が詰まるほど静かだった。


 玉座は空席。

 代わりに半円状に並ぶ王政評議会の重鎮たちが、ユラを見下ろしている。


(王様いないんかい……!

 いや、いない方がマシなのか?)


「勇者ユラ」


 中央の老貴族が、名を呼ぶ。


「王はお前に期待している」

「えっ」


(知力が鈍才なの、知らないのかな…)


「“勇者”という存在そのものに、だがな」


 一瞬、希望が灯りかけて――すぐに消えた。


「ですよね……」


 評議会の空気は冷たい。


「魔王軍の動きが活発化している」

「四天王の一角が、南部で確認された」

「王国騎士団長ですら、単独では勝てぬ相手だ」


 ユラの喉が鳴る。


(四天王……?

  …ラスボス級じゃない?

 まだチュートリアルも終わってないんだけど)


「さらに――」


 老貴族は一枚の書類を机に置いた。


「最近、王都近郊で“魔人”が確認された」

「……魔人?」


「勇者、聞け。」


「元は人間だ」

「!?!?」


 ユラの声が素で裏返る。


「魔王軍の用意した薬剤により、魔物に近い存在へと変質する」

「力は常人を遥かに超える」

「理性は、もはやない。」


 ざわり、と室内が揺れる。


(……元、人間。)


「勇者であるお前には、知る権利がある」


(巻き込む気満々ってことだよな)


「ユラよ」

「は、はい」


「まずは生き延びろ。それで」

「ーー魔人を殺せ。」


 それが、王家から勇者への“最初の命令”だった。



 その日の午後。


 ユラは王都騎士団の宿舎に放り込まれていた。


「今日からここがお前の寝床だ」

「…狭くないですか?」

「個室だ。文句を言うな」


 レインハルトに案内された部屋は、

 確かに“最低限”だった。


 ベッド。

 机。

 剣立て。


(……村の方が快適だったよ)


 外では、騎士たちが訓練している。


 剣と剣がぶつかる音。

 怒号。

 笑い声。


(うわ、陽キャ集団だ……)


 その時。


「――あ、新人?」


 明るい声がした。


 振り向くと、赤茶の髪を束ねた少女が立っていた。

 軽装の騎士服。背は低めだが、目がやけに強い。


「え、あ、はい」

「へぇ……」


 少女は、ユラをじっと見て――


「……これが勇者?」

「すみません、期待外れで」

「いや、思ったより普通」


 普通、が一番刺さる。


「私はリリア」

「騎士団所属。よろしくね、勇者くん」


「ユラです」

「ユラくん、顔色悪いけど大丈夫?」

「生まれてからずっとこんな感じです」


 リリアは吹き出した。


「ははっ!

 安心した、ちゃんと人間だ」


(何を基準に……?)


 だが、その笑顔を見て、

 ユラの胸の奥が、ほんの少しだけ軽くなった。


 ――同時刻。


 王都の外れ。


 薄暗い路地で、一人の男が呻いていた。


 腕に、注射痕。

 皮膚が、黒く変色していく。


「……あ……ああ……」


 理性が、崩れていく。


 魔人事件は、すでに始まっていた。

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