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銀翼のヴァルキリー -その翼は、自由を識る-  作者: 翔司
第三章 銀翼と王女の邂逅

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第七十五話 雷閃師団

 オリビアたちがイストガレスと刃を交えた、その数日後――

 ブラックモア帝国の中枢では、不穏な空気が満ちていた。

 重厚な石造りの回廊を抜け、部屋へと駆け込んできた一人の一般兵が、息を切らして膝をつく。


「報告致します!

 ベルファルドがセレスティアの手に落ちたとの報告が来ました!

 また現場に向かっていた、レオン伯爵はまだ駐在しているとのことです!」


 簡潔だが、内容は重い。


 それを受ける男は、口の端を歪めた。


「来たな……」


 低く、噛みしめるような声。


「オリビア・エルフォード。

 ベルファルドなんて関係ない。

 お前が表に出てくるのを待ってたんだ」


 拳が、ぎしりと音を立てて握り込まれる。


「今度こそ、ぶっ飛ばしてやる」


 次の瞬間――


 バチンッ!!


 バチンッ!


 雷が、男の拳から床へと弾け飛んだ。


 黒曜石の床に走る紫電が、空気を焼く。


「う、うわぁ!」


 一般兵は悲鳴を上げ、慌ててその場から逃げ出した。


「そんなに盛ってちゃ、逃げられちゃうわよ?

 団長さん♡」


 甘く、からかうような声。


 柱の影から、しなやかな肢体を揺らして一人の美女が姿を現す。


 黒衣に身を包み、微笑みを貼り付けたその女――シェリルだった。


「……シェリルか」


 リュカは鼻を鳴らす。


「ふんっ。今度は逃がさないさ。

 次こそは……」


「ふふっ。えらくあの中隊長さんに御執心なのね〜」


 シェリルは指先をひらひらと振り、楽しげに笑う。


「あの女は強い。

 それは確かだ。

 理由など、それで充分だ」


「でも、しつこい男は嫌われるわよ?」


 そう囁くと同時に、シェリルの姿は闇へと溶けるように消えた。


「……ふん、得体の知れないやつめ」


 リュカは吐き捨てるように言い、グラスに注がれた葡萄酒を一気に飲み干した。


 コンコンッ。


 扉を叩く音。


「だんちょー、そろそろいくのです?」


 ちょこちょこと軽い足音を立てて現れた、小さな影。

 少し尖った耳。

 金髪のツインテール。

 雷閃師団団員――ガーネ・ブロムハート。

 見た目は幼い少女だが、その実、百年以上を生きるドワーフ。

 長き修練の果てに得た格闘術と魔法は、師団でも随一だった。


「あぁ、出るぞ」


 リュカは短く答え、得物を手に取る。


「やっとか、団長」


 低く響く声。

 そこに立っていたのは、巨大な体躯を誇る猫耳族。

 ライオンの血を引く男――レオ・ライオネル。


「ようやく我も、噂の銀の戦乙女と相見えることができる」


 立っているだけで、百獣の王の威圧感が周囲を圧する。


「ヴが……」


 その背後から、低い唸り声。

 深い森の奥に棲むという戦闘民族。

 言葉を持たぬ狂戦士――ザルグ・ヴァルグ。

 理性よりも本能で戦う存在。

 通常の戦術など、彼の前では意味をなさない。

 リュカは三人を見渡し、口角を上げた。


「全員集まったようだな。

 ようやく獲物が出てきたんだ」


 一歩、踏み出す。


「ここで、みすみす見逃せない。

 いくぞ!」


 雷閃師団は、その命令を合図に動き出した。


 獣、死神、老練なる拳。

 そして――雷を纏う狂戦士。

 彼らは今、セレスティアとの戦いへ向け、進軍を開始したのである。

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ハイファンタジー
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