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ADHD勇者! 〜異世界行っても本気出せない、寝坊から始まる勇者譚〜  作者: 由良太郎


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第17話 勇者は決意する。


「やばい、ヤバすぎる……!」


ケルトの喉がひくりと鳴った。


視線の先――

そこに立つのは、もはや人ではない。


魔人と化したレインハルトは、不気味な魔力を全身から噴き上げながら、静かにこちらを見据えていた。

黒い靄が揺らめき、空気が軋む。


その圧に、騎士たちの足がすくむ。


「ケルト!」


大柄な騎士――ガゼルが低く言った。


「王都へ向かえ。報告だ。緊急依頼を出せ」


「え? まさかガゼルさんは――」


ガゼルは口元を歪める。


「コイツを引き受けるさ」


そう言って、一歩前へ出る。


「《鋼壁展開スティール・フォート》」

「《守護重層ガーディアン・スタック》」

「《聖盾陣ホーリー・バスティオン》」


重ねがけされた防御スキルが、幾重もの光となってガゼルを包む。

地面に魔法陣が展開し、透明な障壁が幾層も重なる。


「ケルト、頼んだぞ!」


背後から別の騎士が叫ぶ。


その瞬間――


黒衣の魔人が、レインハルトに命じた。


「行け」


レインハルトは無言。


ただ、地を踏み砕き、一直線にガゼルへ突撃した。


衝撃。


防御陣が軋み、森の木々が吹き飛ぶ。


同時に、ケルトは馬へ飛び乗った。


「畜生! ガゼルめ……絶対生きてろよ!」


手綱を引き、王都へ向かって駆け出す。


風を切る音。

鼓動がうるさい。


――だが。


森の街道途中。


複数のオークの死体が転がり、その先に重傷を負った騎士パーティの姿があった。


「おい! 無事か!」


駆け寄るケルト。


血の匂いが濃い。


「状況は最悪だ。レインハルトが……魔人化した。すぐに逃げろ」


簡潔に伝える。


しかし。


重傷の騎士が、力なく笑った。


「みてくれ……この足。もう逃げれないよ」


視線を落とすと、膝から下が無残に潰れていた。


ケルトは言葉を失う。


この戦いは、想像以上に深刻だ。


歯を食いしばり、再び馬を走らせる。


王都へ。

救援を。


――その頃。


黒衣の魔人は、騎士たちの戦闘を静かに観察していた。


(弱い……)


いや、違う。


レインハルトが、弱体化している。


魔人となれば、力は増幅されるはず。


だが今の彼は、本気を出していない。


ガゼルが息を荒げる。


「はぁ……はぁ……バケモノめ……!」


対するレインハルトは、表情一つ変えない。


攻撃は鋭い。

だが、どこか遊んでいる。


まるで――


かつての模擬戦を思い出すかのように。


ガゼルの動きをなぞるように、受け、弾き、押し返す。


無言のまま。


ただ、戦いを“なぞっている”。


黒衣の魔人は細めた目で呟いた。


「……なるほど」


まだ、完全には堕ちていない。


だが、それも時間の問題だ。



一方。


ユラ達四人は森を移動していた。


足取りは重い。


ユラは歩きながら、リリアとの記憶を思い返していた。


笑った顔。

叱られた日。

剣を褒められた瞬間。


胸が締め付けられる。


(俺が……もっと強ければ)


自責が止まらない。


その時。


前方に、オークの死体と重傷の騎士の姿が見えた。


「おい!大丈夫か!」


駆け寄るバルク。


騎士の男が顔を上げる。


「君達……リリア様はどうした?」


四人の表情を見て、察した。


「そうか……」


目を伏せる。


沈黙。


バルクが問いかける。


「すまない。本隊を見かけたか?」


騎士は短く答えた。


「壊滅だ」


「なんだと!」

四人が息を呑む。


「お前達も逃げたほうがいい。殺されるぞ。レインハルト様が……魔人になった」


その言葉。


ユラの視界が揺れた。


皆が絶望する。


四人は、事前に決めていた。


リリアや騎士達の無駄死には避ける。

成果を必ず上げる。


魔人を必ず討つと。


しかし、本隊の壊滅。

レインハルトが魔人になったこと。

これらのイレギュラーが四人を思い止まらせる。


「逃げよう……勝ち目がない。」


マルクスはそう言った。


「じゃあリリア様はどうなる。

俺たちはなんとしても敵を打つんだ!」


エドウィンが怒る。


「同意見だ。」

「危なくなったらにげればいい」


バルクも賛成した。


「俺が必ず魔人を倒す」


ユラは本気だ。


マルクスが静かに言う。


「分かった」


ユラは拳を握る。


怒りが溢れ出す。


皆、前へ進む。


四人は村へ向かって歩き出した。


魔人と、そして真の黒幕と対峙するために。

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