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銀翼のヴァルキリー -その翼は、自由を識る-  作者: 翔司
第二章 銀翼は祈りを抱いて

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第三十七話 同盟

 ――その二日後。

朝靄の拠点に、エヴァとダークエルフの一行が姿を現した。

オリビアは笑顔で迎える。

「ようこそ、エヴァ」

「あぁ、今日はよろしく頼む」

拠点の中央、最も大きな屋敷に案内し、主要メンバーが揃う。

オリビアは皆を見渡し、声を上げた。

「改めて、私たちはエヴァ達と同盟を結ぶ。これは対等なものであり、相互的に協力し、これからを共に歩んでいく仲間となる。皆、よろしく頼むわね!」

続いてエヴァが言葉を重ねる。

「我らダークエルフはあの戦い以降、不干渉を貫いてきたが――ここから先、この銀の戦乙女が率いる者達と共に戦争を止めに進む。皆、よろしく頼む!」

その瞬間、場の空気が熱を帯びた。

それは歴史の頁が音を立ててめくられるような瞬間だった。

そして、沈黙を破るようにサンドとエルドゥが声を揃える。

「宴だーーーーーーーーー!!!」

「宴だーーーーーーーーー!!!」

それに続いて、エヴァが高らかに笑う。

「よし、調印は明日だ!今日は宴だーーーーーー!!!」

エルビスとセレナが肩をすくめて笑い、オリビアとラウニィーは互いに視線を交わし、微笑んだ。

夜が訪れる。

焚き火の光が溢れ、木の葉がその影を踊らせる。

酒の香りと笑い声。

あの日、誰もが忘れていた“平和の音”がそこにあった。

やがて、エヴァが杯を手にオリビアの隣に座る。

「オリビア、ありがとう。こんな日が来るとは思わなかった。感謝するよ」

オリビアは微笑みながら答える。

「エヴァ、こちらこそよ。それにこの結果を選び取ったのは紛れもなくエヴァ達よ。あなた達のこれまでの耐えと、ここでの決心、これからの歩みを無駄にしないようにしていきましょ。あなた達と共に進めることを誇りに思うわ」

エヴァの目に光が滲む。

「私はあんたの事を大好きになったよ、オリビア」

そう言って、彼女はオリビアを抱きしめた。

酒の香、涙の温度、そして確かな絆の鼓動。

しばらくして、エヴァがふと思い出したように顔を上げた。

「そうだ、オリビア! 二、三聞きたいことがあったんだ!少し話せるか?」

「改まってどうしたの?」

二人は丸太に並んで腰を下ろし、杯を傾ける。

エヴァがオリビアの腰の双剣を指差す。

「その武器、どうしたんだ?」

「これは私の師匠が譲ってくれたものよ。武器がどうかしたの?」

エヴァの表情が少しだけ真剣になる。

「その師匠っていうのはアルノーか?」

オリビアの目が見開かれた。

「そうだけど……アルノーさんを知ってるの?」

「あぁ、知ってるよ。二十年ほど前だったかな。あの日も原因はわからなかったが、魔物達が大群で里を襲って来たんだ。その時に私の娘の命を救ってくれたんだ。今回のお前達のようにな。アルノーは一人だったがな。で、その時に私は長としてアルノーに感謝の形としてその武器を贈ったんだ。アルノーが一人の部下を庇って死んでしまったのは知ってる。まさかその武器を他でもないお前が携えて、同じように里を守ってくれるとは……運命としか言いようがないな」

エヴァは笑いながらオリビアの肩を叩く。

オリビアは静かに拳を握った。

「その一人の部下っていうのが私なの。アルノーさんは私を庇って戦死した。そんな私を軍に推薦したのもアルノーさん。そして、アルノーさんは私にこの剣を譲ってくれた。私はアルノーさんの意思もみんなの想いも絶対に無駄にしないわ」

エヴァはその拳に手を重ねた。

「私達もいる。大丈夫だ」

そして、少し間を置いて続けた。

「あ、そういえばもう一つ聞きたいんだが、鍛治師を探したりしていないか?見たところお前達の装備はどれも傷だらけだから、おそらく武具を整えれる者が居ないのではないかと思っていてな」

オリビアは驚きの表情で頷く。

「そうね、確かに鍛治師は探しているわ。実はこの森の少し奥にミスリラの鉱脈を見つけたの。一緒に未発見の鉱物も見つけたわ。でも鍛治の技術を持った者が私たちの中には居なくて」

エヴァの顔がぱっと明るくなる。

「それなら一つ頼まれて欲しいんだ。私のひ孫に当たるリーヴァってのが居るんだが、鍛治師なんだ。リーヴァは小さい頃から世界に触れたがってた。そういう風習を持たない里の中では異端扱いされてきていたが、私はリーヴァは素晴らしい鍛治師になると思うんだ。お前たちが良ければリーヴァの事を頼まれてくれないか?」

オリビアは嬉しそうに笑った。

「それは願ったり叶ったりだわ!こちらからお願いしたいくらいよ!」

「よし!じゃあ決まりだな!明日の調印の後に正式に紹介する!リーヴァの事頼むな!」

その夜。

炎は揺れ、笑い声は止まらず、星々は静かに見下ろしていた。

こうして――

新たな時代の扉が、音もなく開いた。


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