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梅の花咲く頃に  作者: 瀬戸 玉華
2/2

2.別世界

2話目です。

よろしくお願いします。

薫は迷っていた。数日前に連絡先を受け取ったあの男に連絡するべきかどうかー。


「モデル……」


数日前の自分の声が、妙に生々しく頭に残っていた。

何度もスマホに手を伸ばし、引っ込めた。


何日この状態だろう。


深く息を吸い、吐き、薫は意を決して画面を押した。

呼び出し音がやけに長く感じられる。


『もしもし!薫?』


相変わらず明るい声。しかもいきなり名前呼びかよ!と薫は心の中で突っ込んだ。

だがその軽さに薫は少しホッとした。


「あの……その……本当に、いいのかよ」


『いいって言っただろ。いつにする?今日?明日?住所送るわ』


 テンポも温度も、薫とはまるで違う。

返事をするより早く、通知が届く。


「じゃ……明日の13時」


 マップを開き、赤い印を目指して歩く。

バス通り。人通りの多い道。やがて、街の喧騒が遠ざかる。

住宅街は静かすぎて、自分の靴音ばかりが耳に残った。


「……この辺?」


 目的地を示す赤い印と、自分がいる場所を表す三角が重なった。

顔を上げると右側に土の塀が続いている。まさか、と思い塀づたいに歩いていくとー

角を曲がったところで、真也が塀にもたれて待っていた。


「おう。来たか」


 こっちだ、と首で示された先を見て薫は文字通り固まったー。 


 息が止まる、という表現は比喩だと思っていた。

だが本当に息が止まった。

真也が示したのは、土塀にふさわしい日本家屋の、重厚な木造の門だった。


(ウソだろ……)


 その門は、まるで別世界の入口のように薫の前に立ちはだかった。

厳かで、静かで、どこか冷たい。

その前に立つだけで背筋が伸びる。

表札には、端正な字で「藤原」。


 数日前笑っていた男が、この門の向こうの人間なのか。

薫の中で、現実と距離が、ゆっくりと形を変えていく。


ーーこの門をくぐるたびに、

薫が失うものと得るもの、その重さを知るのはまだ先のことだった。

次回少々お時間空くかもしれません……

年末年始忙しいですね。

お身体大事になさってください。

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