20
いっぽうで紀八らとわかれ、晴れて自由の身となったヤニル。
・・あぁ・・うっとうしいお荷物がいねぇだけで、こんなにも風がここちいいなんて・・
すると、そんな自由を謳歌するかれのもとにしのびよる影。影はみるみるその差をちぢめると、いつしかすぐうしろにまで迫っていた。
・・!・・くっ、油断した・・
のびる魔の手。もはや身をひるがえす余裕はなく、ふりほどこうにもふりほどけない。
・・万事休す、か・・ははっ・・あいつらをまいたとたんにこのザマとは、しょっぺぇさいごだったな、この世といっしょで・・でもおれらしいっちゃ、おれらしい、か・・
目をとじ、はらをくくると苦笑するヤニル。そのときだった、なにやら背後がさわがしい。
「・・!?・・」
ふりかえればそこには、あのいまわしきおんぶバッタの兄弟が。
「・・草介にぃ~・・たすけにきたぞぉ!・・」
今し方ぶんどったであろうたまを兄からうけとり、ほこらしげに掲げる弟。するとヤニルはその光景を目にするやいなや、はしるのをやめる。
「・・だいじょうぶか、草介にぃ?・・にしても、急にきえちまったからビックリしたぞ、なぁ三郎?・・」
「・・どういうつもりだよ、一体・・」
「・・へ?・・」
「・・だれが、たすけてくれって言ったってきいてんだよ!・・」
「・・草介、にぃ?・・」
「・・かってについて来たとおもえば、たのんでもいねぇのになにからなにまで手ぇだしやがって・・そんなにおれが信じらんねぇか?、おまえのアニキって奴は、そんなにもどうしようもなくたよりねぇ、足手まといなウスノロだったのかよ!?・・もう我慢ならねぇ・・」
すると、小ぶりなリュックを地面に投げすてるヤニル。
「・・ここまでコケにされたのはひさしぶりだ・・そんなにおれが信用ならねぇお荷物同然ってんなら、いまここでちがうってことを証明してやる・・おれとたたかええ!、三郎・トンヒャー!・・」
そう言いはなつと、まえのめりにかまえるヤニル。
「・・な、・・何言ってだよ、草介にぃ・・なんで、兄弟であるおれらがたたかわなくっちゃいけねぇ?、ははっ・・」
・・ヤニル・・
それにこたえるかのように、三郎もまたおんぶ紐をゆるめると、紀八をそっとだきおろす。
「・・お、おい・・なにしてんだよ、三郎?・・」
「・・紀八、すまない・・」
・・でも、ここでひくわけにゃいかねぇ・・
そして、相対する2人。
「・・アニキのほうは、いくらか話しがわかるみてぇだな・・」
・・これが、まったくのあかの他人にかってにつきまとった、おれらの代償・・あにとしての責任、そして・・まがいものである兄弟の、限界・・
「・・Lank62373・・ヤニル・ハンバール・・」
「・・Lank6527・・三郎・トンヒャー・・」
・・そんな・・うそだろ?・・
よどんだ寒空のもと、しずまりかえる3人。
・・アニキに似てるかなんだかしらねぇが、かってにつきまとった挙句、たのんでもいねぇのにたすけたりしやがって・・おまえら、弱きをすくうヒーローかなにかのつもりか?・・あぁそうさ、おれはたしかに不憫な人間さ・・おまえらがいうように、どうしようもなくみじめですくいようのないクズやろうさ・・でもな、かんちがいすんなよ・・身内にどれだけ迷惑かけようと、まだまだ他人さまに迷惑かけるほど、おちぶれちゃいねぇんだよぉ!・・
辛抱たまらず、さきにとびだしていくヤニル。加速したいきおいそのままに、真っ向からつっこむ。
・・しりぬぐいはおれの役目・・こい、ヤニル!・・おまえのそのうっぷん、ぜんぶこのおれが受けとめてやる!・・
「・・オオオォァァ!・・」
そして交錯する両者。しかし、不発とわかっても近距離型のようにすぐに追撃はせず、あらためて間合いをはかるヤニル。そして、またそこから仕切りなおすかのように助走をつけると、ふたたびあいてめがけこんしんの一撃をはなつ。そんな、アタッカー型特有の攻防がはじまって10分。中腰で息をきらすヤニルとは対照的に、かたや息ひとつみださずたたずむ三郎。
・・くそぅくそぅくそぅ!、なんでだ?・・なんでおれのこうげきは当たらねぇのに、カウンター気味のやつのこうげきだけがこうも的確にあたりやがる!?・・
終始攻めていたかにみえたヤニルのたまだけが、振り子のようにゆれている。
・・いつでもとれるってか、なめやがって!・・あぁそうかい、よくわかったよ・・そっちがその気なら、こっちにだって策はある・・
すると険しいかおつきから一転、ヤニルがけろりとかおをあげる。
「・・さすがだよ、ほんと・・おまえら兄弟は強ぇよ、おとうとをおぶっている状態でもかてるかあやしいってのに、肝心のそのおとうとがいねぇんじゃ、はなっからオレに勝ちめなんてねぇ・・でもよ、だからって降参なんてしんでもしてやんねぇ・・みつけたよ、おめぇらに勝つゆいいつの方法・・」
「・・!?・・」
そのとたん、あさっての方向へととつじょ進路をかえるヤニル。その意図に、一呼吸おくれて三郎もきづく。
「・・紀八!・・」
1人、孤立していたおとうとのもとに猛然とせまりくるかげ。
・・ヤニル・・おまえ!・・
・・たしかに三郎・・おそらくオレはおまえにゃ、どう逆立ちしてもかてねぇだろうよ・・でも、おまえら兄弟にもおなじく勝てねぇかといわれたら、そうじゃねぇ・・このレースがお遊びじゃねぇことくらい、とっくのむかしにご存知のはずだろう?・・たとえそれが、どんなにこそくな手段であろうと、卑怯者とののしられようとも、さいごにのこったやつが・・勝ちなんだ!・・
必死にヤニルのあとをおう三郎。
・・くっ!・・間に、あわねぇ!・・
右手をふりあげると、しゃがみこむ小さなシルエットへと狙いをさだめる。
「・・そ、草介・・にぃ?・・・」
おしよせる恐怖。その狂気にみちたかれの形相が、かつてのトラウマをよびおこす。
「・・弟とはなれたのは失敗だったな・・これが、おれをなめくさったおまえら兄弟のむくい・・死にさらせぇ!、クソガキぃぃ!・・」
アンダースローーの要領でしなるみぎうで。そして数秒後、そこには雪をちらかしよこたわる3者のすがたがあった。
「・・いってぇな、このやろう・・」
砂にまみれながらも、おきあがろうとするヤニル。しかし、ヤニルの手に球はない。
・・なんとか、ギリギリ間に合ったみてぇだな・・
うつぶせの三郎のすぐよこには、あおむけの紀八のライボールがせわしなく揺れている。
・・あの瞬間、身をなげだしてヤニルのせなかにどうにかふれたことで、最悪のシナリオだけはまぬがれたみてぇだな・・でも、そのかわりこっちのほうは、もう・・
足くびのにぶい痛みに三郎がかおをゆがめていると、ヤニルがよろつきながら立ちあがる。
「・・これでわかったかよ、ばか兄弟・・おれはおまえらの兄弟でもなければ、ましてアニキなんかでもねぇ・・第一、実のアニキならかわいい弟にこんなまねはしねぇはずだ・・わかったら、2度とおれのまえにあらわれんじゃねぇ、2度とおれのことをあわれむんじゃねぇ、そして・・2度とそのなで呼ぶんじゃ、ねぇぇ!・・」
そうすて台詞をはくと、ヤニルは粉雪のむこうへときえていくのだった。
ときをおなじくして、よこたわる女性のそばでひざまずく男性のすがたがみえる。おとこは胸をおさえると、あきらかに体に変調をきたしていた。
・・かくごはしていたが、薬をのんでいても尚このいたみか・・やってくれるぜ、恋ナナさんよぉ・・
ほどなくして呼吸が暴走をはじめると、力なくかのじょのかたわらにたおれこむ。
・・すま、ねぇ・・ゼロ・・
そんな瀕死の2人を、じっとみおろす男。
・・実力をみとめたあいての球は、いただくのがぼくのポリシー・・でも、今回ばかりはすこし毛色がちがうようだ・・レディのほうはまだしも、ナイスガイのほうは実力もろくにだせぬままなにかに苦しみだしたかとおもったら、早々にうずくまってしまった・・ここでかれらの球をうばっては、サバンナで死肉をあさるハゲタカも同然・・いや、ちがうな・・ふと、笑みをこぼすボロレス。
・・しょうじきに白状すると、すなおに惜しいとおもってしまった、きみら2人がここでおわってしまうことが・・それにかんじたんだ、この星とおなじくらいきみら2人にもなにか可能性ってやつをさ・・まったく、ぼくもおひとよしで困る・・でもガイ・ビロッチ、ゼロ・フィーガストン、きみら2人にはいずれまたどこかで会う、そんなきがする・・
そしてきびすをかえすと、おとこもまた粉雪の白にまぎれるのだった。
リスミー暦※338年11月30日(大会9日目)
9つめのコテージに到着する8人。8人は各々(おのおの)にしばしの休息をはさむと、6時を皮切りにぞくぞくと食堂にあつまりはじめる。そしてバイキング料理をとりわけ、しぜんとひとかたまりに席につく。
「・・いただきま~す♪・・」
みなが手をあわせるなか、我先にとくちいっぱいに食材をほおばるネスタ。左斜めうえにうかぶモニターでは、本日のレースがさかんに放送されている。
「・・とくに、Lank804のイグネシア・トロリノ選手と、Lank2544のディロイ・フォマッカス選手の活躍はめざましいものがありますねぇ・・2人とも「森のイグネシア」「義足{ぎそく}のディロイ」と通り名があるほど注目されていますから、あす以降のレースも目がはなせません!・・」
「・・へぇ~、通り名ねぇ・・」
そんなテレビなどおかまいなしに、なおも白飯をくちにつめこむネスタ。
・・スペアリブたべづらいけど、白米がすすむわ・・やっぱスペアリブは骨があってなんぼよね・・
いっぽうでエイビャンも、ある味覚の変化をかんじていた。
・・あれ?、ナポリタンってこんなに濃かったっけ?・・
味をたしかめるように、小分けによそった料理をつぎつぎとくちにはこぶ。ハンバーグ、豚のしょうが焼き、ポテトサラダにエビフライ。
・・う、うんめぇ・・ナナトニだったころもかろうじて味はしてたけど、本来飯ってこんなにうまいもんだったっけ?・・味してたのがむかしすぎてわすれてたわ・・さすが人間の三大欲求、くちのなかで味がマリアージュしていく・・これが、たべるしあわせってやつか!・・
くちをぱんっぱんにふくらませ、恍惚の表情をうかべる2人をよそに、ひとりなやみだすバイロン。
「・・んー、おれだったらなんてつけるかなぁ、通り名・・あ、これなんてどうだ!、豪傑のバイロン・・な?、いいだろ、ポンコツ?・・」
「・・!?・・あ、ふぁい・・」
・・急にはなしをふるんじゃないよ、・・そもそも通り名はじぶんでつけるもんじゃないの、ったくバカなんだから・・おたくはついてもせいぜい、「筋肉刺青バカ」がいいとこ・・
「・・ティカ、おまえならなんてつける?・・」
「・・え、わたしですか?・・わたしは通り名がつくほど実力がありませんから・・」
・・「やぶ医者X」・・とくべつに、おまえの通り名はオレがつけてやんよ・・
はち切れんばかりのくちもとで、小ばかにするエイビャン。
「・・そういうのいいんだよ、ティカ・・つけるとしたらの話しなんだからよぉ・・えっと、こいつは「ポンコツのラル」で決定だから・・じゃクレイ、おまえは?・・」
「・・あたし?・・あたしは、んー・・「うるわしのクレイ」、とかかな?・・」
いったそばからかおを赤らめるクレイ。
「・・つ、つけるとしたらだよ!?・・」
「・・うるわしのクレイか・・いいじゃん♪、なるほどな・・」
・・はずかしがるんなら初めからいうなよ・・でも、その通り名はよくない、よくないなー・・そうやっていつも、
おとこ共にこびへつらって加点をねらうのがおのれの常套手段なのがみえみえ、あーやらしいやらしい・・みずからをうるわしいといっちゃってる時点で、おまえの通り名は「姑息尻軽女、クレイビッチ」だ!・・
人一倍通り名でたのしむエイビャン。
「・・そんじゃ、大トリはまちにまったビューさん・・おねがいいたします♪・・」
「・・もぅ~、大トリだなんて・・憩いのひとときにどんだけのプレッシャーをかけるつもりよ~、バイロン・・」
「・・すいやせん・・さいご、トリをかざるにふさわしいのはやっぱりおれたちのアジアンビューティー、ビューの姉さん以外いないとおもいやんして・・」
「・・もぅ~、エイビャンを祝してきょうだけ特別だからねぇ~・・」
・・なんであたしとエイビャンにだけふんねぇんだよ、このスケベあにきめ・・
すると、おもいのほかまんざらでもないビューが、たのんでもいないのに立ちあがる。
「・・あたしの通り名はこれよ・・1億人の電撃少女・・泣く子もだまる、シズカ・トットホールなんだから!、だからぁだからぁ(エコー音)・・」
ウィンクついでに往年のゆびさし悩殺ポーズをきめると、かのじょの耳元にだけわれんばかりの大歓声がこだましているのだった。
・・な、なんて・・可愛いんどぅぅぅ・・
・・うん、きょうはなんとかたべれそうだ・・
あぜんとする5人のよこで、切実に干物をかみしめるヘイセスと、ひとり昇天するバイロン。
「・・はッ!・・」
ふと我にかえり、じぶんがやらかしたことの重大さにきづくビュー。
・・いっけない、ついくせでむかしの芸名でポーズまできめちゃった・・あっちゃ~・・
「・・あー、いまのは・・えーっと・・」
・・1億人の、電撃少女?・・シズカ・トットホール??・・
5人のあたまを疑問符がかけめぐる。
「・・ちょうど、このまえネットCMでみたのよね・・こんなセリフ、ははっ・・」
・・どうしよう、こんなんでごまかせる、かしら?・・
「・・いやーーすごい♪・・ネットCMでみたものをここまでわがものにしてしまうとは、さすがはビューの姉さん・・しかもそのネットCMのアイドル?、の名をとっさにじぶんに組みこんじゃうとは!、やはりものがちがう!・・」
「・・えへへっ・・」
・・あら、もしかして・・なんとかなった?・・
「・・あの~・・」
すると、そこにラルが珍しくきりこむ。
「・・まえまえから気になってはいたんですけど、あなたやっぱりシズカ・トットホールさんですよね?・・」
「・・!?・・」
「・・なにいってんだよ急に、ポンコツぅ!・・すこしだまってろ・・」
「・・えっとぉ~・・バレちゃった?・・」
そうそうに観念するビュー。
「・・やっぱり!・・あったときからどっかでみた顔だとおもってたんですよ~・・」
「・・おい、ポンコツ・・どういうことだか説明しろぃ・・」
「・・うるせぇ、筋肉ばか(ウィスパー)・・シズカ・トットホール・・たしか10年ほどまえに、芸能界を引退したアイドルですよ・・」
「・・アイドル?・・」
「・・はい、おれもそこまで詳しいわけじゃないですけど・・そんなおれでも、何度かテレビでみたことがあります・・」
「・・へぇ~・・」
改めてまじまじと、かのじょをみる一同。
・・すごい・・あたし本物のアイドル、はじめてみた♪・・
・・アイドルだったのか・・おれのこころをわし掴んではなさないわけだぜ・・
・・っつうかTVみんなよ・・ポ・テ・サ・ラ・うまっ!・・
「・・えへへっ・・別にないしょにしてた訳じゃないけど、とくにいうことでもないし・・それにずいぶん昔のはなしだから・・」
・・ん?、ってことはまてよ・・引退後のかのじょのサインはおそらく、マニアのあいだではそうとうな高値で取り引きされるはず・・
舌ペロして、どうにかその場をやりすごそうとこころみる元アイドル。しかしそんなかのじょをとりにがすまいと、下心満載のラルがねらいをを定める。
「・・あのぅ、もしよかったらなんですが・・サインなんていただけたり、します?・・」
「・・え、サイン?、わたしの?・・もう何年もかいてないし、わたしのサインをもらったところで・・ねぇ~・・」
「・・いえ、是非ほしいんです!・・ファンだったんです、おねがいします!・・」
めにみえて煙たがるアラフォー電撃少女。
・・ってか、ラルあんたさぁ・・そこまでくわしくないとかファンだったとか、一貫性なさすぎ・・ミネストローネうますぎ・・
「・・おい、ポンコツぅ!・・ビューさんが困ってらっしゃるじゃねぇか、ころすぞ、コラァ・・」
しかし、そんな輩口調にもめげず、必死にくいさがるラル。
「・・おねがいします!、シズカ・トットホールさん!・・」
「・・えー、書き方だってもううるおぼえだしぃ・・」
「・・このやろうぅ!、しつけぇってのがわからねぇのか!?・・そもそも、ポンコツの分際でアイドルさまにサインをいただこうなんて100億万光年はぇんだよ!・・」
しだいにボルテージがあがっていく食堂のいっかく。すると、干物をそしゃくしおえた「アバラくっきり干物男」が、ふとあることにきづく。
・・そういえば、こんな大勢でめしくったのっていつぶりだろう?・・
「・・1枚だけでいいんで、ね!?・・」
「・・<#@&'=%;;;・・」
「・・ポンコツぅ!、てんめぇ!・・」
なおもヒートアップしていくご両人。
・・もらうならポンコツではなく、まずこのおれ様のはず・・
・・1に現生、2に現生・・背にはらはかえられんのじゃぁ!・・
・・うるさい・・うるさいけど、この心の奥がじんわりぬくくなるような妙なここちよさはなんなんだ・・ そうヘイセスの心がととのうなか、律儀にてをあわせると、ようやくネスタの夕食がおわる。
「・・ごちそうさまでした♪・・」
「・・おねがい、ねぇ・・おねがうぃ~、しますぅ~・・」
「・・サインをもらうのはこのおれ様だって、な・ん・ど・言・っ・た・ら・お・ま・え・は・わ・か・る?・・」
しまいには、取っ組みあいにまで発展する2人。
「・・おい・・」
そんなもみくちゃの2人のもとに、戦慄の低音ボイスがとどく。
「・・!?・・」
生物的身の危険をかんじるも、ときすでにおそし。きがつけば2人の脳天めがけ、ふりおろされるゲンコツ。
「・・あでっ!・・」
そこにいたのは仁王立ちするネスタ。その「下ネタ女王」のあまりの迫力に、こおりつく2人。
「・・さっきからだまってきいてりゃ、ピーチクパーチクさわぎ立てやがって・・こっちはたのしいたのしい晩飯時だってのに、そんなにうるさくされちゃうまい料理もまずくなるっちゅうの(めっちゃうまかったけど)・・だいたい、ビューが嫌がってるでしょうが・・それを何?、そろいもそろっていい大人が、あぁはずかしい・・」
しりにしかれる夫のように、行儀よく席につく2人。
「・・金輪際、ビューにサインもらうのは禁止!、わかった?・・」
「・・・・・」
「・・わかったかってきいてんだよ、ポンコツぅ、バカ兄ぃ!?・・」
「・・は、はい・・」
「・・よろしい♪・・」
そうしてかのじょの説教でぶじ丸くおさまると、一同がおぼん片手に席をたつ。ちょうどそんなときだった。
「・・あの、ちょっといいかな?・・」
かれの一声がみなをひきとめる。
「・・ん?・・なに、ヘイセス?・・」
「・・提案なんですけど・・」
「・・?・・」
「・・またみんなでこうやって、夕飯食べたりしませんか?・・」
お目々をまるくするネスタ。
「・・え、みんなで?・・」
「・・はい・・なんか1人でたべるより、みんなでたべるほうが旨いっていうか、なんかそんなきがしたんで・・」
「・・・・・」
「・・いや、別にいやならいいんです、たぶんボクのきのせいだとおもうし・・たいした話しじゃないのにひき止めてしまってすいませんでした、あの、わすれてください・・」
「・・え・・いいじゃん!、それ♪・・」
「・・え?・・」
すると、そんなひかえめなヘイセスに賛同のこえがあがる。
「・・うん、あたしもいいとおもう♪・・」
「・・はなす機会もふえますし、なかなかいい案かもしれませんね、それ・・」
アラフォー電撃少女をかわきりに、姑息尻軽女クレイビッチ(クレイ)、やぶ医者Xとつぎつぎに首をたてにふるなか「病{や}みあがりおげれつ教、教祖{きょうそ}」(エイビャン)もまた、エビフライのしっぽをかみくだきながらおもいをめぐらせていた。
・・みんなでたべる夕めし、か・・たしかにこんなふうにみんなで夕めし食うの、ひさしぶりだな・・施設にいたころ以来だとすると、7、8年ぶりか?・・
「・・じゃあ、異論がないんであれば決定で♪・・」
「・・おい、ちょっとまてよ・・おれの意見はどうなる?・・」
「・・そうだよ・・だいたい、なんでじかんを拘束されてまでなかよくメシをくう必要が・・」
しかし、下ネタ女王{ネスタ}のひとにらみで、たちまち口ごもる筋肉刺青{タトゥー}ばか(バイロン)とポンコツ(ラル)の2名。
「・・エイビャンもだいじょうぶよね?・・」
ちかづくと、ぽんと「アバラくっきり干物男」(ヘイセス」の肩をたたく「病みあがりおげれつ教、教祖」(エイビャン)。
「・・いいじゃん・・さすが、竹馬のエロ友♪・・」
「・・じゃ、あしたから夕飯は6時にみんなでいっしょにたべることに、きまりっ!・・」
そうしてお開きになるつかのまの団らん。そんななか、ひとり釈然としないままDVDコーナーにたちよるラルのすがたがあった。
・・なんだよ・・サインはもらえねぇはあたまは叩かれるは、いいとこなしじゃねぇかよ・・あげくの果てになんだ、毎晩6時にはいっしょにめしを食うとかいうめんどくせぇオプションまでくわえやがって、ネスタのやろう・・
うっぷんをかかえたまま、成人向けDVDを手あたりしだいあさる。
・・一発派手にヌカな、やってらんねぇっての!・・
すると、めずらしくやろうどもの聖域でなにやらはなし声がする。
「・・ねぇ、やいぢろうたん、ほんどにこっちに、きたお?・・(ねぇヤイチロウさん、ほんとにこっちにきたの?)」
「・・まぢがいあいって、おでをしんじろ・・(まちがいないって、おれを信じろ・・)」
・・なんだ?、ってかなんて?・・
「・・ほあ、いだ!・・(ほら、いた)」
「・・なにしえんすか?、やいぢろうたん・・(なにしてんすか?、ヤイチロウさん)」
そこにいたのは、熟女コーナーで物色するひとりのおじさん。
「・・おぉ、おまえらすまんすまん・・つい夢中になってしもうて・・」
「・・もぉ、どんだへせいよくあうんですか・・(もー、どんだけ性欲{せいよく}あるんですか)」
「・・さっさとかいて、かえりまうよ・・(さっさと借りて、かえりますよ)」
そうして、青年2人につれられるようにして聖域をあとにするおじさん。
・・なんだあのしゃべりかた、障害者か?・・それにあのおっさん、どっかでみたような・・
そんなかれのモヤモヤに拍車がかかるいっぽうで、ひとっ風呂あびるとコーヒー牛乳片手に、休憩所でくつろぐエイビャンのすがたが。
「・・ぷっは~♪・・」
・・これでこそ生きてるってもんよ・・
いっきにコーヒー牛乳をのみ干すと、大の字にたたみにねそべるエイビャン。
・・ああ、生きてる・・ほんとにおれ、ナナトニなおしたんだ・・すげぇ、まじですげぇ・・かんがえらんねぇ・・
うっすら目をあけるだけで、天井からはあふれんばかり光がとびこんでくる。
・・頭痛もなければうそのようにふるえもきえてる・・それにきょうのあのメシの味、ひと噛みひと噛みがあんなにも
幸福にかんじたのは、うまれてこのかたはじめてだ・・さすが、3大欲求のひとつ・・ナナトニじゃないふつうのいわゆる健常者は、これをさもあたりまえのようにこなしているおもうと、なんだか悲しいねぇ・・じぶんがどんだけしあわせなのか、てんでわかっちゃいねぇ・・メシが旨ぇ、ただそれだけで十分生きていけるってのに・・それぐらいに飯のちからはすさまじいってのに・・でも、おれもいつかあんな風になっちまうのかねぇ・・旨いメシがくえる、それが当然のように・・
すると、蛍光灯のまばゆいひかりへと手がのびる。
・・ピルラ・・おまえをすくえなかった、このみぎ手・・おれはいっしょうこの罪を背負い、いきていく・・そう、おまえのぶんもな・・
決意とともに、光もろともにぎられるこぶし。そうこうしていると、ふいに眠気がおとずれる。
・・ああ、なんかねむくなってきた・・ここちいい、あぁ、これが寝入りばなのまどろみってやつなのか・・おれぁナナトニになってから、こんなすばらしい快楽までうしなっちまってたのか・・なんてこった・・にしてもきもちえぇ、正に「きもちよすぎてしんじゃうゾナモシ」・・このまま、しんじまってもいい、くらい、に・・
そしていつしか、深いねむりへといざなわれているエイビャン。そこをたまたま、入浴後のビューがとおりかかる。
「・・あれ、エイビャン?・・」
興味本位でちかづくと、そこにはすやすやとねむり呆けるわんぱくこぞうの寝顔が。
・・エイビャン・・
しぜんとかたわらに腰をおろすビュー。
・・きもちよさそうにねむってる・・まるで、遊びつかれたこどもみたいに・・でもエイビャン、あなたはあたしたちには想像もできないほど、たいへんな人生をあゆんできたんだもんね・・そしていままでだれも治せなかった、あの不治の病であるナナトニをなおしちゃった・・すごいよ、ほんと・・
ビューの母性からか、いつしか一定のリズムをきざむようにエイビャンをあやしつける。
・・そりゃつかれたよね・・ゆっくりおやすみ、エイビャン♪・・
ちょうどそんなとき、かれのそのあどけない寝顔が、ふとあのひの一コマをよびおこす。
・・!・・マサちゃん・・
いっきにこみあげる想い。
・・ごめんね・・母さん、マサちゃんになにもしてやれなくって・・
すると、そんな湿っぽさをふきとばすかのように、突如和室全体にひびきわたるどなり声。
「・・なめやがって、このガキゃぁぁ!・・」
問答無用でたたき起こされるエイビャン。
「・・ん、・・なに・・」
「・・な、なんだろうねぇ?・・」
あわててとりつくろうビュー。
「・・すこしぐらい「しろくろ」がつよいからっていい気になりやがって!・・こちとら遊びでやってんだよ、遊びで!・・」
「・・えぇ、もちろんわたしもあそびアルヨ・・でもいくらあそびといっても、往生際がわるいいってるアルヨ・・もうとっくに負けてるダカラ、はやく投了スルいってるアルネ・・」
なおも和室片隅でくりひろげられる言いあらそい。その独特のいいまわしもあいまって、ビューとエイビャンもついつい聞き耳をたてる。
「・・息ぬきにとおもってやってみたが、こんな腹立つゲーム、2度とやるか!・・」
そうはきすてると、席をたつおとこ。
「・・ふぅ~・・よわいやつにかぎって、よくわめくアル・・」
そうして一時騒然となる休憩所。そんななか、ビューがどこかぎこちなく口をひらく。
「・・しろくろ・・しってる、エイビャン?・・」
しかし、さっきまで横になっていたはずのエイビャンがいない。
「・・しろくろか、なっつかしいなぁ♪・・」
「・・!?・・」
するとそこには、たちあがり際にもれなく伸びをきめる、はつらつとしたエイビャンがいた。
「・・あのやろうか、おれのねむりを妨げたこんちくしょうは・・」
「・・エイビャン?・・」
「・・ビュー、ちっとわりぃけどさぁおれ・・いってくるわ♪・・」
「・・え?・・」
そうつげると、一目散にエイビャンが人だかりのほうへ。
「・・ねぇ、きみさ・・しろくろやってるの?・・」
「・・ん?・・」
「・・もしよかったらなんだけど、おれにもやらせてくんない?、そのしろくろってやつ・・」
返答もなおざりに、かれの対面にあぐらをかくエイビャン。
「・・いいアルけど・・あなた、棋力はどのくらいアルカ?・・」
「・・んー・・たぶんきみとおなじくらい、かな?・・」
「・・へー・・じゃ、互い先でいいアルネ?・・」
「・・OK♪・・」
・・ミーの棋力もしらないで、おなじくらいとはふざけたやろうアルネ・・いいアルヨ、こいつもさっきのやつみたいにかんぷなきまで叩きのめしてやるアル・・
そうしてたがいに石をにぎると、はじまる対局。
「・・おねがいします・・」
「・・おねがいしますアル・・」
そのこえを皮切りに、つぎつぎに盤上におかれていく白石と黒石。はじめはまばらながらも、徐々(じょじょ)に形をなしていく。
・・ほー、定石はしってるみたいアルネ・・じゃあ、これはどうアルカ!・・
そのつど顔色をうかがうあいてに対し、淡々(たんたん)と局面をすすめていくエイビャン。するとそんな2人の熱気に、しぜんとすいよせられていく観衆。そしてきがつけば、いつしか2人をひとだかりがとり囲んでいた。
・・ちょ、みえない・・エイビャン?・・
おくれてビューがかけつけたころには、すでに局面は大詰めををむかえていた。
・・そ、そんなはず、ないアル・・こっちの石が反対にと、とられてる?・・
くちびるをかみしめると、しきりに首をよこにふる相手。
・・まだアル・・まだ勝負はおわってないアル!・・
そんなやぶれかぶれなあいての着手にも、的確におうじるエイビャン。そしてほどなくして、あたりがしずまりかえる。
「・・ありません、負けましたアル・・」
ワッと、とたんに活気をとりもどす野次馬。
「・・ありがとうございました・・」
みずからの石をかたすと、だまってたち去っていくあいて。そんななか、野次馬をかきわけエイビャンがかおをだす。
「・・おまたせっ、ビュー♪・・」
「・・あ、うん・・おわったの?・・」
「・・うん・・」
「・・で、かったの?・・」
「・・もっちろん♪・・おれさまのねむりをさまたげた報いじゃ・・あぁ、スッキリした・・」
あらためて、もといた畳のほうにすわりなおす2人。
「・・でも、エイビャンにこんな特技があったなんてびっくり・・」
「・・いや、昔ひまつぶしがてらにやっていたていどで、特技ってほどつよくはないんだけどね・・」
「・・それでもすごいよ、起きがけにあいてをたおしちゃうんだから・・」
マンガさながらに、てれくさそうに鼻をこするエイビャン。
「・・でも、しろくろだっけ?、なんかむずかしそうだよね、このゲーム・・わたしには到底できそうもないかも・・」
「・・そんなことないよ、簡単簡単・・あ、そだ・・」
すると、おもいたったようにテユを起動させると、なかから「しろくろ」の携帯型マグネット盤をとりだす。
「・・しろくろってきほん、陣地とりゲームだから・・こうやって石でしきりをつくって、土地のひろいほうがかちなの・・」
「・・へぇ~・・」
「・・それともうひとつ・・こうやって石を石でかこめばその石をとることができる、かんたんにいうとそれだけ・・」
「・・ほぉ・・」
「・・石をとりながらじぶんの陣地をいかにひろげられるか、たたそれだけのゲーム・・」
「・・とった石はどうなるの?・・」
「・・とった石はさいごにあいての陣地をうめるのにつかえるから、よりおおくとったほうが有利になるってこと・・」
「・・ほぉ、ほぉ・・」
「・・ものはためし、やってみよう♪・・」
「・・え?、でも・・」
「・・いいから、いいから♪・・」
そううながされるままに石をにぎると、さきほどよりひと回りちいさい盤上にたどたどしく石をおいていくビュー。
「・・こ、こう?・・」
「・・そう、そう♪・・」
そしてしばらすると、石で境界線ができあがる。
「・・はい、とった石もないのでこれで終局、あいての陣地をかぞえて・・ビューはしろだからくろの陣地を、おれはくろだからしろの陣地・・」
もくもくと、線のまじわる点をかぞえていく2人。
「・・えとぉ、黒が25?・・」
「・・しろくろの陣地は1目、2目とかぞえるから黒が25目となります・・白が23目だから、どちらの何目勝ちになるでしょうか?・・」
「・・うんとぉ、25と23だから、黒の2目勝ち?・・」
「・・そのとおり、黒番であるわたくしの2目勝ちとなります・・」
「・・そっか・・ああ、負けちゃった~、くやしいぃ・・でもあたりまえか、始めたばっかのあたしがエイビャンにかてるはずないもんね・・」
「・・そうおおもいになるでしょう?、ところがどっこい♪・・」
「・・?・・」
すると、エイビャンが得意げにほくそえむ。
「・・しろくろは通常、互先といって棋力がちかいひと同士がたたかうばあい、先手であるくろのほうが後手であるしろよりいくぶん有利とされている・・そのため、しろにはあらかじめ「コミ」とよばれるハンディがある・・」
「・・コミ?・・」
「・・うん、地域によってそのハンディもまちまちだけど・・おれがくらしていた地域ではコミ6目半、国によっては7目半、8目半なんてところもあるくらい・・」
「・・へぇ~・・」
「・・えーですから、そのこともふまえてあらためてかぞえなおしますと、23目だったしろにプラス6目半がくわわり、25目対29目半で、白番のビューさんの4目半勝ちということになります♪・・」
「・・おお、すごい・・あたし勝っちゃった、エイビャンに・・」
きがつけば、みずからに拍手をおくっているビュー。
「・・にしてもひさしぶりだな、しろくろなんて・・」
「・・そうなの?・・」
「・・そりゃそうさ、施設にくらしていたとき以来だから・・大体出たのが16だとして、ことしで24だから8年・・しろくろしていたのはもっとガキの小学校のときだから、プラス3年さかのぼって・・最低でも11年ぶりか?・・」
「・・そっか、施設にくらしてたんだ・・」
すると、意図してないところにビューがくいつく。
「・・いやまぁ、そうなんだけど・・うん・・」
・・あ、いけない・・せっかくナナトニがなおっておめでたムードなのに、なに辛気臭くしてるのよあたし・・ひとまわりいじょうも年上なんだし、あたしがしっかりトークの舵とりしなきゃ!・・
「・・と、ところで、ひさしぶりのしろくろはどうだった?・・た、楽しめた?・・」
あわてて軌道修正する。
「・・そうさなぁ、たのしめたっちゃたのしめたかな・・なにしろ施設にいたころは、ならいごとと称してなかば強制的にやらせれてたから・・たのしいっていうよりは、むしろノルマ感がつよかったかな・・」
「・・へぇ、そうなんだ・・」
「・・なかでも、1人孤独にむきあう「難解詰{なんかいつ}めしろくろ」は、いまおもえば地獄だった・・その問題がとけるまで、メシぬきなんてざらだったし・・」
「・・あらまぁ!、ストイック・・」
・・あれ・・な、なんかおかしいわね・・おめでたムードのながれを一向にひきもどせない・・
いつしか、座布団をまくら代わりに寝っころがるエイビャン。
「・・で、でもさ、しろくろやってて良かったな~・・あれはいいおもいでだった、なんてこともあったでしょ?・・」
「・・しろくろで?・・ん~あったかなぁ、そんなこと・・」
ビューの顔面がしだいにこわばっていく。
・・まずいわこのながれ、とてもまずい!・・これが俗にいう、負のスパイラルってやつ?・・
そんな暗雲たちこめるさなかのこと、ふとエイビャンが起死回生の一打をはなつ。
「・・あ!・・」
「・・え?・・」
「・・いや、・・いいおもいでかどうかはびみょうなんだけど・・」
「・・なになに、きかせて!?・・」
「・・うん・・そんなんで施設にいたころよく町内のしろくろ大会に出場させられたんだけど・・」
「・・うん、うん・・」
「・・そこで対戦したじじいばばあのマナーがまぁひどくって・・」
「・・へ?・・」
とたんにとまるビューの相槌。
「・・まぁ、じじいばばあといってもほとんどがじじいなんだけど・・おれと対戦したじじいなんてあれだよ、おれの手番にもかかわらず2手連続でうってきやがって・・ほんらいなら反則負けで、即刻この世からきえてもらうところだけど・・なんかそれもちがうっていうか、おとなげない気がしてなんとかおもいとどまったけど・・」
「・・ま、まぁ、ご高齢だからねぇ・・」
・・おもいとどまってよかった・・
「・・だってあれだよ?、おれとおなじ施設のおんなの子なんてほんらいかってた1局を、あとは陣地をかぞえるだけってなったら、急にあいてのじじいが盤面ぐちゃぐちゃにしてきて「・・わたしのかちだね?・・」だって!・・結局そのじじいの武力行使でまけにされたんだよ、そのこ・・ひどくね?・・こんなものがまかりとおっていいんですか?、世が世なら死罪だよ・・」
「・・そ、それはすこし、いじわるだねぇ・・」
・・死罪かは、わかんないけど・・
「・・あと3人1組の団体戦で、ちょうどこどもの人数がたりないってことでおれのチームにくわわった助っ人のじじい・・先生いわく、つよい助っ人だっていうふれこみだったからさぞ期待してたら、かつことにはかつんだけど、そのかち方がまぁひどい・・わきのしたおさえながら手あげたかとおもったら、しろくろの審判長よびだして「・・このひといま、うちなおししたから反則負けですよね?・・」だって・・まぁ「はがし」っていって1度盤上においた石をとっちゃ、たしかにだめなんだけどさ・・未来あるこどもに、おとなのどんな背中みせとんねん、われぇ・・っつうか、そのハゲちらかしたきったないあたまで、よくもまぁ密告なんていうこそくな手段おもいついたなぁ、おぃ・・あきれとおりこして、もはや尊敬するわ・・」
そうまくしたてると、ふととなりで肩をふるわせるビューにきづく。
・・あ、やべ・・つい、いいすぎちまった・・
「・・いやね・・いまのはごく一部の害悪じいさんのはなしであって、そりゃもちろんりっぱな高齢者のかたもたくさんいる、わけで・・えぇ・・」
あわててじじばばをフォローするも、あとの祭り、かにおもわれた。
「・・ぷっ・・」
「・・?・・」
「・・ぷぷっ・・キャッ、キャハハハハハッ!・・」
「・・え?・・」




