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リスミー暦※338年11月25日(大会3日目)
翌日、寝ぐせをたずさえヒョンジュは食堂にいた。恒例となったドーム1Fの広場、そこの頭上、さらには天井付近にまで大小さまざまな電子パネルがあらわれては消え、きのうのレースのことだけを放送している。バイクからの疾走感ある映像、臨場感あふれる戦闘シーン、飛空艇からの俯瞰した地上のようすなどを現役、元プロスポーツ選手、とくに当レースともっとも競技ルールがちかい「アイソゾーム」プレイヤーを中心に、ユーパンにいる各専門家たちがあーだのこーだの解説しながら、現地の戦況をちくいちつたえていた。複数の電子パネルの音量とフードコートのけんそうがあいまって、朝っぱらからなかなかに騒がしい。しかし、ヒョンジュは心ここにあらずといった具合で、きのうのことをおもい返していた。
・・カップル、か・・
恋わずらいもあってか、かるめの食事をすませると球装着済みのかれは、そのまま昨晩、クレイととりきめておいた油絵がかずおおくかざってある自販機のまえへ。
「・・おはよう、クレイ・・」
「・・あ、おはよ、ヒョンジュ・・」
きのうのことがあってか、2人ともどこか余所余所しい。それから「ミドリノトオリ」をとおり外にでると、ほどなくして上からアナウンスが流れる。
「・・えー、おはようございます選手のみなさま。ただいまより大会3日目の競技説明をおこないます。コースは全長32キロ、前回にひきつづき急勾配がおおく、ところどころ崖に面しているなど、岩場の難コースとなっております。ですが、10キロを過ぎたあたりからコースはなだらかな砂地へと変化、競技ルールの変更はとくにありません、が注意事項がひとつ。レース中、けが人が多数でております。こちらでコース内と各宿泊施設に医療班を配備してはおりますが、ケガの際や万が一の場合はきほん、自己責任となっておりますので、くれぐれもご注意のほど。スタートまでおよそ10分、しばしおまちを・・」
スタート地点には6万をこえる群衆。3日目とはいえ、いまだこの物々しさにはなれない。しかし、「朝日」とよばれる我らをてらすバト・キアリの陽光はなんともぬくく、日を増す(ま)ごとにクセになる。
「・・スタートまで5分をきりました。実況はわたくし、イチロウ・トチサカ。解説はリーゼオリンピック、マラソンの金メダリスト、イヒャム・ポゾンゴ選手です。どうぞよろしくお願いします・・」
ウォームアップののち、すこし照れながらもクレイと目配せするヒョンジュ。今回も作戦はかわらず、10分間のプレパレタイム(プレパレーションタイム)で孤立すべく進路をかえたのち、最短ルート32kmの道のりからわずかばかりふくらんだコース取りで、できるだけ参加者と出くわすことないようゴールをめざす。
「・・スタートまで10秒前・・5秒前、4、3、2、1、スタートォ!・・」
とはいえ、群衆からはなれるといっても10分間あまりで6万のなかから完全な孤立はむずかしく、しかも皆ひとつのゴールをめざしている以上、幾人かとの遭遇はまずまぬがれ得ない。だがその場合には争いをさけるため、すみやかに距離をとり、敵意がないことをあいてに示しやりすごす。日ごと微調整はしているものの、26万いた初日から13万のきのうと、ほとんどおなじ手口で難をのがれてきたヒョンジュとクレイ。そして3日目のきょうも、このやりかたで他選手と目立った接触もないまま、2人は7時間をかけのこり2kmのところまできていた。
「・・クレイ、すこし休む?・・」
「・・いや、あたしは平気・・」
「・・OK・・じゃ、このまま行こう・・」
「・・ええ・・」
時刻は3時、ゴールまではゆうゆう間に合っていたが、如何せん2人そろって球のノルマをみたしておらず、最悪、導きの門のまえでまちぶせすることも視野にいれていたてまえ。
「・・ヒョンジュ!・・」
ようやく探しものがみつかる。前方50mほどの砂地をとぼとぼとあるく人影がひとつ。いっきに加速すると、たちどころに射程圏にはいる。そしてそのままガラ空きのあいての背中めがけ、ヒョンジュの右うでがのびる。ザザァーという砂ぼこりとともに急停止、が、わずかばかりふみこみが浅かった。
・・くそぅ・・あとちょっと、だったのに・・
うえからしたまで真っ黒なディッシャーでよそったコーン付きアイスが肩にそそりたつように、あいてのライフボールがかすかに揺れている。だがそんななか、2人はあいてへの警戒をつよめていた。というのもそれ以来、あいてがピクリともしないのだ。両の足でたってはいるものの、こちらを向くわけでもなくただうつむいたまま、まるで時がとまってしまったみたいに。そのマネキン人形の如きたたずまいは2人にとって不気味の一言だった。するとしばらくして相手にうごきが。
「・・あー、そっか・・おりゃ、レースしてたんだっけ・・ねらわれて当然か、ハハハッ、笑えるぜ・・」
オレンジの図形のもよう入りのしろいTシャツに黒のGパン、ながい白髪のすきまからはすこしだけ表情がかいまみえる。
「・・そんであんたら、おれのライフボールが欲しいのか?・・べつにくれてやるよ、こんな腐れ球・・」
そういうと、みずからの左肩にそびえたつライフボールをぺしぺしと手荒に叩いてみせる男性。ますます2人の頭のなかでは?(クエスチョン)マークが増産されていく。
「・・あ、ここで会ったのもなにかの縁だ・・ひとつきいてもいいか?・・」
「・・ああ、かまわないが・・」
「・・ちなみにあんたらは何しにここへ?・・」
「・・オレは、自分を見つめなおすためにこのレースに・・」
「・・アタシも、自分をみがくため・・」
「・・へーそっか、ご立派な理由でなにより・・で、できたのか?、その自分を見つめなおすってやつは?・・」
「・・・・・」
「・・隣のあんたはみがけたか?、自分ってやつを・・」
「・・・・・」
「・・だろうな、自分をみつめなおすっつうのは難しいからな・・まぁ、まだはじまって3日ってことももちろんあるが、何日経とうが、環境がかわってもできない奴にはできない・・あー、やっぱりやーめた、アンタらにやるの・・」
「・・?・・」
「・・こんな球、オレにとっちゃもはやどうでもいい・・だけど、あんたらにやるのだけは止めた・・」
「・・ちょ!・・」
「・・待ってください・・」
背を向けようとしたおとこを、ヒョンジュがひきとめる。
「・・なにか勘違いしてませんか?・・おれはあなたに球をゆずって貰いにきたんじゃない、うばいにきたんだ・・」
「・・へ~、オレの球をうばいにか、いうね、じゃあこちらも言わせてもらうけど・・いくらラドックス星にきても、そんな馴れあいの甘ったりぃこころざしじゃ、なにもかえられやしない・・所詮ここにくるだけ、ムダだったという話、わかった?・・わかったらさっさとユーパンに帰れ・・」
一転して、しろい長髪のあいだから、カミソリのごとくするどい眼光が2人へとむけられる。
「・・なれ合いだのできないだの、侮辱するのはそちらの勝手だが、ムダかどうかは戦ったあとできめればいい、ちがいますか?・・」
「・・たしかに、ごもっともな意見・・しかしごもっとも過ぎてヘドがでる・・」
「・・?・・」
「・・じゃあ、こう言えばわかるかな、球をあげるのはもちろんのことやる気が失せた・・」
「・・!?・・」
「・・俗にいうなえたってやつだ、カップルのままごとにかまってやれるほど暇じゃないんだ、すまない・・」
・・なんなの、こいつ・・ホントむかつく!・・
そう、クレイが悠長にイラついているときだった。となりにいた人影がうごく。背をむけたあいてに一直線、そして交錯。
「・・ふ~・・」
ヒョンジュの奇襲にやれやれといった態度である。
・・ヒョンジュ・・
「・・かまってほしいって訳か・・でも何度もいうように、アンタらとはたたかわない・・話していてわかるんだ、オレとあんたらじゃ住む世界がちがうって・・なにもとは言わない、でもたたかっても得るものなんてないって・・そう、おれはこんなところで立ち止まれない、立ち止まれないんだ・・」
間髪をいれず、さらに問う。
「・・どういうことですか?、さっきから・・自分を見つめなおせてないだの、得るものがないだの・・一体、オレたちのなにを知ってるっていうんですか?・・」
「・・ヒョンジュ、もういいよ・・行こう・・」
しかしクレイの言葉は、彼にはとどかない。
「・・住む世界がちがう?・・それだとなんで戦えないんですか?、なんで逃げるんです?・・わからない・・そんなの、たち去る理由になってない・・」
「・・こんどは質問攻め、か・・やっぱり、アンタらとはやり合ってもしょうがなさそうだ・・」
出会ってから、こんなにも感情的になるヒョンジュをはじめてみた。そんななか、彼のつぶやきが三度相手をとめる。
「・・得るものなら、ある・・得るものなら、ここにある!・・」
そういうと、みずからの親指でひだり肩にある球をちからづよくさし示してみせるヒョンジュ。
「・・おれもそうだが、恐らくあんたもまだ球のノルマをこなしていない・・ゴールまで残り2キロをきっているこの状況で、球をうばえるならこれ以上の好機はないとおもうが?・・」
「・・そのまえになぜ、オレが球をもってないと?・・」
「・・もし球をもっているのなら、得るものがないとか住む世界がちがうとか、いちいち回りくどいいいわけをするまえに言ってるはず・・なぜなら、断る理由としてはそれがもっともスジがとおっていて正論、なおかつ手っとり早い・・」
「・・なるほど、じゃあこれならばどうだ?・・球のことはオレがおっちょこちょいで、ついつい言い忘れただけ・・でもそうか、その手があったか、ありがとう、断る理由をわざわざおしえてくれて・・残念ながらオレはもう球をもっている、だからきみらとは戦えない、なぜならたたかう必要がないから・・」
不運にもいいくるめるどころか、ぎゃくに敵に塩をおくってしまう形に。するとそんな彼のピンチを、いがいにもクレイのぶしつけな質問がすくう。
「・・で、どっちなのよ、ライフボール持ってるの!?、それとも持ってないの!?・・」
「・・わぁった、わぁった、わかりましたよ・・あぁウソですよ、その場しのぎの・・お察しのとおり、球はもってない・・でも、だからといってアンタらとやる理由にはならない・・球のひとつやふたつ、ほかで調達すればいいことだからな・・」
「・・じゃあ、尚更だ・・」
「・・?・・」
{・・なおさら、逃がすわけにはいかない・・」
「・・ええ・・」
あきらかに2人の顔つきがかわる。
「・・本当に球をもってないのに、オレたちとたたかわない理由はただひとつ・・純粋にオレらにたたかう価値がないと判断したから・・」
「・・そんなことを言われたまま、アタシたちが見逃すとでもおもった?・・」
「・・だから言ってるだろ、はじめからそう・・」
「・・言われっぱなしは良くない、オレたちが本当にたたかうに値しないのか、ためしてみればいい・・」
「・・おぃおぃ、やるってだれが言った・・」
逃走を図ろうとするあいて、だがその行く手をヒョンジュとクレイがことごとく遮る。
「・・逃がさないって訳か、どこまでもしつこいお2人だこと、そんなにしつこいと嫌われるよ?・・こいよ、そのちっぽけな繋がり叩ききってやる・・」
やっとこさ両足を肩はばにひろげると、臨戦態勢にはいるあいて。
「・・Lank146328、イ・ヒョンジュ・・」
「・・Lank124510、クレイ・スタンチャフ・・」
「・・・・・」
・・名乗るまでもない、ってこと?・・
しかし、そんな無礼などいまさらどこ吹くかぜ、むしろヒョンジュはたたかえることに喜びをかくせないでいた。そして合図は枯葉か小鳥か石ころか、さだかではないまま2人がさきに飛びだす。
「・・オオオォォ!・・」
のびる腕、時間差をおいての2連撃。不発だとわかるとすぐさま身をひるがえし、またとびかかる、その反復。そうして、たたかいはじめて何分が経っただろう、そこには疲労し、からだを歪める3人のすがたがあった。
「・・ハァ、ハァ、ハァ・・」
・・取れそうなのに取れない、なんで?・・いや、もうすこし、あとすこしで取れる・・こんどこそ、こんどこそ・・
・・なんど攻撃し、なんどかわされた?・・このままいけば押しきれるのか?、本当にそうか?、いや、おかしい・・オレたちはたしかに、いくどとなく攻撃をしかけてきた、でも向こうからはなにかされたか?・・オレの記憶がただしければ、反撃らしい反撃はいちどもみていない・・じゃあ、なぜ反撃してこない?、コイツ、一体なにを企んでいる?・・
汗で顔にひっついた白髪、宙ぶらりんな片うで、うすよごれた衣服、そのどれもが男の苦戦をものがたっていた。
・・ふつう、こんだけ生意気にもったいぶったら、あるていどの実力がともなってなきゃおかしい、釣り合いがとれねぇ・・ランクに似つかわないつよさとか、常人にはあつかえない必殺技があるだとか・・なのに、そんなものまったくねぇ上に、やられっぱでこのザマとか、あぁ情けねぇ~・・情けぇねぇ~たりゃ、ありゃしねぇ・・
右手のひらにうつろな視線がおちると、時刻は3時半。ゴールがちかいこともあって、さかんに3人のよこを参加者がかけぬけていく。それを警戒しつつ、ヒョンジュがクレイのもとに歩みよる。それから二言三言ことばをかわすと、2人おおきく横にひろがる。
「・・?・・」
初期位置を大幅にズラし、はさみうち。だが、それでも空をきるヒョンジュの右手。
・・話しあっても、状況はかわらない!・・
「・・クレイ!・・」
・・わかってる、わよ!・・
ヒョンジュの攻撃をかわし、ちょうど左回転しているところ、そこにあいての球をでむかえるように、狙いすましたクレイの右手がせまる。
「・・くっ!・・」
・・回転した勢いが、とまらない!・・
むしろ遠ざかるどころか、クレイの手に球がすいよせられていく。
・・いっけぇぇぇ!・・
しかし、絶体絶命かにおもわれたそのせつな、おとこのからだが突如浮きあがる。
「・・え?・・」
ひだり手一本を地面につきたて、それを軸にあしを大空へとかかげる。俗にいう逆立ちである、それも回転しながらの。自然とライフボールはしたへと遠ざかっていく。
「・・?・・」
たまたま体操競技でいうところのウルトラCをきめてしまったがために、いまだ状況がのみこめないでいるクレイ。
・・とれてない、なんで?・・
・・やっぱり、なにかはあるとふんでいたが、これだったのか・・だからいままで一向に攻撃をしかけず、この機を虎視眈々(こしたんたん)とうかがっていた・・カウンターの機を・・
・・ふぅ~、あぶねぇあぶねぇ・・なんとか逆立ちでしのいだけど、ホントまぐれもいいとこ・・ってかおれ、逆立ちなんてできたっけ?(あらたな発見?)・・
あまりのことに呆然とする2人。その油断、じかんでいえばほんのコンマ数秒、しかしおとこは見逃さなかった。
・・カウンター・・
低空姿勢でしのびよる影、きづいたときにはすでに棒立ちのヒョンジュのめのまえ。
「・・ヒョンジュ!・・」
あわてて仰けぞるも、あとの祭り。千載一遇のチャンスをあいてが逃すはずもなく。
「・・え?・・うそ、でしょ?・・」
いつしか陽もかたむき、ターコイズブルーに染まる3人。するとそんななかでクレイの膝がゆっくりとおちる。
「・・なんで、なんでよ・・なんでよぉ!・・」
奪取されたまっくろな球は、おとこが力をくわえるとしぼみ、きざまれていた古字や数字もたちまちうすれていく。すると、うちひしがれるクレイの肩に、そっとヒョンジュが触れる。
「・・クレイ、おれは負けた・・負けたんだ・・その事実はみとめるしかない・・奴のほうがつよかった、単純にそれだけの話・・」
「・・・・・」
「・・おれの分もがんばって、クレイ・・ユーパンで応援してる・・」
そう言うと、すがすがしい表情でむきなおるヒョンジュ。
「・・そういえば、まだ聞いてなかった・・教えてくれないか?、きみの名前・・」
「・・すまない・・」
「・・?・・」
「・・欲しいものは手にはいった、先をいそがせてもらう・・」
「・・ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!・・」
どこまでも無礼なあいてに、クレイがごうを煮やしたちあがる。
「・・名前もいわないでたち去る気、あんた?・・ふざけないで、ふざけるな!・・まだ勝負は終わってない、あたしにはまだライフボールが残っている・・あたしがヒョンジュの仇をとる・・さぁ、きなさい、勝負よ!・・」
だが男は背をむけたまま、たちどまってはいるものの、ふり返る気配はない。
「・・もう球は手にはいった・・ここにいる理由もなくなった・・」
「・・あんたになくとも、アタシにはあるの!・・」
つい、ため息がもれる。
「・・ああ、子守もつかれる・・話をきいていたか、女?、わからないようなら教えてやる・・オレが勝って、おまえらは負けた・・負けたんだ・・」
「・・負けた?、いいえ、まだ負けてない!・・それに順当にいってれば、アタシたちが勝ってた・・勝ってたんだからぁぁ!・・」
我を忘れてとびかかるクレイ。しかし難なくかわされると、地べたにひれ伏す。
「・・勝負に順当もクソもない・・」
「・・だからぁ、待てっていってるでしょ・・名前ぐらい、名前ぐらい名乗りなさいよぉぉ!・・」
あとを追うクレイ、背後からせまるも当たらない。追いついて、またしかけてはかわされ、それを繰りかえすことおよそ4回、しかし相手はとめられず。
・・後ろがダメなら・・
こんどは前にまわりこみ、真っ向勝負。
「・・アアアァァ!・・」
だが、あえなく不発におわると転倒
・・なんで?、どうして!?・・
そんな砂にまみれたクレイの有り様に、しぶしぶ足をとめる男。
「・・なぁ、もうやめないか?、これ以上・・無益なみにくいあらそいは・・」
「・・みにくくってもいい、でも無益なんかじゃない・・意味はある!・・」
すると、おとこが改まる。
「・・オレにとっちゃ、お前らのやってることなんざ、飯事以外のなにものでもねぇ・・発言、態度、心構え、すべてにおいて平和ボケした甘ちゃんの考えかただ・・そんなんじゃここではなにも成し遂げられない、命をかけてこの星にきている人間がいることを知れ・・でも、ひとつだけ気づかされたことがあった・・認めるわけじゃないが、そのあきらめない執念だけは、見習うところがあった・・エイビャン・キルロット、おれの名はエイビャン・キルロット・・じゃあな、女・・」
鳥居状のゴールを目前にへたりこむクレイ。
「・・エイビャン・キルロット・・」
そのうすよごれた衣服とは対照的な、ユーパンにはないあざやかなバト・キアリの夕陽が、どこかかなしげに彼女を照らしているのだった。